見出し画像

エッセイ | 周りになじむ

スマートフォンのシステムアップデートをするために駅前のカフェへやって来た。私は自宅でWi-Fiを使えるよう契約していないため、Wi-Fi接続の場合しか更新ができないシステムアップデートは困り種だ。

意外にも駅前のカフェは混雑しており、全席が使用中というわけではないが、数える程度にしか空席はない。

ロングソファに等間隔で机が並んでいる席の1つが空いていたため、そこにカバンを置いて席を確保する。

以前から気になっていたアイスドリンクを飲みたかったのだが、あいにくその時は涼しかったためホットコーヒーを注文した。


コーヒーを受け取ってソファに座ると、私はすぐにシステムアップデートを始める。画面上には「あと5分くらいかかりますよ」といったメッセージが表示されている。

「案外長いんだな」と思いながら、コーヒーの隣に置いたレシートに目をやる。レシートが1枚、交通系ICカードを使用した際の紙が1枚と、あとは時間の書かれた紙が1枚。

どうやら席の利用には時間制限があるようで、90分しかお店には居られないようだ。これだけ混んでいるのに、人の出入りが激しい理由は時間制限のおかげだと納得した。

「まあ、私はシステムアップデートが終われば出る予定だから問題ないな」と思いコーヒーを飲む。


私は電子書籍で購入しているエッセイを読みながら、アップデートが終了するのを待った。やっぱり、エッセイはひとつが短いためどんどん読め、疲れたら休憩を挟めるから楽でいい。

ページをめくり、ひとつを読み終えるとアップデートの進行状況を確認する。想像よりも進みが遅く、「これはじっくり待つ必要がありそうだな」と腹をくくる。

それからはひとつエッセイを読んではコーヒーを飲むを繰り返して時間が経過していくのを待つ。

また新しいエッセイを読み始めその世界観を楽しんでいると、急に画面が真っ黒になった。


ついにインストールの終盤に入ったようだ。エッセイは読めないし、イヤホンからも音楽は聞こえない。全ての娯楽をスマートフォンに頼り切っている私にとって、この時間は何もないに等しい。

仕方なくコーヒーを飲みながらインストールが終了するのを待つ。

周りを見渡すと、他の人たちもスマートフォンかパソコンを見ている。それ以外を見ている人の方が珍しい。スマホを机の上に放置してボーッとしている私なんて怪しく見えるほどだろう。

ボーッとしているとイヤホンがスマートフォンと接続したことが分かった。「待ってました!」と、すぐに私はスマートフォンを持ち、途中で終わってしまったエッセイを読み始めた。

これで私も周りの人たちとなじめるぞ。



こちらもどうぞ


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?