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[#47] ハウスメイトだったマリアの話

私がホームステイしていた家には、ホストマザー(以下おばあ)とその飼い猫(かわいい)のほか、韓国人男性とブラジル人女性が先輩ハウスメイトとして先に暮らしていました。途中何人かハウスメイトは入れ替わるのですが、初期メンバーはコリアン、ブラジリアン、ジャパニーズでした。(私のステイ先はハウスメイトが珍しく男女混合でした。)

渡英初日、UAEでの乗り継ぎ込み約20時間のフライトの後、送迎オプションをケチった私は、重いスーツケースを引きずりながらヒースロー空港からバスと電車を乗り継いで、自力でホーヴ Hoveのホームステイ先に辿り着きました。クタクタの身体で到着した家で出会ったのがハウスメイトの一人、ブラジル人女性のマリアです。

マリアは19歳のティーンネイジャーで、大学入学前のギャップイヤーに留学に来ていました。私より1週間早く3月下旬にイギリスにやってきて、3ヶ月後の6月末に帰っていきました。
彼女は出会った時点で「ネイティブレベルなんじゃないの?」というくらい英語が堪能(というか喋るのがめちゃくちゃ早い)で、留学初日の私は非常に衝撃を受けたことを覚えています。

私の渡英2日目、学校初日を終えたディナータイムに、おばあとハウスメイトと学校でのランチの話になった際、マリアが「明日、私が近所のランチスポットを案内してあげる」と申し出てくれました。
ありがたさ半分、英語力の自信のなさからくる怖気半分の中、翌日私はランチタイムに自分の教室でマリアを待ちました。
けれど何分待っても彼女は来ません。
授業が長引いているのかなと思いつつ、お腹も空いたし、仕方がないので待つのをやめて一人ランチに出ました。

その日一日、マリアとの約束をすっぽかしてしまったのではないかという罪悪感が喉に刺さった魚の骨のように消えず、悶々と悩みました。

ハウスメイトだし、悩むくらいなら素直に謝ろう…。
家に帰ってきてから「マリアごめんね、案内してくれるって言ってたのに、あなたを待てなくて今日は一人でランチに行ったよ」という英文を、日本語から英文にし、単語を調べ、ノートに書き、反復練習してから、ディナータイムにマリアに伝えました。

するとマリアは、こいつは何を言っているんだ、という訝しげな目で「何を言ってるの?そもそも私はあなたの教室がどこだか知らないわ!」と言いました。あの目は本当に覚えていない人の目でした。

彼女の性格なのか、ラテンの血なのかわかりませんが「自ら申し出た約束を覚えていないなんてそんなことある!?これが異文化交流ってコト!?」と、留学3日目にしてさらなる衝撃を受けました。

でも別の日にもマリアは、おばあがセッティングした、おばあの家族との庭でのバーベーキューの日に、友達と遊んで無断で帰ってこなかったり(その日の朝、おばあが参加できない時は連絡してね、と念押ししたにも関わらず)したので、そういう子だったんだと思います。

マリアはティーンネイジャーだからか疲れ知らずの行動派で、イギリスにいた3ヶ月の間は毎週末のようにヨーロッパ諸国とイギリス旅行に行っていました。
家にいないと思ったら、おばあから「マリアは今アイルランドよ」とか「彼女はオランダにいるわ」とか「友だちとロンドンに行ってるみたいよ」と聞かされました。平日は毎晩のようにクラブで朝まで遊んでいるようでした。(彼女の談では、今遊ばなくっちゃ!とのことでした。)

マリアの身の上話で興味深かったのは、彼女の両親は離婚しているけれど、それぞれに新しいパートナーがいて、マリアは実の父母とそのパートナーたちと仲が良いので、私には家族がいっぱいいる、と話していたことです。彼女の誕生日やニューイヤーパーティなど、家族が集まるタイミングでは、両家庭がパーティを開くので、昼は父方、夜は母方の方へ、複数箇所ハシゴして顔を出すから毎回飲みすぎてヘロヘロになるのよね、って言っていました。

今遊ばなくても、ブラジルでも遊んでるじゃん!

英語力にあまりにも差があったのと、会話の糸口が全く見つからず、マリアとはあまり会話する機会はありませんでしたが、ブラジリアンって遊び方が豪快だなあっていうのと、彼女は私みたいにちっちゃいこと気にしないんだろうなあ、というのを教えてくれた子でした。

ではまた。

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