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なぜワイナリーは不便な場所にあるのか

Vol.090.
ワイナリーに観光へ行ったという人は、パッケージツアーか個人旅行であったとしても、そんなに多くはないと思う。
その理由は、簡単に言って不便だからだ。
でもじゃぁどうして不便なところにワイナリーがあるのか?

ワイナリーは観光より前にあるもの

ワイナリーついては、ここではあえてフランスやイタリアを指し示したい。
なぜならワインとともに文化が育まれ、ワインと共に生活や経済が回っているからだ。
さらにフランスのボルドーのワインの歴史なぞ、まさに英仏戦争の根源たるや、その大地から育まれる高貴な宝であるワインを巡ったのも一因だ。
こういう大地に育まれている宝を奪い合いながら発生するものが戦争なのだ。

バローロはワインの名前でありながら、
土地の名前でもある。

つまりフランスやイタリアではワインは、その土地で育まれてきた昔からある農産物なのである。
今、自由に飛行機に乗り、旅行会社にお願いしたり、自分で下調べをしたりして観光にこそ行けるようになってはいるが、この観光の前からワインは存在する。

ワイナリーがあって、道ができたとも言える

ことアルバの辺りは、イタリアの王家のワインとも言われるバローロ、そしてバルバレスコというイタリアを代表するワインが誕生する。
他にもトスカーナはブルネッロディモンタルチーノだったり、ヴェネトにはアマローネというワインもある。
全て高級ワインだ。
もちろんイタリアは高級ワインだけを作っているわけではない。
日常に飲むテーブルワインの方が多く作られているが、言いたいのは、このような高貴なワインを生み出す大地から産出されるワインには、“良い偏見“が想像できるものいたしかたないだろう。

世界中の人が勝手に訪れるワイナリー

そんなことで世界中の人はワイナリーを目指す。
観光としてもあるし、買い付けとしてもあるだろう。
しかしワイナリーに行くのは、本当に不便だ。

ワイン畑しかない。

それはなぜかというと、先にワイナリーがあり、その後に道ができたと言っても過言ではないからだ。
ワインで経済が回る場合、大事なワイン畑を崩してまで、便宜の良い交通を作るだろうか?
なので、ワイナリーへ行く道はクネクネとしていて、小丘をのぼり下りする。
地図でみればとても近い距離だというのに、実際に行ってみるととんでもなく遠かったり。
さらにいえば、ほとんどが葡萄畑なので、公共の交通機関のバスすらも走らない。
日常の人のニーズがないからだ。
もっといえば、日常に通ったとして、時期によってはトラクターしか走ってなくて、のんびりと運転するしかないこともある。

よく考えて欲しい。ワイナリーが宣伝するのは、自分たちのワインを飲んでくださいというワインの宣伝だけであって、別にワイナリーまできてくださいという宣伝はないのだ。

それゆえ観光に便利な道は作らない

例えばアルバのあるランゲの話。ランゲにとどまらず、モンフェラートやロエロもアスティもそうなのだが、面白い話がある。
トリノの人は彼らの常識を全く自分の育ってきたものと違うという。
なぜなら幼い頃からワイナリーの子はワイナリーで育ってきているので、ワインとともに成長し、将来的にはワインに携わると。

またこれだけ観光で訪れるのであれば、定期バスや何やらの交通手段を作るべきではないかと議論されるのも当然だが改善は全くない。
むし話し合われたこともないのではないかと思う。

というのは、美味しいワインを作るところでは、どんな不便な環境であったとしても、勝手に世界中の人があらゆる交通手段を探してやってくるという考えがあるからだ。

この考え方は実に面白い。
マーケティングがあるようでない。
これは完全なワインガバナンスではなかろうか?

しかしワインは市場も大きくなってきた。
もちろんそこにマーケティングはある。
そんな最近のマーケティングは、ユーロリーフマークでお馴染みのオーガニック系だ。

この土地に暮らして、ワインからかなりのマーケティングとガバナンスの駆け引きを学んだ私であった。

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