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ギブミーチョコレート

ご飯は唯一の楽しみだった。
徐々に固形物が食べれるようになり、メニューが2択から選べるようになったが、何かの手違いでその要望が通らなかった日は一人で泣いた。そのくらい、ご飯だけが楽しみで生きがいだった。

ある日親が面会に来て、チョコレートを差し入れてくれた。
久しぶりに食べたチョコレートの味は衝撃的なものだった。
脳に電気が走ったような感覚。脳汁がジワジワと溢れ出るのがわかる、実に甘美で、砂糖は依存性のある麻薬なのだと再認識した。

戦後の日本で子供たちがチョコレートをせがむ写真を授業で習ったのを思い出す。
そんなに欲しいものか?と当時は思っていたが、今ならその気持ちが痛いほどわかる。
「ギブミーチョコレート」
板チョコのひと欠片がもったいないので、それを更に半分にして味わって食べた。泣きそうなくらい、美味かった。

退院して好きなものを食べれるようになった今、その感覚はすぐに忘れ去られてしまった。
日々の食事にも、大して感謝を抱かない。
だけど、忘れてはいけない。
数百円でチョコレートが食べられる私は、とても幸せなはずなのだ。

高校2年生 TABIPPO2020大阪支部🐣 発展途上国や貧困、ボランティアについて興味があります。いろんな国に行きたい 🇯🇵→🇰🇭🇰🇪