品川 力 氏宛書簡 その四十五
啓久振りの御便りなつかしく、ありがたく拝見しました。
「タイムス」の拙稿御讀み下さった由で恐縮です。僕は
この數年來、二百册近くの、僕自身の好尚による本を
買ひ集めましたが、殆んど讀む暇もなく、それ位ですから、
文章を書きません。書きたいことはありますが、落ちついて書
く時間がないのです。先夜白十字の会の時、野瀨君に、品川君
は、ときいたら、力君を招待すると、商賣を休んで來なければ
ならぬから、氣の毒でワザと知らせなかったといってゐました。彼も
仲なか苦勞しただけあって、ひと