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1年生描画指導はクレヨンか?絵の具か? 大先輩の教え

私がまだ駆け出しの青年教師だった頃、図工の自主研修会で、図工の大家として地域で知らない教師がいない大先輩のA先生から教えていただいたことがいくつもある。
今回は、その中からA先生次の言葉を紹介したい。

低学年では、画材としてよくクレヨンを使わせるが、力の弱い1年生には硬くて扱いにくい。そのため発色が悪くなって子供が苦労する。重色指導をしても色が濁りやすい。むしろ、積極的に絵の具を使わせるべきだ。絵の具をたっぷりと筆に付けて色をはっきりと出して塗らせることで、色の美しさを感じ取らせたい。クレヨンは、逆に学年が上がってから、中学年などで、もっと使わせるとよい。

この言葉を聞いた時は、私はまだ低学年の指導経験がなく、意味が十分に理解できなかった。

確かに小学校低学年の描画指導では、描画材はクレヨンが定番である。
図工の学習指導要領にも、「第1学年及び第2学年においては、…クレヨン、パス…など…を用いること」と例示されている。
もちろん、「など」であり、学習指導要領解説には、「共用絵の具」も明記されているので、「絵の具」を使うことも構わない。
構わないのだが、低学年教師にとっては、絵の具を使わせるとなると、準備や片付けの指導に苦労をするため、できることならば回数を増やしたくないという事情がある。

しかし、低学年の担任を経験して、A先生の言葉の意味が分かるようになった。
確かに、クレヨンは硬い。発色をよくするには、かなり力が必要なようだ。
また、面描をしても、低学年とはいえ、白い部分が多く残り過ぎて気なる。イメージ通りに表現できないでいる子供の様子も伺えた。
クレヨンは線描用の画材なのだ。

クレヨンでの、異なる色を上から重ねる「重色」の指導も求められるようだが、少なくとも自分の指導力では、A先生の言葉通り、きれいな重色にはなかなかならなかった。
まして、「混色」は無理である。

そうなると、なるほど、確かに絵の具である。
 
だが、上記のように、絵の具を使わせるには、準備、片付け指導に教師はかなりのエネルギーを要する。低学年の子供にとって、個人用絵の具の準備、片付けは、大変な作業なのだ。
 
それでは、絵の具はあきらめて、パスを使うか。パスならクレヨンよりは柔らかいので、面描や混色をさせやすくなる。

しかし、手や体全体を使ってのびのびとはっきりとした色使いで絵を描かせたいと願うなら、学習指導要領解説にもあるように、「共用絵の具」の出番である。
学校、学年に何種類もの絵の具がたっぷりと用意されていて、皿のような個人分けできる容器があれば、個人用の絵の具を使わせないで済む。

クレヨンともハイブリッドで使うとよい。
クレヨンで線を描き、その後、共用絵の具でより鮮やかに色を出す。絵の具による線描もあれば、面描もある。子供によっては、クレヨンで描いた線の上から絵の具で線を重ねて描き、はじきと発色を楽しむ子もいる。細かな線は、水性ペンや油性ペンを使わせる。
楽しい絵が出来上がりそうである。

低学年には、共用絵の具は必需品だったのだ。
だが、私の周りでは、共用絵の具がない学校がほとんどだった。
だから、子供も教師も文字通り必死になって準備、片付けをして・させて、個人用絵の具を使わせていた。

頑張って予算を確保し、ぜひ消耗品として揃えよう。
新年度からは、新1年生の入学準備品の中から個人用絵の具は削除しよう。3年生で購入をお願いすればよい。

きっと、今よりもっと低学年の子供達が描画の時間が好きになる。教師も指導が楽しくなる。