石井達也

雑誌、CD解説、ウェブなど、音楽についていろいろと書かせてもらっておりますライターです…

石井達也

雑誌、CD解説、ウェブなど、音楽についていろいろと書かせてもらっておりますライターです。そのときどきで感じたことをかるーくゆるーく書き散らかしてまいります。もし気に入っていただけましたなら、ご購入やサポート、フォローなどをよろしくお願いいたします。

記事一覧

固定された記事

いまのエンタメ評論に思うこととこのブログの方向性

ここ何年か、映画でも音楽でも演劇でもスポーツでも、いわゆる評論と呼ばれる文章で興味をひくものに出合ったことがあるでしょうか? もし出合えたならばそれは読者にとっ…

石井達也
2年前
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現代を映し出したニール・ヤングの感性

大別して、ニール・ヤングというアーティストには繊細なシンガー・ソングライターの顔と、狂暴なロッカーの顔がある。そのときどきで変わる彼の顔を見るのもファンの楽しみ…

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石井達也
11日前
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名画『ミスター・アーサー』とクリストファー・クロスの名曲

映画『ミスター・アーサー』をみた。たしか30何年か前に劇場で一度みている映画なのだが、自分の記憶にある場面はダドリー・ムーアの入浴シーンだけ。いまとなっては、スト…

石井達也
2週間前
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策士アル・ヤンコビックの自伝映画

アル・ヤンコビックの自伝映画がつくられているらしいというニュースが伝わってきたときは興奮した。まさかあのヤンコビックが自伝映画をつくるとは……。いったいどんな映…

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石井達也
4週間前
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ジェイムス・テイラーのライヴはすごかった

これほど不安たっぷりで臨んだライヴというのもない。待ち望んでいたステージとはいえ、はたして最後まで楽しむことができるのだろうか。彼の歌すべてをしっかりと感じとる…

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石井達也
1か月前
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エリック・カルメンにとって「All By Myself」とはなんであったのか?

エリック・カルメンが亡くなってから、SNSにあふれるファンのつぶやきをひたすら追いかけている。つぶやきのひとつひとつにあるさびしさと感謝の数々にはそれぞれのファン…

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石井達也
1か月前
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エリック・カルメンの思い出

エリック・カルメンが亡くなってしまった。 これまで、彼が作り、うたってきた音楽に熱狂してきた身として、この報には言葉がつまる。なんともやるせなく、ただたださびし…

石井達也
2か月前
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シェイン・マガウアンに最も近づけた日

1992年だったか93年だったか、冬にロンドンに行ったときのこと。当時はインターネットなどもなく、旅行前に知ることができる情報はとても限られていて、ライヴやイベントの…

石井達也
4か月前
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ギルバート・オサリバン 2023年来日公演で感じた熱い現役感

 アーティストの多くは加齢とともに新作リリースのペースが落ちてくる。とりわけ70代ともなると、新曲だけのアルバムリリースは十数年ぶりだとか、或いはそれ以上のインタ…

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石井達也
6か月前
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スチュワート・コープランドが語るポリスの遺産

 スチュワート・コープランドが自身の人生を見つめ、過去と現在を行き来するプロジェクトに勤しんでいる。年内に発表されるという自伝本の執筆、ポリス時代の映像をまとめ…

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石井達也
7か月前
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ホワイトスネイクの曲がり角「Here I Go Again」(バーニー・マースデンへの想い)

「Here I Go Again」は、ホワイトスネイクにとって大きなターニングポイントとなった曲だ。この曲がリリースされたのは1982年。それまでの彼らはディープ・パープルの喧騒…

石井達也
8か月前
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ドゥービー・ブラザーズ アニバーサリー・ライヴの衝撃

 バンド結成50周年を記念しての今回のツアー。目玉はやはりマイケル・マクドナルドの参加だろう。彼がトム・ジョンストンと同じステージに立つということは、ドゥービー・…

石井達也
1年前
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ブライアン・アダムス「Kick Ass」にぶちのめされて

 新曲ということでなんとなく聴いたこの曲。初っ端からガツンとやられた。なんなんだ、この生々しく、瑞々しく、とめどなく溢れ出る熱情の爆発は!  ブライアン・アダム…

石井達也
1年前
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デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜後編〜

 隣りのお兄ちゃんの日課をどうやって止めるか。悩まされるばかりだった大きな問題に対し、一計を案じた。当時、イギリスのアングラものばかり聴いていた自分は、音楽好き…

石井達也
1年前
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『ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム』レビュー

 かなり前に既発のビデオで観た『ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム』の印象はあまりいいものではなかった。シーンのカット割りが多く、画面の揺れ…

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石井達也
1年前
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デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜前編〜

 1984年、デュラン・デュランの「The Reflex」は爆発的に売れた。イギリスではすでに人気バンドだった彼らだが、この曲はアメリカでも火がつき、英米ともにチャートの1位…

石井達也
1年前
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いまのエンタメ評論に思うこととこのブログの方向性

ここ何年か、映画でも音楽でも演劇でもスポーツでも、いわゆる評論と呼ばれる文章で興味をひくものに出合ったことがあるでしょうか?
もし出合えたならばそれは読者にとって確実に有益なことです。その評論に賛同するか拒絶するかは関係なく、その評論によって視野がひろがり、感性が磨かれ、その対象に対して自身の考え方を自覚できたのなら、評論はあるべき役割をまっとうしたといえるでしょう。いい評論とは、その評者が自身の

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現代を映し出したニール・ヤングの感性

現代を映し出したニール・ヤングの感性

大別して、ニール・ヤングというアーティストには繊細なシンガー・ソングライターの顔と、狂暴なロッカーの顔がある。そのときどきで変わる彼の顔を見るのもファンの楽しみのひとつだろうが、しかしときとしてそれがあまりにこちらの想像を超え、混乱させられることもしばしばある。ヤングのキャリアもすでに相当な年月を重ねているが、それほどのベテランでありながら保守的になることなく、まだまだ刺激的な作品を突きつけてくる

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名画『ミスター・アーサー』とクリストファー・クロスの名曲

名画『ミスター・アーサー』とクリストファー・クロスの名曲

映画『ミスター・アーサー』をみた。たしか30何年か前に劇場で一度みている映画なのだが、自分の記憶にある場面はダドリー・ムーアの入浴シーンだけ。いまとなっては、ストーリーも、登場人物も、はてはクリストファー・クロスのあの曲がどこでかかっていたのかさえまったく思い出せないほど印象が薄い映画だった。テーマ曲が大ヒットしたコメディ映画ということでかなり期待してみたものの、思っていたより笑えるシーンもなく、

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策士アル・ヤンコビックの自伝映画

策士アル・ヤンコビックの自伝映画

アル・ヤンコビックの自伝映画がつくられているらしいというニュースが伝わってきたときは興奮した。まさかあのヤンコビックが自伝映画をつくるとは……。いったいどんな映画をつくっているのだろうか? 映画制作の経緯はわからないが、これには興味津々、絶対観たい映画だ。

が、よく考えてみるとその興奮は少しずつ萎んでいった。それが日本で公開されるなんてことはまずないだろうし、仮に観るとしてもそれがソフト化される

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ジェイムス・テイラーのライヴはすごかった

ジェイムス・テイラーのライヴはすごかった

これほど不安たっぷりで臨んだライヴというのもない。待ち望んでいたステージとはいえ、はたして最後まで楽しむことができるのだろうか。彼の歌すべてをしっかりと感じとることができるのだろうか。それはなんてことはない、個人的な理由によるものである。

この日のライヴに向けて、最近はずっと、彼の曲を聴くようにしていた。朝昼晩と、まとまった時間があればひたすら彼の歌に耳を傾けた。ところが、忌々しいことに、彼の歌

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エリック・カルメンにとって「All By Myself」とはなんであったのか?

エリック・カルメンにとって「All By Myself」とはなんであったのか?

エリック・カルメンが亡くなってから、SNSにあふれるファンのつぶやきをひたすら追いかけている。つぶやきのひとつひとつにあるさびしさと感謝の数々にはそれぞれのファンの思い出と温もりがあって、それらの言葉からはさまざまな思いが去来する。また、自覚することがないまま記憶に刻まれていたメロディが彼の訃報をきっかけにそっと思い出され、そこで初めてエリックという存在を知り、彼を偲んでいる人もいる。エリックのフ

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エリック・カルメンの思い出

エリック・カルメンの思い出

エリック・カルメンが亡くなってしまった。
これまで、彼が作り、うたってきた音楽に熱狂してきた身として、この報には言葉がつまる。なんともやるせなく、ただたださびしく、いたたまれない感情に覆いつくされる。まだまだ74歳。人生も、音楽も、退くには早すぎる。

最近はその近況を追っておらず、いまの彼がどんな環境で、なにをやっているのかまったくわかっていなかった。十年ほど前、かなりのインターバルを経て、久し

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シェイン・マガウアンに最も近づけた日

シェイン・マガウアンに最も近づけた日

1992年だったか93年だったか、冬にロンドンに行ったときのこと。当時はインターネットなどもなく、旅行前に知ることができる情報はとても限られていて、ライヴやイベントの情報は現地に着いて初めて知ることが多かった。ロンドンに着くと現地の情報誌“タイム・アウト”を買うことは渡英時のルーティンのようなものになっていたが、そのときタイム・アウトを調べていると、ロンドンでシェイン・マガウアンのライヴがあるとい

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ギルバート・オサリバン 2023年来日公演で感じた熱い現役感

ギルバート・オサリバン 2023年来日公演で感じた熱い現役感

 アーティストの多くは加齢とともに新作リリースのペースが落ちてくる。とりわけ70代ともなると、新曲だけのアルバムリリースは十数年ぶりだとか、或いはそれ以上のインターバルを要することも多く、新曲をつくることを辞めてしまうアーティストも少なくない。ベテランアーティストの活動の軸は、過去のヒット曲で構成されたライヴが主となり、創作は途絶える場合が多い。

 そんななか、今年77歳を迎えるギルバート・オサ

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スチュワート・コープランドが語るポリスの遺産

スチュワート・コープランドが語るポリスの遺産

 スチュワート・コープランドが自身の人生を見つめ、過去と現在を行き来するプロジェクトに勤しんでいる。年内に発表されるという自伝本の執筆、ポリス時代の映像をまとめたアーカイヴ作品の製作。そしてその映像作品のための、新解釈となるポリス楽曲のリメイク・アルバムのレコーディングと、非常に精力的に、自身の過去を振り返っている。すでにコープランドは2009年に自伝本を発表しているが、今回は彼自身の日記を基にし

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ホワイトスネイクの曲がり角「Here I Go Again」(バーニー・マースデンへの想い)

ホワイトスネイクの曲がり角「Here I Go Again」(バーニー・マースデンへの想い)

「Here I Go Again」は、ホワイトスネイクにとって大きなターニングポイントとなった曲だ。この曲がリリースされたのは1982年。それまでの彼らはディープ・パープルの喧騒と、ジョン・メイオールが築いたブリティッシュ・ブルーズの潮流に乗り、それをモダンなかたちで体現するようなバンドだった。安定感のあるバンドが奏でる気品あるサウンドとデヴィッド・カヴァーデイルの歌声の色香、その組み合わせは彼ら

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ドゥービー・ブラザーズ アニバーサリー・ライヴの衝撃

ドゥービー・ブラザーズ アニバーサリー・ライヴの衝撃

 バンド結成50周年を記念しての今回のツアー。目玉はやはりマイケル・マクドナルドの参加だろう。彼がトム・ジョンストンと同じステージに立つということは、ドゥービー・ブラザーズの歴史を振り返るうえで、感動的な事件ともいえるものだ。とはいえ、両者の共演自体は今回が初めてのことではない。二人は過去にも何度か共演し、その模様を収めた音源のアルバム化、映像化もされてきている。ただし、日本の地でこれまで二人の揃

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ブライアン・アダムス「Kick Ass」にぶちのめされて

ブライアン・アダムス「Kick Ass」にぶちのめされて

 新曲ということでなんとなく聴いたこの曲。初っ端からガツンとやられた。なんなんだ、この生々しく、瑞々しく、とめどなく溢れ出る熱情の爆発は!

 ブライアン・アダムスは、そのキャリアが半世紀にもわたろうとする大ベテランのアーティストである。そんな彼がこんなにも若々しく、衝動的かつ気合いの入った曲を生み出せること、それ自体に驚異を感じる。曲そのものはオーソドックスなスタイルのもので、さらにアレンジもと

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デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜後編〜

デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜後編〜

 隣りのお兄ちゃんの日課をどうやって止めるか。悩まされるばかりだった大きな問題に対し、一計を案じた。当時、イギリスのアングラものばかり聴いていた自分は、音楽好きというわけでもないお兄ちゃんに、知名度のない、少しばかり癖のある音楽を浴びせかけてやろうという作戦を立てたのだ。

 まず選んだのが、アナーコ・パンクのクラスだ。傑作『Penis Envy』はその攻撃性といい、荒々しい存在感といい、大メジャ

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『ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム』レビュー

『ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム』レビュー

 かなり前に既発のビデオで観た『ビリー・ジョエル:ライヴ・アット・ヤンキー・スタジアム』の印象はあまりいいものではなかった。シーンのカット割りが多く、画面の揺れやピンボケした映像が頻繁に飛び込んでくるライヴ映像というのは違和感ばかり。その目まぐるしさがどうにも気になって仕方なかった。ただそのライヴ・パフォーマンスそのものは素晴らしかったので、観ているうちに映像の違和感は徐々に薄れていったのだが、で

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デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜前編〜

デュラン・デュランの「The Reflex」との闘い 〜前編〜

 1984年、デュラン・デュランの「The Reflex」は爆発的に売れた。イギリスではすでに人気バンドだった彼らだが、この曲はアメリカでも火がつき、英米ともにチャートの1位になった。その勢いは当然日本にもやってきた。この曲はテレビやラジオでかかりまくり、洋楽ファン以外の注目も集めるようになっていった。まさに猫も杓子もこの曲に夢中になった。

 しかし、自分はこの曲がどうにも好きになれなかった。デ

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