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あの読書感想文のこと。

本を書いています。 Vol.32

子どもたちの夏休みが終わりました。

夏休みといえば宿題なわけですが、夏休みの宿題なんて、自由工作や自由研究以外は、何をやったかなんて私はほとんど覚えていません。特に読書感想文に至っては、小学校の6年間、毎年書いていたはずなのに何一つ思い出せません。あれは一体何だったのでしょうか。

そもそも「感想」とは何なのかが、まず私にはよく分かりませんでした。「感じたり想ったりしたこと」という意味なのでしょうが、「僕はこう感じた。こう思った。」とただ思ったことを書いても面白くないし、そもそも普段の生活の中で、お手本となるような感想文を見たことがないのです。「いい感想文とはどういうものか」が、そもそも分からないのだから、筆が進まないのも無理はありません。

これは色んな人が言っていることですが、日本では小中高大と学ぶ中で、「文章の書き方」をキチンと習う機会が極端に少ないのです。国語の勉強の多くが「空欄に当てはまる漢字を書きなさい」とか、「主人公が線①のように考えたのはなぜか。次の3つの中から選びなさい」とか、テストで正解を答えるための勉強が中心になっていることが、ほとんどなのです。

決められた教育課程を網羅するためには、どうしても効率的にならざるを得ないのかもしれません。そもそも読書感想文が長い夏休みの宿題になっているということは、「文章を書くことは時間のかかる面倒くさい作業である」と考えられているように捉えられなくもない。そう勘ぐってしまいます。

そりゃあ文章を書くのが苦手という人が多いわけです。「文章を書いて褒められる」という成功体験を得られる機会が少ないわけですから。

そんな中、うちの小6の娘も、夏休みの終わりに読書感想文を書きました。普通なら小説や物語などを題材にするところですが、娘は何を思ったのか、あの田中泰延さん「読みたいことを、書けばいい。」を選んだのです。

はじめは、何だったか忘れましたけどイルカのドキュメンタリーみたいなものを読んで書こうと思ったらしいのですが、どうもそれじゃあ納得がいかなかったらしく、散々悩んだ挙句に、あの本を選んだそうです。

たまたま私がひろのぶさんと知り合いだったこと、少し前に対談したこと、また、そのために付箋だらけの本が家に置いてあったことなども、キッカケになったのかもしれません。とはいえ正直言って、小学生が進んで手に取るジャンルの本ではないでしょう。

しかし、おそらくこれまでつまらないと思ってきた読書感想文に対して、彼女なりに忸怩たる思いがあったのでしょう。そんな中で、あのタイトルが目に入ったのだと思います。

読みたいことを、書けばいい。

この本のすごい所は、タイトルだけで文章が苦手だと思っている人の救いになっていることです。

娘はあっけらかんとした性格なのですが、書いている間はコソコソとして、どんなことを書いているのか、私には見せてくれませんでした。しかし、出来上がった文章を読んだとき、これが我が子ながらなかなかよく書けていると感心してしまいました。というより、はっきり言って衝撃を受けました。

これは是非、作者であるひろのぶさんに読んでもらおうと思い、Twitterにアップした所、これが思いのほか多くの反響をいただいたのでした。

ここで文字を書き起こした方が読みやすいのでしょうが、肉筆の方が圧倒的に強いと思うので、ぜひ画像で読んでいただきたいと思います。

ひろのぶさんとのつながりもあり、何とあの燃え殻さんにもこれ以上ないお褒めの言葉をいただきました。ありがとうございました。

そしてさらに、幡野広志さんには写真の撮り方まで褒めて頂いちゃいました。ありがとうございました。

そんなこともあって、丸2日間くらいに渡って「いいね」やリツイートが止まらず、実に多くの人からありがたい言葉をたくさん頂きました。本当にありがとうございました。

特に多かったのが、「小学生とは思えない文章」「字がキレイ」「感動した」といった内容でした。娘にはスマホでずーっと途絶えないたくさんの感想を見せましたが、しばらく読んで「ひー!読み疲れたー!」と言ってどこかに行ってしまいました。嬉しさとともに恥ずかしさもあったのでしょう。

私がこの感想文でいいなと思ったのは「強い意思」です。

少なくとも、ここまで力のこもった読書感想文を、私は読んだことがありません。読書感想文なんてつまらないし、オススメの本を(少しだけ)読んで、適当に済ませてしまえばいい、というのが普通の感情かと思います。

しかし、娘はあきらめなかった。

つまらない宿題を、何とかして楽しいと感じられるものにしたい。そのために最適と思える題材を選び、苦労して読んで、自分なりに得るものがあった、ということ自体が、彼女にとって今回の大きな収穫であったはずなのです。

宿題をただやらされるだけの義務として捉えるのではなく、自分なりに工夫して臨むことで、苦手なものを克服することができた。これは彼女の今後の人生にとって、大きな一歩になることでしょう。

前にも書いたかもしれませんが、勉強というのは、その内容もさることながら、勉強をするための「努力の大切さを知ること」、それ自体が勉強の真髄なのではないかと思うのです。

そして、この「読みたいことを、書けばいい。」という本は、今も多くの人に影響を与え続けています。やっぱり、それだけの力があるのだと思います。

娘がこの歳でこんな素晴らしい本に出会えたことを、作者のひろのぶさん、編集の今野さんに改めて感謝したいと思います。ありがとうございました。

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ところで、Twitterのコメントで「どういう教育をしたら、こんな子に育つんですか?」というありがたい言葉も、たくさん頂きました。ただ、私は子どもに対して特に何もしていません。やっていることといえば、大きくは、一緒になって遊んでいるだけなんです。

小さい頃から、私がいつも何か絵や漫画を描いたり、デザインしたり、変なものを作ったりしているのを見ていたり、一緒に何かを作ったりしてきたのは、少しは影響があるのかもしれません。

娘も、小3の息子も、いつもたくさん絵を描いたり、本をたくさん読むんです。これは、私が子どもだったときよりも何倍もやっています(最近はマンガやゲームも多いですが…)。そんなこともあってか、親の私が言うのもなんですが、二人とも感受性や発想力が豊かで、好奇心旺盛で、面白いことが大好きな子どもに育っていると思います。

何だかもう、それだけで大丈夫なんじゃないかと思うのです。

学校の成績とか、運動とか、もちろんそれもできた方がいいに越したことはないのですが…。

もちろんこれから先、何かをキッカケに色んなことが嫌になってしまったり、挫折してしまうようなこともあるかもしれません。そんなときは、そっと手を差し伸べてあげたいと思っていますが、そうでもない限りは、もう自由奔放に、思うがままにのびのび育ってくれればいいと思っています。

君たちはすごい。尊敬してるぞ。


私が読みたいことを書いたこの本も、読んでもらえたら嬉しいです。娘はこの本で感想文を書こうかとも思ったらしいのですが、さすがにそれはやめたようです(笑)


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