お題⑦

これまで何度さよならを言っただろう、届かないと知りながら胸の内で告げる別れは今日もまた私を引き裂いていく。
何も知らない無垢な君は明日も変わらず私の前で笑ってくれるんでしょう、それ故に残酷であることを露ほども、夢にすら、思っていない無邪気さ。
傷つけたい汚したい、駄目ならせめて憎めたら、そう叫ぶ心を何度も殺して同時にさよならを告げていること、どうか気付かずにいてください。
君の一番になれても唯一になれないことが苦しいなんて傲慢で卑しい私を、何より私が許せない。
飲めもしないアルコールを吐いた中に君の一部を見た。夜はいつだって独りで、青い光に照らされた顔はきっと亡き顔に似ているのでしょう。
空洞を抱えた私は君の項を這う赤い蜥蜴になることも叶わないから、眠る君に声も匂いも残さないままそっと立ち去るのです

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お題
「これまで何度さよならを言っただろう」で始まり
「そっと立ち去るのです」で終わる

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