ITの草の者
ITとは全く関係ない趣味の植物の話。
非エンジニアから見えているIT業界の今とかについて。
IT業界の下の方には色んな奴が蠢いていて、俺はそれをただ眺めてる。 これはその記録。 この物語はフィクションであり、実在の人物や団体等とは断じて関係ありません。まじで。
我が家のベランダに配置されてから数ヶ月の間全く動きをみせなかったその鉢の蕾は、何日か前から急激に大きく赤く膨らみ始めた。 旭山桜の盆栽だ。 溢れんばかりに張った蕾が開くのはもうすぐだ、そう思ってから数日が経過して花はまだ開かない。 ところで俺にはここ数週、週末毎に探し続けている植物があった。 東海園芸OPTE、ミニプランツシリーズのアデニウムオベスム。 砂漠のバラことアデニウムが200円以下で手に入る夢の様な商品で、俺は一度それを手に取ったことがあった。 1ヶ月程前の風の強
最近は週末毎に植物を探して散歩をしている。 家から浅草まで歩き、30分程電車に乗る。 到着したのは北斗の拳みたいな世界観の街(と言われる)、足立区竹ノ塚だ。 西口を出ていくつかの生花店を見て回り、西伊興という場所にある大型園芸店を目指し、続いて東に向かった。 場所によっては咲きはじめている桜なんかを眺めながら歩いていると運送会社の前を通りかかった。 休日だからか昼時だからか人の姿はない。 にも拘らず駐車場の隅、直ぐに手の届く範囲に多数の塊根植物が並べられていた。 どう見て
仕事の都合で曇天の小田急線登戸駅に降り立った。 小田急沿線には都合10年以上住んでいて、登戸も馴染み深い街だ。 現住所への引っ越しの前日、台風の影響で電車が止まり大雨の中で立ち往生したのもこの町だった。 待ち合わせまで少し時間が空いたから駅の周辺を散策した。 登戸駅周辺は再開発の真っただ中で、店の移転や閉店、新規オープンも増えているようだった。 歩いていると一件の花屋があった。フラワートーク。 昔ながらの佇まいの、けれど植物に興味を持たなかった頃の俺の視界には入らなかった店
植物に興味を持つようになって上野公園に盆栽の販売所がある事を知った。 Twitter(俺はXとは呼ばない)で検索すると歳末感謝祭で20%オフとの事。 それで年の瀬の週末に根津まで歩いた。 家を出て御徒町を抜け、デリーを過ぎて天神下を右折。目の前に不忍池が広がる。 盆栽はど素人だが桜を買う事は決めていた。 桜の盆栽を20年以上昔に一度購入した事があった。 今はもうない表参道沿いの店で買い、一度も花をつけることなく枯れたあいつの復讐を俺は秘かに誓っていた。 グリーンクラブ常設売
ラジオで人間の興味は動物から植物、更に鉱物へと変化すると言ったのはたしか安住紳一郎アナウンサーだった。 確かに、春の水辺に並ぶ桜を見に散策する程度にはここ数年で植物に興味を持つようになった。 ただ自室に植物を置く気にはなれなかった。 過去に大して興味もないくせに買った幾つかの植物を枯らしていたし、何よりその時の俺は汚部屋在住だった。 でだ。去年の秋、蔵前に引っ越した。 俺は沼みたいな風呂場や通りから丸見えのベランダから解放され、築年数は古いがリフォームされたばかりの部屋と追
これは宣伝だ。 俺たちはエンジニア採用に関する新しいサービスを立ち上げようとしていて、だから今回は中小ITベンダーのエンジニア採用担当者に向けた文章になる。 けれどだからこそ、就活生や転職希望者には採用側が市場をどう感じていて何を求めているかを知る為に読んで欲しい。 あくまで宣伝だから、それを加味した上で。 中小のITベンダーにとってエンジニアの採用はしんどい。大小様々な問題がある。 例えば、ITベンダーのビジネスがSES(≠単品派遣/多重派遣)と混同されやすい問題だとか。
日々、採用面接をやっているとよく見るタイプの履歴書がある。 例えばそこそこの大学を出て新卒で大手の派遣会社に入ったエンジニア志望。 奴らはその時々のバズワード(今ならAI、ちょっと前ならメタとかWeb3とか)を謳う会社に乗せられて安易に就活を終える。 当然エンジニアとしての仕事にはありつけない。 派遣会社が全員を希望通りの仕事に就かせる事は不可能だって、ちょっと考えればわかるだろう。 だから早くて半年、遅くとも3年程度でそいつは辞める。 次の仕事は決まり辛い。新卒カードと2
SES企業には二通りしかない。 搾取する為だけの会社と何者かになろうとしている途中の会社だ。 今回は俺自身が目を背けていた、何者かになる為の可能性の話。 SES会社にとって採用活動は重要だ。ヒトが商品だからな。 だからバックオフィスは役職関係なく手分けをして採用を行う。 その日は社長が面接対応をしていて、呼ばれてブースに入った。 対面に座っていたのは縁のない眼鏡を掛けた、柔和な印象の男だった。 経歴書を受け取る。 小規模ながら要件定義からリリースまでの一連を複数回経験して
経理から連絡を受けたのは、打合せを終えて客先のビルを出たところだった。 木枯らし1号が吹いていて、電話が聞き取り辛い。 今日予定の入金がされていない。至急確認してくれ。 通話を切ると液晶には時間が表示された。14時36分。 SESを生業にしていると入金トラブルはたまにある。 うちみたいな会社の相手をしてくれるような零細SESはキャッシュフローに問題を抱えてる事も少なくない。 入金されてからでないと支払いが出来ない。面と向かって言われたこともある。 火の車で突っ走る自転車操業
前回のあらまし。 あんたはITエンジニアになろうと思った。 俺は警鐘を鳴らした。 今回は、それでもあんたがITに進むなら知っておくべき会社選びとビジネスモデルの話。 少し古い話だけど2023年1月。ニトリグループの新入社員はIT人材であっても1年半の現場研修を行う事を発表。物議を醸した。 反対派からは「エンジニアとしてキャリアを積みたい人間にとって1年半の研修は長すぎる」「エンジニアとして働きたいなら選ばない」「現場業務よりも先にIT人材適性を測る為にIT業務に就かせるべ
SES営業の中には他社社員の参画案件を決めて手数料を稼ぐ専門の奴らがいる。結構いる。 ブローカーだ。 SES営業の交流会ってのがあって秋葉原に出向いた。 7月に入って夏はもう始まっている。 貸会議室に100人以上のSES営業が寿司詰めになって名刺交換千本ノックをするイベントだ。 集まるのは同じ穴のムジナばかり。 悪い奴らが取り繕って並んでやがる。ここには奴隷商人しかいない。 そいつは白髪交じりの気弱そうなおっさんで、俺に名刺交換を持ち掛けた。 応じて型通りの挨拶をこなす。
結構前の事だ。 担当エンジニアがとんで俺はそいつの自宅を訪ねた。 大井町駅から徒歩10分程のアパートは洗濯機を通路に置く造りになっていて、そいつの洗濯機の周りには見たことのないメーカーの洗剤が大量にあった。 そいつはいわゆるネットワークビジネスに嵌まっていた。 この業界にはマルチ商法とかネズミ講に染まる奴が一定数いる。 あんたもツイッタラーだったら判るだろ? ネットワークビジネスも商材屋も本質的には貧困ビジネスだ。貧して鈍して騙された奴は周囲を巻き込む。そうなる前に排除しな
あんたは学生で、就活をしなければならない。努力してブランドのある学歴を手にしている訳ではない、ただの普通の大学生だ。なんとなくITがいいかなとか感じている。 もしくは若手の社会人で、現職では成長出来ないと感じている。エンジニアへの転職を考えている。 メディアや広告は転職を煽る。「今のままでいいの? 変わるなら今だ」 そういう人に向けた記事を書こうと思う。 俺は被害者っつーか転落者っつーかそんなのばっかり見て来た。もううんざりだ。 フィクションじゃない、あんた自身に降りかかる
詐欺みたいなプログラミングスクールはごまんとあって、奴らが売るのはキラキラしたイメージだ。まぁ俺の仕事と大差ない。 今回は俺が目撃した被害者の話。あの夏に出会った寒い奴。 先に言っておくが特に救いはない。 その夏は観測史上最高の猛暑になった。 熊谷で日本歴代最高気温を更新した午後、採用面接のブースにそいつはやって来た。 ベージュのセットアップの下は白T。韓流アイドルみたいなマッシュヘアの前髪に隠れた目が忙しなく辺りを見回す。 あまりうちには来ないタイプ。それが奴の第一印象だ
中小のSES企業では社長が営業を兼ねてることが多い。SESのビジネスモデルしか知らないからエンドから末端に至るまで多重派遣がずっと続いていると信じてる。 今回はそういうシャチョさんに起こった悲(喜)劇。 一斉配信メールのタイトルにはチームリーダー1名募集とあった。 馬鹿か。リーダーはメンバーを抱き合わせて売りたい。ピンポイントでリーダーだけ単品派遣で寄こせとか言われて応じるお人好しはいない。 SES営業には毎日数百件のそういう馬鹿げた案件情報が届く。 関西では梅雨入りが宣
春が来て新卒が数人入社した。貴重な新卒カードをドブに捨てた馬鹿なガキ共。 今は研修という名の待機期間を過ごしている。 その中の一人の履歴書に目が留まった。学習支援サービスのスキルチェックでSランクをとってる。 SES営業は奪い合いだ。他の営業に捕まる前に俺が決める。落ちている金を拾わない馬鹿はいない。 そいつは就活を早く終わらせたくて、一番最初に内定を出したうちに入社を決めたと言った。 ITエンジニアの仕事なら何でもよかったらしい。正直な奴。 底辺SESならITに関係ない仕