『小さいときから考えてきたこと』

黒柳徹子
新潮文庫 平成17年3刷

『窓際のトットちゃん』の第2弾が出たという話を聞いて、気になっていた。何十年も昔に読んだ第1弾の内容は詳しく覚えていないのだけど、もちろん粗筋は覚えていて、周囲と同じようにできない今でいうADHDやLDだったらしい著者がいい教育者に出会ってまっすぐに成長していく話。
気になっていたらこの本が目について、著者が小さい頃にどのように考えていたのか、どのように育ってきたのか興味があったので読んでみた。

著者は、結構いいご家庭に生まれたのだなあと最初のほうで思った。天才バイオリニストと呼ばれた父親と、とても綺麗で声楽をする母親。ご自身も女優になり、とんとん拍子とはいかないだろうけれども芸能界で仕事を続けている。うーん、うらやましい。いわゆる発達障害の特徴を持っても大きく凹まずに生きてこられたのは環境が良かったからなのだろうな。その点では、著者も「トモエ学園に出会えてよかった」という話を書いている。それ以外に、家でものんびりと育ったのじゃないだろうか。

子どもの頃の行動は、さすがに驚くようなこともしている。道路に新聞が敷いて重ねてあって、面白いからそこに飛び乗ったらトイレのくみ取る所に落ちたというくだりでは、かなり笑った。本当に、衝動で動いていたんだろうな。

ユニセフの親善大使としてどこに行ったか、どのように行動したかも書いてある。
戦地の近くにも行って重要人物に会う。私だったら、どういう話をしたらいいのかと思って何も言えなくなってしまいそうだ。そこで、理想でしかないと思われることでも相手に語る。すごいなあと思う。そして、現地の悲惨さにめげずに活動を続ける。私なら、きっと心が折れて途中でできなくなってしまうんじゃないかと思う。そいうことを続けるから、いっぱしの人間になっておられるのかなあ。

全体的に、さすがとても上品な言葉づかいで綴られていて、なんともしっとりとした気分で読ませてもらった。
定型発達ではなくても、できることを生かして幸せに暮らすことができる。今の子どもたちにも、勉強の成果だけを求めず、できることを伸ばして元気に生きてもらいたいと思う。


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