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お題③

ただひたすら想っていた、そのことをあなたは知っていますか。
雨の匂いが立ち込める中、ひとつの傘をさしている僕らはきっと世界にふたりきりだった。
水溜まりに落ちて光る虹を雨粒が拡げて、映り込んだ街は揺蕩う。
永遠なんてものは無いなんてとうの昔に気付いていたけれど、それでも信じていたかった僕を、あなたは笑いますか。
祈るように重ねた手のひらがひどく熱かった夜、首のない鳥が羽ばたく夢を見た。
空を仰いで足踏みを続けている僕はどこにも行けやしないのに、間違いさえも許容してほしかった、それだけ
あなたを汚したい気持ちと、綺麗なままでいてほしい気持ちが綯い交ぜになって狂う僕はどう映っていましたか。
部屋に残る気配が鼻についてむしゃくしゃした、目に見えないから余計に鬱陶しいのだと、気付いた時には遅かった。
傷つけることすら叶わない、月は遠くにぼんやりと光ってアルコールの中を泳いでいる。
どうせ飼うこともできないのならと振り払うと、砕け散って甲高く笑みを零した。
煙草の吸殻がどこか君の亡骸に似ていたから、そっと灰皿に納めて蓋をする。
静かに息を止め、もう熱を持つこともない
白く乾いたからだで、灰の中に眠っているあなたは幸せでしたか。


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お題
「ただひたすら想っていた」で始まり
「手のひらがひどく熱かった」を含み
「あなたは幸せでしたか」で終わる

#詩  #自由詩 #現代詩 #詩のようなもの #小説 #短編小説

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