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フランス逆輸入のホワイトネグローニは平和の象徴かもしれない

Vol.091.
イタリアはとにかくミクソロジーブームが続く。
その理由はとても簡単だ。
パンデミックが終わって、夏に向かっているからだ。
なんのこっちゃなのだが、この環境がミクソロジーをブームにいざなうのは、おそらく日本でも同じ傾向ではないかと思う。

そんな背景はどうでもいいとして、とにかく忙しい時にはリフレッシュしたい、癒されたいのは誰しもが思うことだろう。
なので私は最近、カクテルの1杯でストレスを解消できるようになってきたのは、その味わいだけでなく、誕生秘話を知ることからはじまっている。
なんだか1杯のカクテルで映画を見るような感覚かもしれない。

ホワイトネグローニはフランス生まれ

ネグローニがイタリア生まれであるというのは、先日紹介した。
その色合いは、カンパリの赤、ヴェルモットのカラメル色が混ざった色合いである。
気の抜けたコーラのような深いべっ甲の色とも言えようか。
その味わいだけでなく、色も美しカクテルであるとネグローニはいえる。

その反面で、その色合いを全て取り除いたカクテルのホワイトネグローニというのがある。
1919年、イタリアはトスカーナで誕生したネグローニだが、このホワイトネグローニはなんとフランスのワインの銘醸地であるボルドー発祥。

誕生の背景は、2001年にイギリスのジン プリムスのディレクターがヴィネスポというワインの展示会でボルドーを訪れた時に、一緒に同行していたロンドンのバーテンダーに即興で作らせたなんちゃってネグローニであった。

なぜならボルドーにあるメドックの小さなホテルのそばに、揃う材料はな買ったので、その場にある材料で即興で作ったからだ。
なぜそんな日つぜねにかられたかというと、その日はとても熱く、プリムスのディレクターはどうしてもキンキンに冷えたネグローニが飲みたい! と同行バーテンダーに訴えかけていたからだった。

ホワイトネグローニで使用された材料

同行したバーテンダーは、ベースとなるジンは彼らのプリムスがあるとして、カンパリの代用とベルモットの代用を探した。
そこで代用したのが、フランスのスーズ(Suze)をカンパリの代わりに利用した。
この際、色よりも味わいだったのだろう。
バーテンダーはパリでアペリティフに飲んだ、スーズのほろ苦さを覚えてた。

そしてヴェルモットには、リレブラン(Lillet Blanc)を使用した。
ワインをベースにしたリキュールであるので、とても近似していると考えた。

この3つの素材でできたのがホワイトネグローニである。
通常のネグローニの1: 1: 1の比率よりも、ちょっとジンが多めに作られているのは、きっとプリムスのディレクター向けだったのかもしれない。

ということで、ホワイトネグローニはフランス生まれなのだ。

イタリアでホワイトネグローニを作るとどうなるか?

という背景を踏まえてイタリアでいただいたホワイトネグローニ。
ヴェルモットは白も赤もあるのでいいとして、スーズの代用は?
そこで出てきたのが、これもカンパリグループではあるのだが、エミリアロマーニャのビアンコサルティ。

今回いただいたホワイトネグローニの材料。
左からビアンコサルティ、ヴェルモットビアンコ、ジン。
真ん中のヴェルモットはトリノっ子のお酒好きにはお馴染みのダマルコのもの。

イタリア生まれで、フランスでカラーを変えて、イタリアに逆輸入されたホワイトネグローニ。
実に美味しい。
夏にすっきり食前酒で十分楽しめるカクテルだ。

ジンは英国、リキュールはフランス、スタイルはイタリア。
ホワイトネグローニは、なんとも平和なカクテルではなかろうか?

ちなみにビアンコサルティは日本に輸入はされていない。

そういえば、プリムスジンは、ジンの世界においてDOCなジンであるというバーテンダーがいる。
まさに平和的なカクテルだと思う。

ミクソロジーの世界は、パンデミア後のこの混沌とした世界情勢の行き先を平和的にさし示してくれているのかもしれないとも感じた。

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