読んでもオモロイ演芸台本 なすなかにし『ニッポンの食卓』
【前説】
先日(2021.12.12)『日本笑い学会』にて講師を務めさせていただきました。テーマは「ネガティブ感情と笑いと」。腹立ちや悔しさなどのネガティブ感情から生まれるネタ発想法などをあれこれと約90分に渡りおしゃべりいたしました。当日ご紹介した漫才、『ニッポンの食卓』(演:なすなかにしさん)もその一本。ある頃から急に流行り出した「スウィーツ」という言葉から生まれました。スウィーツってなんぞ?ちょっと前まで「デザート」とか「甘いもん」とか言うてたのに、いつの間にやらシレッと定着しとるがな!あれ言う時、ちょっと恥ずかしいねんぞ!下向いて小さい声で言うてんねんからな〜〜〜!!そんな思いを抱えていた2014年の作品。件の「スウィーツ」は前半に出てきます。さて、後半〜本ネタはどんな展開を見せるのか??できれば最後までお読みいただきたく候!!ちなみに2021年になった今も「スウィーツ」って言う時はちょっと下向く私です。
●NHKラジオ 上方演芸会
●漫才台本『ニッポンの食卓』
●演:なすなかにし
●制作日:2014年4月30日
●収録日:2014年5月16日(栃木県佐野市)
二人「なすなかにしです」
中西「こんな男前連れてやってますけども」
那須「いや、急に何言うてんねんな」
中西「うちの相方、整った顔してるでしょ。目、鼻、口、アゴ、歯並びまでね」
那須「そない言われたら照れますけどね」
中西「トータルなんぼかかってんな」
那須「整形してへんわ」
中西「デビュー前と明らかに顔ちがうで?」
那須「アイドルか。デビュー前に直しとこか、ちゃうねん」
中西「こんな顔してるからね、コジャレた言葉、使うんですよ」
那須「コジャレた言葉て、なんか言い方にトゲないですか?」
中西「あ、ごめん。悪く言えば、コジャレてる」
那須「うん」
中西「よく言えば、鼻につく」
那須「よけい悪いやないか」
中西「ほなお前、ちょっとお茶飲もか、いう時どんな店行く?」
那須「そらまあカフェとかね」
中西「ワオ、こっじゃれ〜」
那須「おっしゃれ〜みたいに言うなよ」
中西「聞きました?カヘ行くんやて」
那須「言えてへんよ。カヘ、ちゃうで。カフェやで」
中西「お茶飲んだり軽く食べたりできる店のこと、数年前まではもっと普通に呼んでましたよね」
那須「なんて呼んでた?」
中西「茶店(ちゃみせ)」
那須「江戸か」
中西「聞きたいねんけど、そういうコジャレた店で何を食べるわけ?」
那須「カフェで食べるもんいうたら、スウィーツとかね」
中西「スウィーツ!」
那須「そうですよ」
中西「梅干しとかもずくとか?」
那須「それ、『すいぃやつ』や」
中西「スウィーツってなに?」
那須「……まあ言うたらお菓子のことやな」
中西「お菓子のこと今はスウィーツて言うの」
那須「まあそうやな」
中西「ほな綿菓子は、綿スウィーツ?」
那須「ムリヤリやな」
中西「ポン菓子は、ポンスウィーツ?」
那須「あのな」
中西「駄菓子は、駄スウィーツ!!」
那須「おかしいやろ!スウィーツ言うたら、甘いお菓子のことや」
中西「甘いお菓子っていうと?」
那須「……ん〜例えば、ショコラケーキとか」
中西「なんですか?」
那須「ショコラケーキ」
中西「ケーキはわかるねんけどショコラがわからないのよ」
那須「……ショコラわからんの?フランス語でチョコのことやんか」
中西「フランス語!ウイ〜こじゃれビア〜ン」
那須「なんやねんそれ。最近チョコのことをショコラて言うようになってんて」
中西「ふーん。ほな板チョコは板ショコラ?」
那須「それはチョコでええやろ」
中西「ギブ・ミー・ショコラ!」
那須「戦後もチョコでええねん。なんで英語飛び越してフランス語になるねん」
中西「(ポンポンと手を打って)おネエさん、お銚子一本持ってきて」
那須「??」
中西「それから、おショコラ二つ」
那須「おチョコ(猪口)二つや!」
中西「……島倉」
那須「千代子!チヨコをショコラに変えんでええねん」
中西「まあそないして日本人の食って、どんどん変わっていってるけども」
那須「そらもう時代とともにね」
中西「回転寿司に行ったらびっくりするね」
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