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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 前編

先日、転校生のことを少し書いたときにこの作品を思い出し、久しぶりに観ることにした。

ぼくは、本と同じく映画も繰り返し観る方ではないけれど、この作品はもう何度観たかわからないほど観ている。本編が50分という短さもあるけれど、もちろんそれが理由というわけでもない。

昔、岩井俊二監督作品を薦めてくれた人がいて、そのおかげでぼくは初期作品のころからファンだった。90年代中ごろ、岩井監督が雑誌などで話題になりはじめると、次々とミニシアターなどで上映された時代がある。
昔は京都にもミニシアターがあり、ぼくは「undo」「PiCNiC」「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(以下、「打ち上げ花火」)」「FRIED DRAGON FISH 」などを観に行った。
当時、ぼくが大好きだったのは「FRIED DRAGON FISH 」

岩井作品は、いずれもカットなどの演出が斬新でヌーヴェルバーグ作品を彷彿とさせたけれど、何よりも映像が美しかった。この辺りは、さすがミュージックビデオやCM出身の監督だと思う。
岩井監督も山崎貴監督と同じで、現場の叩き上げから監督になられたわけではない(多分)。そういった異端のためか、岩井作品は当時、プロからも賛否の声がかなりあった憶えがある。

この「打ち上げ花火」も元々ドラマで、それを再編集し映画化したものだけれど、ドラマの時点で日本映画監督教会新人賞を受賞という、やはり異例の作品だった。確かこのときだったと記憶しているけれど、映画雑誌で日本映画の巨匠が本作についてコメントされているのを目にする機会があった。曰く、「子どもを使うのはズルい」
それを読んだぼくは「ちっちぇ、巨匠だな」と、思ったものだった。

同じころ、中山美穂さん主演で初の長編「Love Letter」が全国で公開され、ぼくも映画館へ足を運んだ。
冒頭、中山さん演じる博子が、亡くなったフィアンセの三回忌へ参列後、自宅で彼の母親役である加賀まり子さんと昔を懐かしむシーンがある。

「あ、ケーキ食べる?」

「いえ…」

「コムシノワのよ」

「じゃあ…」

まだパン屋さんのコムシノワさんができる前、パティスリー・コムシノワさんのことで、店名が出てきたのも驚いたけれど、一度は遠慮したのにコムシノワさんのケーキとわかると「じゃあ…」って。

荘司シェフ、喜ばれただろうなぁ。

つづく



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