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たましひのかたち

絵を描くこと、本を読むことが好きだった。
今も好きだ。絵を描くのは、少しずつ減ったけれど。最後に選んだのは、言葉を紡ぐことだった。

字を書いている。
取りこぼしたものを今更取り返すように。
雑に、丁寧に。
ぽろぽろ零れるこころを言葉に
脳裏を掠める屑星を繋ぎ、
か細く紡ぐ蚕の糸は
集めてかき寄せて文となった。
何かを表す、モノになった。

昔から、何かを作ることが好きだった。
子供を抜けて、大人になって、
時間が足りず出来不出来に嘆くようになった。
足りないものだらけなわたしには
作ることこそが生きることだった。
本名の自分と私が生んだ自分。
後者はかかなければしんでいく命だと、
なんとなしに感じていた。

手のひらから。
彷徨って掬い出した知識の海から。
それらを身体中から表したくなるこころから。
もうこれからの生涯、
手にすることは無くなってしまうような気がして、
遠のく予感がしてはしがみついて抱え込んだ。

これは私のものだと。
私が選んで、私が決めた。
あらかじめ決まっていたわけではない、
偶然の重なりですらない、
私という意思の、
私という器の誓い。
上手くゆかないかつての歯痒さが、
生み出した私たる私。
死なせるものかと。
肉体が朽ちて燃えようと、
灰になって跡形もなくなろうとも、
私が選んだ私のたましひは
ずっとここに居続けるのだと。
邪魔をしようものなら誰であれ、
切って捨てさえして仕舞おう。
いつかのたましひにさえ誓った言霊は、
今も心臓を撃ち抜いている。

焔の形をしている。
私も、あなたも。
ゆらぐ、確かに、淡い橙。
瞳の奥の、芯とした意志。
誰のものでなく、
誰にでもある。
忘れてしまった、私たちの原風景。 
だけども必死に歩くことを覚えた頃、
私たちは燃える術を忘れてしまった。
いつ落としたかわからなくて、
途方に暮れて彷徨っている。

泣いてもすべて流れないから、
人は繕うことを覚えました。
怒っても思考が止まるだけ、
だから切り捨てることを辞しません。
笑うのは小さな灯火を消さないため、
かつての私を守る行為。
希望なんて信じなくなった私に、
覆いをつける選択をした。
口先に出るは無機質なマニュアル。
それさえ救いで生存を高めた。

生きているか。
笑っているか。
泣いているか。
悲しんでいるか。
喜んでいるか。
上は斜めで横は別物。
その鳥籠は快適でしょうか。
息はうまく吸えていますか。
私を見失った私に、居場所なんてあるのでしょうか。

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