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韓国文学読書記録【11】20240304-0310

春だけどまだ寒い。チョン・ジア『父の革命日誌』を読みました。

3月4日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P5-21
パルチザンが登場する小説なのに韓国で32万部を突破したという長編小説。主人公のアリは、電信柱にぶつかって死んだ父の葬儀に出るために帰郷する。まだはじめのほうを少し読んだだけだけど、かなりユーモラス。

パルチザン=1945年の解放後から朝鮮戦争後まで、遊撃戦と呼ばれる不正規戦闘を行った共産主義武装組織を指す。アメリカ軍政によって非合法とされたため、山岳地帯に潜伏した。朝鮮戦争後はほとんどが討伐された。チョン・ジアの両親はパルチザンの幹部だったらしい。
D-464
#BooksForJimin #ReadingWithJimin

3月5日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P22-57
昨日の続き。父の拷問経験が語られる。父曰く〈拷問の中でも一番楽なのは電気拷問だ。すぐに気絶するからな〉。凄まじい。

拷問の後遺症で不妊判定が下された父を治療した漢方医、父を「仇」と見なしている叔父、父と思想は違っていたが長年連れ添った夫婦のように労りあっていたパク先生。それぞれ奥行きがある人たち、一筋縄ではいかない関係が描かれている。

D-463
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3月6日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P57-79
昨日の続き。葬儀場でいろんな人が父の話をする。〈三秒爺さん〉と呼ばれていたとか、革命家ではない父の顔。

父は十代の後半に選択したことに対する責任を、メーデーの明け方に八十二年生きたこの世を去るまで、背負い続けた。社会が個人の選択に対する責任をこれほどまで過酷に問うべきなのかについては、異論の余地があるだろう。思想の自由が保障されるべきだと言う人もいれば、アカなど皆殺しにしてしまえという人もいるだろう。同族同士の惨劇をもたらし、いまなお休戦中であるうえに南北のイデオロギーが異なるのだから、意見が一致するはずもない。それに私は是非を正す立場でもない。

父の革命日誌

父は自ら選んだことだから仕方ない部分もあるが、アリを含めて、選んでないのに父の選択に巻き込まれてしまった人がいるのはつらい。

でも、アリがパルチザンの娘であることで身についた習慣のおかげでちょっと変な行動をとってしまうところなど、細部におかしみがある。

D-462
#BooksForJimin #ReadingWithJimin

3月7日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P79-104
昨日の続き。賑やかでお節介な従姉たちや頼りになる餅屋の姉さんと話す。

〈よほどの事情があるんだろ〉が口癖で、自分の家のことはそっちのけで〈民衆〉を助けるけれども、ぜんぜん報われない父の思い出。パルチザンの特技おそろしい。

アリの幼なじみのヨンジャも挨拶に来る。ヨンジャと父のエピソードもいい。面白い人しか出てこない。

D-461
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3月8日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P105-151
昨日の続き。コ一族(アリの親族)がだいぶ好きになってきた。面白い人しかいない。

従姉が父を敵視して葬儀にもあらわれない叔父について、これまで黙っていたことを語る。

父が深く関わった麗水・順天事件。1948年10月9日、麗水に駐屯していた朝鮮国防警備隊十四連隊が、李承晩政府に済州島四・三事件の鎮圧を命じられたが拒否した。この反乱を鎮圧する過程で多くの民間人が犠牲になったという。当時、子供だった叔父が体験したこと。

父の故郷の求礼は、李承晩に対抗するパルチザンの拠点となった智異山の麓にある小さな町だ。父の親戚と友人がいると同時に、父を敵だと思っている人もいる。おびただしい数の死者が埋まっている記憶の地層。なんとも言えない気持ちになるけれども、弔問客の話を聞き、アリは父と出会いなおす。

なかでも父の〈タバコ友達〉と名乗る少女が訪ねてくるくだりは、すごくすごく良かった。

弔問客ではないけれども、父の友人で〈労働がつらい〉パルチザンの話も好き。

D-460
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3月9日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P152-188
昨日の続き。〈戦争という現代史の悲劇によって、絡み合った人々の因縁が勢ぞろいした、めずらしくともなんともない状況〉が描かれる。

アリの両親の結婚にも絡み合った事情がある。

父と同じ名前のサンウクさんのエピソードがよかった。サンウクさんは独裁政権下で孤軍奮闘していた谷城郡のカトリック農民、通称〈谷城カ農〉のひとり。〈谷城カ農〉のメンバーが、かつて谷城郡党委員長だった父を訪ねてきたとき、小川で幼子のように遊ぶ。サンウクさんはその後、アリが引っ越しをするたびに父と一緒に手伝ってくれた。

いろんな弔問客が来て、父は思想の異なる人とも関わりを持ち、助けられていたということがわかる。尊い話だけれども、そういうことを知りたくなかったというアリの気持ちもわかるなあと思う。

憎しみであれ友情であれ恩であれ、しぶとくつながっている気持ちが、絡まり合って切っても切れないその気持ちが、わたしには重くて怖くて、そして羨ましかった。

父の革命日誌

D-459
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3月10日

✅13pages
📖 MY FATHER’S LIBERATION DIARY By JEONG JIA
『父の革命日誌』/チョン・ジア著、橋本智保訳(河出書房新社)
📄P152-265
読了。あー、終わり方いいなあ。波瀾万丈な人生を送った父を描ききって、普遍的な話になっている。

自分の父親が死んだときのことも思い出した。ある面を取りだせば酷い親とも言えるし、善い親とも言える。どちらかでも、両方でも語れる気がしない。いまだに知らない顔がたくさんあるんじゃないかと思う。

「作家の言葉」もよかった。特に〈五十を過ぎてようやく知った。もっと遠く、もっと高く進まなくてもいいということを〉というくだり。

D-458
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父の革命日誌

※以上、Xにポストしたテキストを転載しました。これまでのまとめ↓


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