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利益=売上-コストは本当か?

■「会社」の存在意義は何か?
 
 
いきなりですが、会社の本質は「価値」を創出するところにあると考えます。 
 
例えば、営業は得意だけど制作はできない。
制作は得意だけど、営業はできない。
その二人が「会社」を作ると、相乗効果が生まれます。
これは【価値】です。
 
 
スーパーなどの大企業が、大規模に需要予測を行い仕入れを行うと、安定した流通が可能になります。これは大きな【価値】です。
日本では、スーパーに行けば、基本的な野菜は常に手に入れることができます。そして、価格変動もそれほど大きいわけではありません。
 
 
ある知り合いの会社は「スキルはあるけど、子育てなどで、限られた時間しか働けない」という方たちが多く登録していて、企業の経理やWebなどの「これだけお願いしたい」というニーズに、メンバーの組み合わせを柔軟に行って応えています。これもすごい【価値】です。
 
 
価値には色々なものがあります。
 
ビジネスの場合、基本は【顧客が受けとる価値】が基本となりますが(それが売上・収益になるので)、顧客が受けとる価値以外にも、多様な価値が存在しています。
 
 
さて、以下の中で「価値あるもの」と「価値のないモノ」はどれとどれでしょうか?
 
・信頼関係を築く
・助け合う
・いがみあう
・長所を伸ばす
・のんびり過ごす
・やりがいを感じる
・だらだら過ごす
・リラックスする
・ぼーっとする
・没頭する
・専門性を磨く
・幅を広げる
・お客様に喜んでいただく
・挑戦する
・リフレッシュする
・効率化する
・便利になる
・面白さを感じる
・手間がかかる
・叱る
・怒る
・褒める
・教育する
・ワクワクする
・学ぶ
・成長する
・楽しむ
 
 
 
さて、どう思われたでしょうか?
 
 
■利益の最大化ではなく価値の最大化を目指す
 
資本には種類があります。
 
財務資本(お金がある)
設備資本(工場やPCなど生産設備を持っている)
知的資本(特許を持っている)
人的資本(優秀な社員がいる)
社会関係資本(ステークホルダーに信頼関係がある)
自然資本(豊かな自然を有している)
 
 
資本は基本的に「生産手段」のことです。
手段だから目的があるわけですが、目的は「収益」ということになります。
 
しかし財務価値以外の向上に努めることもまた、企業の存在意義になりえるでしょう。
 
 
 
例えば障碍者雇用に積極的な会社というものがあります。むしろ「障碍者雇用」が目的で設立された、という会社があったりします。
 
この会社の利益が小さいからと言って「価値が小さい」ということになるでしょうか?
 
 
一般的に
利益=売上-コスト
という数式が大事にされています。
 
そして、利益を大きくすることが経営の目的であり、会社の存在意義である、というような考え方があります。
 
しかし、この「利益=売上-コスト」という考え方をしていると、様々な「価値」を見落とすことにもなります。
 
 
利益=売上-コストは、財務的価値しか表現しにくいのです。
 
 
例えば
 
企業価値=株主配当+人件費+外部支払+研究開発費+顧客への提供価値
 
 
と考えるとどうでしょうか?
 
 
これは足し算になっていることがミソです。
引き算(利益=売上-コスト)の世界では、人件費や外注費は「減らすべきもの」になります。
 
「利益の最大化」をしようとすると引き算の世界を生きることになりますが、「価値の最大化」を指針とすれば足し算の世界を生きることができます。
 
 
 
さらにこれを推し進めて、
 
企業価値=株主の豊かさ+社員の豊かさ+取引先の豊かさ+未来の豊かさへの投資+顧客の豊かさ
 
と考えるとどうでしょうか?
 
価値(豊かさ)は定量化されたものだけではありません。定性的な価値もまた、重要なものです。
 
 
これからの企業が増やしていくべきなのは、利益よりも価値なのではないでしょうか。
 
 
 
■「売上を増やすという目的のために、社員を成長させる」のか?
 
 
社員が成長するということはそれだけでも価値があります。
 
社員がやりがいを感じるということはそれだけでも価値があります。
 
「社員のやりがい」は決して、収益向上のための【手段】ではないのです。
 
 
これも
企業価値=株主の豊かさ+社員の豊かさ+取引先の豊かさ+未来の豊かさへの投資+顧客の豊かさ
 
という世界観であれば、無理なく表現できるのです。
 
 
 
これは、非上場企業においては、いますぐ実践できることです。
 
 
上場企業であっても「財務的価値の創出(株主へのリターン)はノルマ。当社の存在意義は価値の最大化」とすることは可能です。
 
 
CSR部門などのジレンマも解消されます。
 
CSR部門なども「当社の利益に貢献しているのか?」と、手段としての正当性を問われてきた歴史があります。
 
しかし、
 
企業価値=株主の豊かさ+社員の豊かさ+取引先の豊かさ+未来の豊かさへの投資+顧客の豊かさ+社会の豊かさ
 
であると考えるならば、社会の豊かさの創出に貢献する活動は、十分に企業価値を高めるものになります。
 
利益創出のためのブランディング活動の一環としてCSR部門を位置づける、というようなことではなく、CSR部門自体が価値を創出しているのです。
 
 
■利益とは何か?
 
 
売上は、顧客価値を表しています。
多くのお客さんが、高いお金を払ってでも欲しいと思うものを提供できたときに、売上は大きくなります。
 
では、利益とは何でしょうか?
 
利益を大きくする必要はどこにあるのでしょうか?
 
 
利益を大きくするのは「株主の経済的便益のため」です。
 
 
 
逆に言うと、株主が「自分たちの経済的便益は最低限でよい。それよりも、社員や、地域社会のためにお金を使って欲しい」と考えるならばそのような会社になります。
 
実際に、地方の非上場企業などではそういう会社がしばしばあります。
 
「利益の最大化」を会社経営の目的として置いていないということです。
 
 
 
 
■どんな価値観で会社経営をするか?
現在は、会社が、より社会的な存在に進化することが求められているタイミングのように思います。
 
古くは岩井克人が「会社は誰のものか?」で問題提起をしていました。
 
「会社は株主のもの」「だから株主価値の最大化のために動く」という価値観ももちろんあるでしょう。
 
しかしステークホルダー資本主義といった概念が出てきているわけですが、「ステークホルダー全体の価値の最大化のために動く」という価値観も、選択肢としてはあっていいわけです。
 
 
さて、これからみなさんはどんな価値観によって会社経営に関わっていくでしょうか?

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