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デザイナーと健康について

久しぶりの書き込みです。というのも、ちょっとだけ調子を崩していた時期があり…。そのことについても、このあと書いていければと思います。

突然ですが、デザイナーにとって日々重要な心がけって何でしょうか。デザイン・スキルの向上?情報収集などのインプット?知名度を上げるための発信?

人によって考え方は様々だと思いますが、私が今いちばん重要だと思うのは「健康」です。

少し長くなりますが、今回は私がここ1年半くらいで経験したことを通して、デザイナーのフィジカル面とメンタル面の健康について考えてみたいと思います。このことは、デザイナーのみならずクリエイター全般に言えることなのではないかと思います。

フィジカル面の健康について

まず、わかりやすいところでフィジカル面。一日中座りっぱなしで目・肩・腰が疲れるのはもはや職業病だから…と常態化してしまっているデザイナーは多いのではないでしょうか。中には深夜もしくは朝まで作業なんて当たり前という人もいるかもしれません。

デザイナーという職業は基本、労働集約型です。ディレクターとしてアウトソーシングでもしない限りは、自分で手を動かして、動かした分だけ成果が上がる、ある意味結果が目に見えて分かりやすい仕事です。

しかし、やはり自分一人、もしくは数人であったとしても、手を動かして作れる量にはやはり限界があります。もちろん頑張って無理をすれば、何とかなる場合もありますが、それによって体を壊してしまっては元も子もありません。私自身ほとんど外注したり誰かについてもらったりしないので、まったくエラそうなことは言えないのですが…。

特に個人でデザイナーをやられている場合、体を壊してしまったら即仕事とそれに伴う収入がなくなってしまいます。まさに体だけが資本なわけです。会社に勤めていても、状況は大きく変わらないでしょう。

お恥ずかしい話ですが、私も若い頃はかなり無茶をしたものでした。体力には自信があったし、いくらでも仕事ができると思っていました。作ったものに良い評価がもらえたら嬉しいし、そのためにできる努力は惜しまない、というのは誰もが思うところではないでしょうか。

しかしながら、この仕事の最も幸福にして不幸なのは、何よりも「仕事が楽しい」ということなのです。

楽しいから、いくらでもできてしまう。業務とはいえ、命令でやらされている感覚ではなく、自らすすんで作業したくなってしまう。世に照らせば、自分の仕事が楽しいというのはとても幸せなことなのですが、無限にできてしまうからこその危険性も孕んでいるのではないかと思うのです。

私自身、コロナ禍で在宅勤務中心になったことで、フィジカル面の健康について真剣に考えるようになりました。会社への通勤は意外と体を動かしていたし、仕事中もなんだかんだで歩いたり移動したりすることで、モニタの前にずっと齧り付いている状況ではなかったのだということに、強引に気付かされました。

特に在宅勤務になって最初の頃は「目」が異常に疲れました。モニタがなかったり、机の奥行きが狭かったことも一因だと思います。それと同時に肩も凝り、腰痛も悪化しました。そんな状況が2〜3ヶ月続いた頃、ひょんなこと(子どもと相撲をとっていましたw)でギックリ腰にもなりました。

これはまずいと思って、家でもできる運動を探してたどり着いたのが「リングフィット アドベンチャー」でした。当時入手困難でしたが何とか手に入れ、できるだけ毎日のルーティーンとして取り入れたところ、ある程度体重も落ち、全身が締まってきた実感がありました。始めてから1年ちょっとでアドベンチャーは3周クリアしてしまい、最近では黙々とトレーニングのみを行なっている状態です。

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私の場合はそれまで全く運動していなかったからこそ、特に効果が実感できたのだと思います。そして、朝かるく運動してから仕事を始めることで、頭もすっきりして集中もしやすく、良いことづくめでした。その効果もあってか、今年の健康診断ではおそらく新入社員の頃以来の「A判定」が出ました。

一方、メンタル面は…

怪我の功名とでもいうべきか、コロナで在宅になったことで、私は肉体的には入社以来ここ20年で最も健康な状態になったのです。通勤時間がなくなってその分の時間を運動に充てられたことに加え、外食や酒が減ったことで食事も健康的になったことも大きかったのだと思います。

もちろん人によって状況や事情が異なるので一概には言えませんが、フィジカルな面については、自己管理をしっかりして運動や食事に気をつければ、不健康が当たり前のデザイナーでも、ちゃんと健康的な生活は送れるのだということが分かりました。

そういう意味では、ここ一年半くらい身体的には本当に健康的な毎日でした。しかしながら、いつものように朝の運動を続けていたのですが、ある頃から徐々に動くのが億劫になって、そこはかとなくやる気が出なくなってしまった時期がありました。

特に天気の悪い月曜の朝などは最悪で、体自体は動くのですが、どうしてもやる気が出ない。それと同時に仕事も段々とやる気が出なくなり、何とか頑張って仕事は続けているものの、今度は細かいミスをいくつか立て続けに起こしてしまいました。

自分で言うのもなんですが、デザイナーにとってミスや誤植はご法度だと思っているので、できるだけ厳しく何度もチェックしている方で、これまではほとんどミスもなくやってきました。しかし、どれだけ気をつけているつもりでもミスが増えてきて「これはちょっとおかしいぞ」と思い始めたのでした。

そうこうしている内に、ある朝何とか運動をこなしたあと、何だか立っているのが辛くなって、何もない場所でパタンと横になってしまったことがったのです。ズーンと暗い気持ちが立ち込めて、収まらない感じ。

いよいよこれはまずい、鬱なのではないかと思い、とりあえず周りにも相談しつつ、心療内科を予約しました。幸い自分の場合はまだわりと冷静に自己分析ができていたのですが、おそらく原因としては「やらなきゃ、やらなきゃ」と自分を追い込みすぎたせいなのではないかと、何となく感じてはいました。

会社辞めるの辞めました

実は、もうぶっちゃけて言ってしまうと、今年に入る少し前から「来年2022年の4月で会社を辞めて独立しよう」と心に決めていたのです。そのタイミングというのはちょうど勤続20年に当たるタイミングで、いろいろ節目としても都合が良かったのです。

しかし、どうやらそれが図らずも自分にプレッシャーをかけてしまっていたのかもしれません。少しメンタルの調子を崩してしまったことで「こんなことでは独立なんて到底無理だ」「それこそ自分が体調を崩したら家族に迷惑をかけてしまう」と考え、「よし、会社を辞めるのを辞めよう」と思ったところ、スーッと気持ちが軽くなったのです。

思い返せばここ数年は、常にどこかで独立を視野に入れて動いてきました。別に会社が嫌になったとかではありません。今年で42歳になったのですが、人生100年時代ということを考えると、45くらいまでには会社を辞めて、50歳くらいまでには新しい生き方を確立していきたいという思いがあったのです。

独立するにあたって、ひとつ必要になるのが「知名度」だと、私は考えていました。そのため、本業での成果だけではなく、様々なジャンルのことに手を広げ、できるだけ世の中に発信することを心がけていたという面があります。それこそマンガを書いたり、写真を撮ったり、Webサイトを作ったり、プログラミングを使ってNFTアートに挑戦してみたり。本を書いたのも、実はその一環でもありました。

もちろん、それらの活動はすべて無駄ではなく、それなりに成果もありました。そのまま仕事にも直結できる経験をたくさん積み上げることができましたし、今でも様々な面で自分の役に立っています。

しかしながら、それらもどこかで中心にあるのは「何かモノを作る」ということで、大きくは「仕事」の延長線上でしかなかったのだと思います。やっていてすごく楽しいことではあるのですが…。

メンタルの不調をフィジカルで補ってみる

結局、心療内科に相談したところ、幸いにも「うつ病と診断するほどではなく、ストレスと緊張によるものだろう」という診断結果でした。本当に重いうつ病になってしまうと、よく言われるように自殺願望などの重い症状が現れてしまうものらしいのですが、そこまでではないだろうと。

今回のことでよく分かったのは、精神力に強いも弱いもないということ。いやむしろ、精神的に強いと思い込んでいる人の方が、不安定になりやすいのかもしれません。私自身「仕事熱心で何でも自分で抱え込んでしまう」など、鬱になりやすいと言われている傾向に当てはまる点が多いなと思ってはいましたが、まさか本当に自分がそんな風になるとは思っていませんでした。

一方、周囲に相談する中で「何か打ち込めることをやった方がいいかもしれない」「普段とはまったく別のコミュニティに属してみるのもいいんじゃないか」というような助言をくれた人が何人かいました。

たしかに言われてみれば、自分にはそういったものが一切ありませんでした。明けても暮れても「作ること」ばかり。それはもちろん楽しいのですが、心の「隙」や「余裕」が足りなかったのかもしれません。そこで今回のことを機に、仕事と一切関係なく打ち込めるのは何かと考えたところ、パッと思いついたのが「水泳」でした。

自分は3歳から高校まで、水泳ばかりやっていたのです。高校でパッタリと辞めてからは、その反動でまったく運動らしい運動をやってこなかったのですが、どうせやるなら経験を活かせるものがいい。そして、やるからには何か目標を持って取り組めるものがいいなと思い、前から少し気になっていた「マスターズ」に登録して、大会にも出てみたいと思うようになったのです。

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思い立ったら善は急げで、すぐに近所でマスターズのコースもやっているスポーツクラブを探し、とりあえず体験をしに行ってみることにしました。しかし、ぶっつけ本番で行ってみたのはいいものの、初日の体験は本当に死ぬかと思いました(笑)

自転車を漕ぐのと同じで、泳ぎ自体は体が覚えているものの、まず肩が回らないし、息が続かない。リングフィットである程度体は整っていると思っていたのですが、やはり水泳で使う筋肉と心肺機能はちょっと特殊で、ヒーヒー言いながらついていくのがやっとでした。しかも周りは全員自分より高齢の方ばかり。

しかし、25年ぶりのまともな水泳の練習は、何だかとても楽しかったのです。現役の頃は、とにかく練習がキツくて、長年やっているから何だか義務感のようなものもあって何とか続けていたものの、純粋に水泳を楽しむような気持ちは、とうに忘れてしまっていました。

子どもの頃はとにかくガムシャラに泳いでいて、それでも若いので、頑張ればそれなりに記録も伸びたものでした。一方で、大人になると体力が衰えた反面、物事を少し俯瞰で見ることができるようになっているので、いま自分に足りていない部分を冷静に分析して、それに対処するためにはどういうトレーニングをすればいいか、どういう方向でフォームを改善すればいいかなどを楽しみながら考えて、前向きに泳ぐことができるようになっている気がします。

このように自ら課題を発見して解決策を探していく過程は、実はすごくクリエイティブなことで、そこには「アイデア」が必要なんですね。もしかすると、これもどこかでデザインとつながっているのかもしれません…。

とりあえず、今の自分に足りないのは肩や背中まわりの筋力と有酸素運動だと考え、筋力アップのためのチューブトレーニングに加え、「フィットボクシング」というゲームでボクササイズも取り入れてみることにしました。あとは、お約束のプロテイン。

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25年のブランクがあった分、すべてのものが進化していて、それもまた面白い。ゲームはとにかくよくできているし、トレーニング用チューブはAmazonで翌日届くし、プロテインは昔よりはるかに飲みやすくなっている。

そして何より大きく違うのは「情報量」です。検索すればいくらでもマスターズの情報を調べられるし、YouTubeではトップスイマーが丁寧にテクニックの説明をしてくれている動画がたくさんあります。

こうした進化も、何だか未知の世界に足を踏み入れたようで面白く、仕事と別で何かに打ち込むというのはこういうことかと、20年働いて今更ながら気づいたのでした。

まだ泳ぎ始めて1ヶ月程度ですが、今は基本、下記のようなスケジュールで生活に運動を取り入れて、泳ぐためのトレーニングを中心にサイクルが回っています。

日 朝:水泳/夜:チューブ
月 朝:ボクササイズ/夜:チューブ
火 朝:ボクササイズ/夜:チューブ
水 朝:リングフィット/夜:水泳
木 朝:ボクササイズ/夜:チューブ
金 朝:ボクササイズ/夜:チューブ
土 完全休養日

どれも短時間でそれほどハードな運動ではありませんが、これも在宅でないと到底できないスケジュールだと思います。通勤の片道1時間が、そのまま運動に置き換わったようなものです。

ただ、このように水泳という一つの目標ができたことで、仕事にもメリハリができて、より効率的に動けるようになってきたのではないかと思います。今はメンタルの調子も良く、生活そのものに張り合いが出てきたように感じています。

仕事にばかり注力し過ぎると、どうしてもいろんなことを考え過ぎてしまうので、やはり何か別のことで「気をそらす」ということも、人生においては大事なのかもしれません。

若い頃は「趣味に勤しんでいるオッサンなんてダサい。何で仕事に命をかけないんだろう」なんて思ったりしたものでしたが、今ならはっきりとその考えは間違っていると言えます。

「仕事はもちろん一生懸命やるべきだが、命をかけてまでやってはいけない」

今はそう思います。

仕事はもちろんこれまで通り全力で取り組みますし、「何かを作ること」も少し余裕ができたら再開していくつもりです。しかしながら、それと同時に趣味も全力で楽しみながら生きていきたいと思っています。

少し長くなりましたが、デザイナーというフィジカル的にもメンタル的にも不健康になりがちな仕事だからこそ、とにかく心身の健康を大切にしないと、きっとどこかで後悔することになるのではないかと思います。

それこそWORKとLIFEのバランスを保ちながら、自分自身とその家族がWell-beingであることを第一に考える。これこそが「自分の人生のデザイン」なのではないかと思うのです。

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