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そこじゃないことは、わかってた

過去や未来にとらわれず、今を生きる。

良い言葉だなと思い調べたら、仏教の教えだった。
とらわれることはないけれど、ぼく自身は過去に対し人一倍感謝すべき人間だと思っている。
東京で店をしなければ知り合うことのなかった多くの人たちと出会うことができた。また、その人たちにいろんな経験をさせてもらえたことで、ぼくの人生は大きく変わった。  

この人たちみんなのことを書くのは難しいし、昔のことを書くことに特段の意味がないこともわかっているけれど、それでも書いておきたいと思う人がおられる。
それは、やはりぼくを東京へ連れてきてくれたマルイさんのお二人の恩人のことになる。

新宿出店以来、友人や知人、お客様、リーシングの方など本当に多くの方々から何度もされた質問がある。

「どうして新宿だったの?」

「どうしてマルイさんだったの?」

この質問はその後、何回も何年も続いたものだから「どうして」「なんで」と訊かれる度に「呼んでくださったのが新宿のマルイさんだったから」と早口で条件反射のように繰り返してきたぼくは、まるでパブロフの犬だった(この辺りの経緯もいずれ書こう)。
もちろん渋谷の店も今回の日比谷も「どうして?」と訊ねられたら同様の答えになる。

日比谷で再開します 4.

「どうして新宿だったの?」はさておき、「どうしてマルイさんだったの?」の一言が毎回、喉に刺さった魚の小骨のように気になった。

「呼んでくださったのが新宿のマルイさんだったから」というテンプレはその通りだけれど、その人たちの内心は「聞きたいのは、そこじゃない」だったに違いない。
それは言葉にこそしないけれど、遠廻しに「マルイさんはイメージと違うんじゃない?」「どうして他の商業施設じゃなかったの?」「どうして伊勢丹さんじゃなかったの?」ということだったのだと思う。

最後の「どうして伊勢丹さんじゃなかったの?」に至っては、実際に口にされた方が何人もおられた。

つづく


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