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エッセイ | せもたれにラブソング

作業中に垂れ流している音楽アプリからSHISHAMOの『ブーツを鳴らして』が聞こえてくる。それを聞いて私は項垂れてしまう。今年もこの季節がやって来るぞ、と。

私は季節ごとにプレイリストを作ることがある。秋のプレイリストはまだ作れていないのだが、冬のプレイリストはある。「冬」というよりもクリスマスのプレイリストに近いのだが。

『ブーツを鳴らして』は冬のプレイリストに入れている楽曲のため、毎年のように聴いている。これを聴くと冬が来たなと思えるし、もう年末だなといった気持ちになる。そして、今年も何事もなかったなと寂しくなる。


たった1曲だけでここまで気持ちを左右されるのだから、音楽はなかなか侮れない。元気を出すこともできれば落ち込むこともできる。みんなが同じように感じるのであれば、音楽で世界を征服できただろうなと思ってしまう。

ただ、人はそれぞれ考え方も違えば感じ方も違う。仮に同じであっても、状況が違えばそれらは変わってくる。

その上、ミュージシャン自身の状況次第で、作られる楽曲の性格は変わってくるだろう。


違うバンドの話になるが、初めてOfficial髭男dismの楽曲を聞いたのはラジオから流れてくる『Clap Clap』だった。軽快なリズムで「憂鬱を追い出せ!」と歌う声は明るく、それを聴いた私も元気になれた。

気になった私はOfficial髭男dismの楽曲を他にも聴いてみたのだが、驚いたことにやるせない思いになるものが多かった。言ってしまえばいくじのないものばかりだったが、かわいらしさのある楽曲だ。

「あんなに明るい楽曲を歌っているのに、どうして?」と思ってしまうほどに、作詞作曲を主に行っている藤原聡を心配してしまうほどだった。

これが2016年のことで、2018年にはメジャーデビューして人気バンドの仲間入りを果たした。メジャーデビュー以降の楽曲は愛を歌うキレイな印象へと変わっていった。

2019年に藤原聡が結婚したことを考えると、婚約の前後で愛についての考え方が変わったのかもしれない。それが楽曲に関連しているのかは分からないけれど。


私は最近リリースされているOfficial髭男dismの楽曲も好きだが、頻繁に昔の楽曲も聴いてしまう。やるせなくてどうしようもないけれど「こっちを見て」と叫ぶような歌が、今の自分に重なってしまう。

SHISHAMOの『ブーツを鳴らして』を聴いてしまうのも同じ理由だ。

ラブソングなんて聴きたくないのだが、今の自分が寄りかかれるものはそれしかないから耳を傾けてしまう。



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