一錢亭文庫 / 菊池 與志夫

菊池 與志夫(与志夫、きくちよしお、本名:義夫1901年(明治34年)2月11日 - …

一錢亭文庫 / 菊池 與志夫

菊池 與志夫(与志夫、きくちよしお、本名:義夫1901年(明治34年)2月11日 - 1946年(昭和21年)1月1日)  與志夫が柏崎の新聞「越後タイムス」に戦前に寄稿した記事を中心に掲載しています。 旧王子製紙社員、「王友」編集委員(六~十九號) #一銭亭文庫

最近の記事

  • 固定された記事

花輪を於くる言葉

花輪を於くる言葉     菊 池 與 志 夫  あらゆる世の惰眠をむさぼる群 小飜譯家だち――諸君は、半歳の 全生活をあげてエドガァ・アラン・ ポオ・の心魂をかれ自らの心魂と した、わが兄弟品川力君の情熱の 炬火をあびまさに慚愧すべきであ る。若し世の偏狭なる人、彼のこ の宇宙に燦たる譯詩の完成に際し なほ滿腔の感謝と至上なる讚仰の 花輪とをおくるに吝かなるものあ らば、僕は敢然として彼らに言ふ。 汝はこの崇高至純の精神に充てる 藝術家の人格そのもの

    • 品川 力 氏宛書簡 その四十六

       「海風」㐧五号早速お送り下さいま してありがたく拝見しました。  貴兄の「大鴉」御苦心の結果、前訳 より遥かにいゝと思ひます。陽子さんの「早春 菜の花をおくられて」他二篇の詩は、昔どほり の、單純な表現美に、無限な情熱が沈潜して、 非常になつかしく、讀み返しました。工さんの絵は 力强い。近く是非お訪ねするつもりです。  皆さんによろしく。    さよなら [消印]13.11.14 (昭和13年) [宛先]本郷区本郷六丁目 ニ 三     品川 力 君 [差出人] 十一月

      • 品川 力 氏宛書簡 その四十五

        啓久振りの御便りなつかしく、ありがたく拝見しました。 「タイムス」の拙稿御讀み下さった由で恐縮です。僕は この數年來、二百册近くの、僕自身の好尚による本を 買ひ集めましたが、殆んど讀む暇もなく、それ位ですから、 文章を書きません。書きたいことはありますが、落ちついて書 く時間がないのです。先夜白十字の会の時、野瀨君に、品川君 は、ときいたら、力君を招待すると、商賣を休んで來なければ ならぬから、氣の毒でワザと知らせなかったといってゐました。彼も 仲なか苦勞しただけあって、ひと

        • 品川 力 氏宛書簡 その四十四

            つとむ 様  ごぶさたしてゐます。このあひだちょっと申上 げました雜誌お送します。小生の作品はつまらな いものですが、あんなに冷遇されるつもりではなかった のです。編輯が拙いのであまり愉快ではありません。 廿一日の休みは野瀨君の引越ですし、廿八日は旅にで るつもりで、今年はお宅へ御邪魔できません いづれ、そのうち、晩に、銀座の方へ参ります。 [消印]不明 [宛先]京橋区銀座尾張町     大勝堂内     品川 力 様 [差出人]  16tndoec    菊池与志

        • 固定された記事

        マガジン

        • 越後タイムス 大正11年
          0本
        • 品川力 氏宛書簡
          0本
        • 函館時代(夜光詩社)大正4~8年
          0本
        • 一錢亭文庫・蔵書紹介
          0本

        記事

          品川 力 氏宛書簡 その四十三

           つとむ様―今日はわざわざ月映をお送り下さって ありがたう。ご好意にたいして、お礼の申上げやうも ございません。いちどお訪ねするつもりでゐたのですが、 とかく身辺に憂悶おほく、鬱気にとざされて、失礼 してゐたわけです。漸く今夜から、今年になってはじめて の讀書をいたします。これから原稿もかけさうです。 一日にはどうぞお出下さい。お待して居ます。               菊池 与志夫 [消印]不明 [宛先]京橋区銀座尾張町     大勝堂     品川 力 様     

          品川 力 氏宛書簡 その四十三

          品川 力 氏宛書簡 その四十二

           ツトムさん―切抜帖と、お手紙ありがたう。あなたの作品を昨夜全部讀みました。あなたはいろいろと変名してゐるので、どれがどうだか、ちっとも分らなくなって、お終ひには、堀口大学も橋本虎之介も、みな、あなたと同じやふな気になったりしたのです。訳詩も悉く好きですが、あなたの「月の出」は、いちばん好きです。散文の「貧詩人」「どもりの学校」などは僕を大へん愉快にした作品で、あなたの、個性のほとんど全面が調子たかく、あらはれてゐるのは、どっちかといへばあなたの散文だと思ひます。(思ひ出の記

          品川 力 氏宛書簡 その四十二

          品川 力 氏宛書簡 その四十一

           つとむ兄―お手紙と御写眞ありがたう。 十八日は朝から母と大森へ行き、一時頃かへって、 きますから、是非おいで下さい。なるべくなら、二時頃がよ ございます。若し、それまでにかへってゐなくても、上って待って ゐて下さい。 [消印](大正13年頃か) [宛先]京橋区銀座尾張町     大勝堂     品川 力 様                        (日本近代文学館 蔵) #品川力 #越後タイムス #大正時代 #エンタイア #エンタイヤ  #書簡 #日本近代文学館

          品川 力 氏宛書簡 その四十一

          品川 力 氏宛書簡 その四十

           つとむ様――昨日は大変失礼しました。 廿五日は、野瀨君の結婚式にゆくので、二日の 休みには是非ゐらっしゃい。 製本はおついでのときにお願いたします。 背に黒で 月映 室生犀星著といれて もらって下さい。 そのうち夜でもお寄りします。       菊池 与志夫 [消印](不明) [宛先]京橋区銀座尾張町     大勝堂内     品川 力 様                        (日本近代文学館 蔵) #品川力 #越後タイムス #大正時代 #エンタイア #エン

          品川 力 氏宛書簡 その四十

          品川 力 氏宛書簡 その三十九

           つとむ様―この月にはいってから、朝は霜を踏み、夜は 密行の巡査にからだを嗅がれる頃まで、つまらない仕事に 沒頭してゐますので好きな書物を一頁もひらいたことはあ りません。昨夜深更机の上の卓燈をともすと、あなたから の小包と野瀨君の手紙と妻からの拙い封書と、この三つの 僕の心持を愉快にするものが載ってゐたのです。あなたのご好 意をありがたく頂きます。僕の書棚の百册ばかりの愛讀書 の中に、あなたのご好意を紀念すつものが三册もあるのは愉快 です。いづれひとかたづきついたら、ゆっく

          品川 力 氏宛書簡 その三十九

          品川 力 氏宛書簡 その三十八

          啓 御無沙汰申訳ありません。皆さん御変りあり ませぬか。  先日松宮氏のスケッチ展覧会の案内状を 御送り下され、ありがたく頂きました。廿六日に觀 に参りました。早速御礼を云はうと思ってゐましたが、 すっかり怠けて了ひました。  近來タイムス紙上にて貴君の溌溂たる文章に 接せず甚だ遺憾であります。 ちとおあばれになっては如何です。  大森の方へ是非お遊びにゐらっしゃい。 [消印](不明) [宛先]区内 銀座尾張町     富士アイスクリームパーラーにて     品川 力 様

          品川 力 氏宛書簡 その三十八

          品川 力 氏宛書簡 その三十七

          御ハガキありがたく拝見しました。 小生一週間前より突然発熱臥床 してゐます。本日漸く快方に趣きまして、 あなたの御便りをみました。御引越の由 ですが全快の上一度御訪ねしませう。 「貧詩人」はもう御かきににならないので すか。おかき下さい。   みなさんによろしく。 [消印]3.2.21 (昭和3年) [宛先]赤坂区 青山南町 五ノ二三     品川 力 様 [差出人欄]  二月廿日   大森馬込谷中一ノ一五一    菊池 与志夫                     

          品川 力 氏宛書簡 その三十七

          品川 力 氏宛書簡 その三十六

          啓 過日ハ失礼仕候 ソノ節廿五日ニ尊家ヘ 御邪魔ニ上ル御約束致候処急用出来仕リ、 本夕ヨリ一寸旅行可仕候間明日は参上兼致候 ニ付不悪御容赦被下度候 貴兄暑中御旅行ニ御出立前ニ是非 一度御邪魔に上ル心算ニ有之候 御両親始メ御令妹御令弟ノ皆様ニ 宜敷御伝ヘ願上候   匆々       廿四日 [消印]15.7.24 (大正15年) [宛先]港区 神谷町 九     品川 力 君 [差出人欄]  玉川村ニテ    菊池 与志夫 拝                       

          品川 力 氏宛書簡 その三十六

          品川 力 氏宛書簡 その三十五

           ひさしぶりの御ハガキありがたく拝見。C・K・C、と いふのはなんのことですか。小生には分りません。  御宅の皆さま御変り厶いませんか。小生數日中に転居し ます。今住んでゐる家も買ひとることにしましたから、今秋 位には田舎へ建てて、愈に隠居生活にふけることにする 考へです。小生は他の諸君のやうに明るい世の中に出て濶 歩するには適しない人間です。今年の暮頃には藝者でも 一人買ひとって、妻にするつもりです。  今月廿五日夜八時丗分の急行で歸鄕します。神經衰 弱療養のためです。あな

          品川 力 氏宛書簡 その三十五

          品川 力 氏宛書簡 その三十四

          昨夜ハ久振ニ御光来被下候処 生憎留守ヲ致シ失礼仕候 本夜 邦楽座ノ帰途御立寄仕度ト存 居候処時間遅ク相成候ニ付是亦失敬 仕候 御一同様御機嫌如何ニ御座候哉  ソノ内又御邪魔ニ上ル心算ニ有之候  皆様ニ宜敷御鳳声被下度候 [消印]15.5.4 (大正15年) [宛先]港区 神谷町 九     品川 力 君 [差出人欄]  三日深更    菊池 与志夫                        (日本近代文学館 蔵) ※候文の判読が私にはできなかったため、日本近代文学

          品川 力 氏宛書簡 その三十四

          品川 力 氏宛書簡 その三十三

          富士アイスクリームパーラーを出ると直ぐ、野瀨は、 「力君はいい靑年だなあ」と感嘆しました。 それから――  われわれは、谷崎潤一郎の鮫人を買ひに、三省堂へ いきました。さうして又、上野公園へ行きました。 十時です。上野のカフエー三橋は気が利いてゐて、それ に若い美人が多いので、彼は―一杯のみたい―といふので、 その、キャラバンを演奏してゐる明るい卓子に休息しまし た。僕、みかんと紅茶。彼は一杯といふ言葉に不拘、実 に三合をのんで、上機嫌です。十二時近くです。     ―――

          品川 力 氏宛書簡 その三十三

          品川 力 氏宛書簡 その三十二

           力君―昨日お訪ねくださつたさうですが、折 悪しく留守で失礼致しました。小生眼疾とイン フルエンザとが癒ると、横濱へ出張を命ぜられ、一日 寒風にさらされて、却って機嫌がよくなったやう です。  お仕事はお忙しいことでせう。ときどき珈 琲を嗅ぎに行きたいと思ふのですが、僕、冬 眠動物で落葉樹で、いぢけて小さくなってゐ るので、店の美しい女人たちの前にでるのが、 はずかしいのです。僕、婦人の前にでるのがはづかしい。 [消印]14.1.19 (大正14年) [宛先]港区 神谷町 

          品川 力 氏宛書簡 その三十二