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独立した元スタッフへの言葉と、経営のこと 3.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

独立し、お店をやっている2人に伝えた2千万円という数字。
言うは容易いけれど、もちろん一切違法なことをせずこれだけのお金を残すとなると本当に頑張って売上を伸ばし、無駄をなくして利益を残さないと難しい。

この数字に何か深い意味でもあるのでは、と思われた方がおられたなら申し訳ないけれど、これはぼくが19歳のときに足りない頭で試算した1軒のお店を開業するために必要と考える投資額の目安だった。

お店をされている方の中には、「そんな額じゃ無理でしょ」と思われる方もいれば、「そんなにかからないでしょ」「うん、そんなものでしょう」と思われる方もおられるかもしれない。
何屋さんなのか、どの程度の規模なのか、どういった場所なのか、どの程度の内外装や設備なのか、これらによっても無論その額のレンジは変わる。

この額で銀座の真ん中でレストランなりパン屋さんを開業することが可能かといえば、それが現実的でないことくらいはアホな若者だったぼくでもわかる。
また余程辺鄙な場所でもない限り(そうであっても)、土地から買って建物を建て、というのも現実的には考え難い。
極論すればローコストで小さな和食屋さんをつくったとしても、そこで使用するお皿すべてが北大路魯山人さんの作品だったとしたら、同様に小さな洋食屋さんをつくりそこに本物のゴッホの絵でも飾ろうものなら・・・
お店というのは小規模でも内外装や設え、設備にお金をかけようと思えば際限なくかけることができるのでキリがない。

それでは19歳のぼくは、どの程度の店を想定し試算をしたのか。

このときは料理人を志したばかりで、まだパン屋さんになるなど夢にも思っていなかったからイメージしたのはレストランだった。
もちろん大きな規模でもなければ豪華なものでもない。
場所も京都の中心街である河原町や烏丸などは初めから考えもしなかった。
家賃が坪2万、3万もするような場所は、毎月の固定費が高くなり過ぎて損益分岐点が高くなるし、流動性もほぼなく貴重な初期投資を目減りさせる保証金というクセものは家賃に連動するため、そういった意味でも家賃は安いに越したことはないと考えた。

ぼくがイメージした店は、広さが15坪~20坪くらい。家賃は1坪あたり約1万円。保証金、内外装費、厨房設備費、什器備品費・・・上手くやりくりできれば、これに少しは運転資金が残るかな、と出した概算が2千万円だった。

それから約10年後、初めてつくった自分の店は業態こそレストランでなくパン屋さんになったけれど、その「広さ約21坪、家賃坪あたり1万円、投資額 2千万円」という条件は、19歳のぼくが試算したそれとほぼ同額だった。

つづく


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