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【FIRE】FIREに至るまでの資産形成のターニング・ポイント

前回は自身のFIREに至るまでのキャリアを振り返りましたが、本日はいよいよ資産形成に関して、それぞれターニング・ポイントだったところについて書きたいと思います。自身の資産形成、簡単にいうと1)負債を活用して時間を買う、2)ショック時に勇気を持って積極投資、3)NTT、この3点でしたね。

参考までに前回も掲載した自身と市場の過去30年のグラフを再掲します。

日経平均と自身の資産形成・キャリアの30年

2003年:ローンで車を購入→TOPIX/売出債(うりだしさい)の投資

2003年、外資系運用会社に勤務し始めて2年。ボーナスで外車を買おうとディーラーに行きました。当時は米国は2000年のITバブル崩壊、2001年の同時多発テロと景気低迷が継続。自動車販売もサッパリで、なんと「金利ゼロ%ローン」なるキャンペーンもやってました。外資系企業に勤務するといつクビになるかわからないという恐怖感もあり、当時の自分はまだ「できるだけ借金はしたくない派」でした。なので、自動車もキャッシュで買うつもりでした。

しかしさすがのキャッシュ派の私も、「金利ゼロ%」って聞いたら「お得だな」と思います。なので、10%だけ頭金入れて、残りの90%は全てローンで車を購入。使わなかったキャッシュを日本株指数TOPIXのインデックスファンド、それから当時は債券専門の運用会社に勤務していたということもあり、「売出債(うりだしさい)」を購入しました。

売出債とは、既に発行されている債券を50名以上の多数の投資家に販売・勧誘される債券のことです。当時は多くの米ドル建債券、豪ドル建債券、ニュージーランドドル建債券が、既発債として証券会社で販売されてました。特に豪ドル建、ニュージーランドドル建などは、当時満期まで3年から5年でも年率5%程度(6%とか7%とかもあったような)の利回りで販売されてました。

30歳前半だった当時は、子供がまだ小学生になったばかり。先々の教育資金や住宅購入のための資金も必要だろうなということで、全額TOPIXではなく、そこそこ安定感もありそうな上記も売出債も選択。そして、その後も2008年に転職するまで、ボーナスのたびにこの売出債とTOPIXの組み合わせで購入していきました。

結果としては、TOPIXは2003年には10%、2004年にはなんと43%の上昇となり、また売出債ももともと設定どおりの利回りの高さのほか、為替も豪ドル高、ニュージーランドドル高の進行とダブルでプラスとなりました。

低金利局面(つまり中央銀行が積極的に資金を市場に提供して資産価格を上げようとしている局面)での借入は必ずしもダメなことではなく、むしろ積極的に資産形成に活用する、ということを初めて実感した体験でした。留学中のInvestment(投資理論)の授業で、借入も投資判断(マイナスの投資)の1つと学んでたのが頭に残っていたのも幸いでした。

2008年末:米国株購入

2008年4月に債券専門の資産運用会社を退職、5月から株・債券両方扱っている運用会社で働き始めました。そして運がいいのか悪いのか、同年9月にはリーマンショック。もともとサブプライムローン問題で市場も下落していましたが、さらに追い討ちをかけた感じでした。新らしく働き始めた職場なのにいきなり人員整理も行われ、運良く自分がその対象となることはありませんでしたが、なかなか落ち着かない時期でした。

しかしそんな中でも、実際に運用を行っているポートフォリオ・マネージャー、特に株の運用者達は元気でした。またとない投資機会に興奮していたくらい(基本、債券運用者は悲観的、株式運用者は楽観的ですね)。

ちょうど前職でもらった最後のボーナス(これが当時は2月払い)と、新天地に転職する際の条件で得られた入社時のボーナス、そして新天地の通常のボーナス(新天地は12月払い)、という3つがその年に重なり、手元の投資資金は潤沢でした。2008年末、エキサイティングする運用者達につられて米国株(ただし、安定性重視のダウ・インデックスで)に積極投入、あとは日本の小型株も少しづつ購入していきました(当時よく仕事で話していた日本の小型株マネージャー、外人でしたがいろいろ教えてくれたので^^;)。

当然、リーマンショックの混乱から金融システム崩壊を回避しようと、各国中央銀行は積極的に低金利政策を実施、市場に資金を供給していきました。2003年、車を購入した際にも学んだとおり、こういう時は積極的に株を購入すべき。新聞誌面は連日、この世も終わり…的な報道でしたけどね。

2009年:自宅購入

2009年、子供が中学生になります。ちょうど私立の中高一貫校に行くことになり、通学の便、それからもともと賃貸で住んでいたこの地域が気に入っていたこともあり、そのあたりで家を買おうということになりました。

家族に関するライフ・イベント(この場合は子供が中学にあがること)と、市場タイミングがピッタリとハマることはそうそうありません。家の買い時って難しいと思うんですが、自分の場合はリーマンショック直後でもあり、金利も低いし住宅価格もまあまあ低迷中という、絶好のタイミングでした。もし「現時点で自宅を購入する?」ってなったら悩むでしょうね。

もともと、住宅購入のための頭金用には株ではなく、前述の売出債で資金を積み上げてきましたが、なにせ変動金利ローンが1%以下でしたからね。住宅購入においても「できるだけ自己資金は使わず、借りれるだけ借りる」っていう感じにしました。といっても頭金は10%くらい払ったでしょうか。あとの90%は変動金利ローンで調達。そして何年か後にはネット銀行の変動金利ローン(金利0.5%)に借り換えして現在に至ってます。

その時点で売出債は役目を終えたかな…と思い、全額日本株(特に小型株)に振り替えました。住宅ローンをできるだけ借りたことにより、この2009年のタイミングで投資残高を大きく減らすことがなかったのは幸いでした。

住宅ローンについては、FIREした今でも変動でそれなりの残高があります。金利上昇懸念があるとはいえ、それでも低金利。積極的に期限前返済することもなく、可能であればできるだけ借りていたいと思っています。

2012年12月:アベノミクス→NTT積極投資

リーマンショックから日本株ななかなか立ち直れませんでした。それに2011年3月、東日本大震災が追い討ちをかけます。不謹慎ながら、その時も買い時だなと思いながら地道に日本株を買ってました。

それまでは日本株といっても、割と小型株中心の投資でした。日経平均はまだまだ低迷していましたが、当時、たとえばメガネのJINSとか、ZOZOの運営会社、前澤さんのスタート・トゥデイとか、医療プラットフォームのエムスリーとか、小型株界隈はなんかいろいろと盛り上がっていたので、大型株のほうはあまり注目していませんでした。

しかし2012年12月、第2次安倍政権のアベノミクス。これをきっかけに大きくNTT(9432)を買い始めました。アベノミクスにより、これまで低迷していた日本株市場を本気で浮上させにきたと感じたこと、それからNTTはそれまでも配当+自社株買いを一貫して行ってきており、安定感かつ大きく資金を投入できる流動性もあったことから、「安心して買える大型株」でした。バブル後期にNTT上場で高値つかみされた方も多かったことから、NTT株の人気が低迷していたのも好都合でした。

2014年:不動産投資開始

2014年には、節税と資産形成、両方の目的で不動産投資を始めました。今回は詳細は割愛しますが、それまでの自分の運用は、主には上場株中心。しかしながら、以下の2つの観点から、不動産投資に乗り出しました。当時40代前半、ここから50歳までが大事な時期だと思いました。

  • 借入を活用して、自身の資産形成を加速化させたい(時間を買う)

  • 減価償却を活用した節税、そして投資法人設立により、個人とは別の財布を持つことでの資金効率の向上(いろんな出費の法人費用化)

  • 節税で戻ってきた所得税を投資に回し(消費に回さない)、自身の投資効率を更にUP

自身の不動産投資の詳細については別途どこかで書けたらと思います。国内においては、投資法人を設立し、飲食店等の店舗を中心とした商業用不動産をメインに現在も投資継続中、そして節税用の個人名義の不動産は、ニュージーランドの住居への投資がメイン。昨年2023年にはその役目は終えたかなってことでニュージーランドの不動産投資は撤退、現在は資金を日本円に戻しています。

2014年に始めた不動産投資。当時は「ちょっと乗り遅れたかな?」って思っていました。借入をして時間を買う行為ですが、始めるなら寿命までまだ期間の残っている若いうちから、もっと積極的にやっていてもよかったですね。不動産投資の検討、勉強自体は2011年の震災後くらいからやっていたんですけどね。そこはちょっと後悔しているところです。

早い段階でのFIREを実現するためには、「地道にコツコツ」だけではなかなか難しいところもあります(不可能とは言いませんが)。「中小型株で大きなリターンを狙う」「他人資本(借入)を利用する」等の加速材料が自分にとっては必要でした。

2016年:PEファンド投資、2017年:スタートアップ投資

2015年頃くらいでしょうか。機関投資家ビジネスの間では「スマート・ベータ」という言葉が流行り始めました。従来の時価総額型の指数のように市場全体の平均や値動きを代表する指数ではなく、財務指標等、別の要素に基づいて構成された指数で、中長期的には市場平均を上回るようなパフォーマスを期待する指数として年金運用やETFなどの連動指数として採用され始めました。

"スマート"とは、"賢い"って意味ですが、当時そのビジネスの真っ只中にいた私。本来の株式投資の「将来成長の見込める会社に資本を投入し、そこからのビジネスの利益を享受する」という原点からどんどん離れ、頭の良さそうな(頭でっかちな)機関投資家や運用コンサルタントのための"buzzword"である"スマート・ベータ"、全然"スマートじゃないよね…"と正直思ってました(笑)

日中のビジネスの影響でしょうか…上場株市場がそういったbuzzwordに影響されて見えるようになってきてしまったため、自身の投資に対する価値観をもう一度原点に戻そうと、「より明確に、成長企業に資金を提供し、今後の成長を共有できそうな」運用として、スタートアップ企業への投資に目を向け始めました。

1つがPEファンド(Private Equityファンド)を経由して、複数のスタートアップ企業に投資、そしてもう1つが個別のスタートアップへの直接投資です。PEファンドのほうは、1社目の外資系資産運用会社の社長さんであった方がその時に設立したPEファンドにほぼコネで最低投資金額以下の金額で出資させていただきました。そしてスタートアップ企業の直接投資の方は、大学時代の研究室の同級生がその研究室に残っており、彼の紹介で見つけてきた会社。CEOとの面談を通し、これは面白そうだと思い投資しました。

「とりあえずやってみよう!」という程度の意識でしたが、おかげさまでFIRE後の現在は、直接投資をしたいるスタートアップ企業の取締役として、日本でのビジネス展開、あと財務面のサポートを継続。なんとかEXIT(出口)まで導いていけるといいかな、と思っています。

2020年:コロナショック

そして最後のターニング・ポイントが2020年、年初のコロナショックです。これまでの自身の経験をもとに、「こうしたショックで市場が下落している局面でこそ積極的に買っていかないといけない」という感覚は身についていました。「未知のウイルスに対する恐怖」はありましたが、2月から3月にかけてはほぼ全力買い。相場の格言で「落ちてくるナイフは掴むな」(相場が底を打ったのを確認してから投資すべき)というのがありますが、僕はどちらかと言えば、「流血しながらも落ちてくるナイフを掴みにいく」タイプ。最近は底を打って戻ってくるのも早いですからね。切れた傷は後で治ると信じて掴みにいきます。ただ、すべての手が切れて無くなってしまっては元も子もありませんので、時間分散は意識しました。

人類がコロナウイルスに敗北するとしたら、株を持っていても持っていなくてもどっちにしても死ぬので関係ないです。であれば勝利を信じて株を持つ、という選択肢は自分にとっては合理的にしか思えませんでした。

いま、生きてることに感謝してます。

まとめ

長々と書きましたが、いろいろと運の要素も大きかった面はあるとは言え、もし「再現性のあることで今後の参考になるもの」という観点でまとめると以下のポイントかなとは思ってます(あくまでも自分主観)。

  • 借入金は必ずしも"負担"ではない。むしろ月々安定した給与をもらえるサラリーマンの価値を現在価値に引き直したもの、時間を買う行為と捉える。もちろんカボチャの馬車、スルガ銀行問題のように、自身の返済能力を偽造してまで借入するのは論外ですが。

  • マーケットのクラッシュ、〇〇危機、〇〇ショックというのは、ピンチでなくチャンス。新聞誌面に日々「暴落」「〇〇日連続で下落」「不安」「危機」という言葉が踊ったら、嬉々として買う。ただし、死なない程度に。

  • 拠り所となる安心銘柄を持つ。あるいは自分の得意分野をもつ。自分の場合は割と、上場株(大型株、小型株とも)、不動産(日本、海外とも)、みスタートアップ、仮想通貨(←これは遊び)、結構面白そうだと思ったのは手広くやってきましたが、拠り所はNTT(9432)でした。「自分は不動産」「自分は株」と、好き・嫌い、得意・不得意の観点から主要投資対象を絞るのも大事。実際、運用は株だけ、運用は不動産だけ、って人も周りでいますので。

私もまだ(もう?)54歳。FIREしたとはいえ資産を取り崩して生活しようとは思ってません。まだまだ投資を継続して増やす気マンマンです(笑)

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