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スープの話

「好きなスープは?」と訊ねられると困るほど、ぼくはスープを愛好している。

とうもろこしのスープにマッシュルームのスープ、オニオングラタンスープ、ビスク(甲殻類のスープ)、スープ・ド・ポワソン(魚のスープ)・・・と、挙げ出すとキリがない。
サイゼリヤさんやロイヤルホストさんへ行っても必ず単品なりスープセットを注文するし、コンビニのスープもよくいただく。

サンドイッチは「AからZまで何を挟んでもいい」といわれるけれど、それはおそらくスープも同じ。ところがぼくは、食べもの屋さんをやっていた割には好きい嫌いが多い。嫌いなものでも調理方法によっては食べることもできるけれど、中にはどうしても苦手なものもある。そんな食材であってもスープになれば大抵飲む(食べる)ことができるのだから、スープは優れた料理なんだと思う。
作り方は千差万別で、必ずしも「こうでなければならない」といった決まりもおそらくない。ちなみにフランス人はスープを「飲む」のでなく「食べる」という。

夏の定番スープといえば、ぼくら世代の方ならきっと「ヴィシソワーズ」を思い浮かべる人も多いだろう。近年の最先端な料理をされているお店では、あまり作られることもないだろうけれど、いまでもメニューに載るならビストロかなと思う。
ヴィシソワーズは、「じゃがいもとポワロー(ポロ葱)のスープ」のこと。
ちなみに、このスープを考案されたのはフランス人シェフだけれど、作られたのは1917年(1920年という説もある)のニューヨーク、リッツ・カールトンでのことだった。このシェフの故郷であるフランス、ヴィシー(地名)が、その名の由来。

作り方をざっくりと書けば、鍋にバターを溶かし、スライスしたじゃがいもとポワローの白い部分、玉ねぎに火を入れていく。仕上がりが白いスープなので、このときに材料が色付かないように気をつける。じゃがいもやポワローは加熱することで味や香りを出し、玉ねぎはスープに甘みを加えてくれる。またバターもスュエ(弱火で色付けず旨味を出すこと)するだけでなく、コクや風味に寄与することになる。ここにブイヨンを加え柔らかく煮てミキサーにかけ、漉して冷やしたものに牛乳と生クリームを加えるとヴィシソワーズになる。

単に素材を液体状にしたジュースと違い、こういった工程があることで味や香りを引き出し、それらを重ねることで複雑さや深みのある滋味に満ちたスープができあがる。

つづく


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