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〈サブエピソード〉くどうれいんさんの桃を煮るひとを購入するに至るまで

地域柄、本の発売日に書店へ行っても新刊が並んでおらず数日後にやっと書店へ並ぶ。そのため、発売前から欲しい本がある場合、ネットで予約をして家まで届けてもらう方が新刊が書店にいつ並ぶかそわそわしなくて良いし楽だ。その楽さに甘んじて最近ではネットで本を買うことも多くなった。

しかし、くどうれいんさんの「桃を煮るひと」は書店先行発売や、サイン本・特典ペーパー取扱店があったりと書店で購入してほしいという気持ちが伝わってきた。この想いはれいんさんもだし出版社のミシマ社の皆さんもそう思っていたんだと思う。

話が前後してしまったが、私はくどうれいんさんもミシマ社も大好きだ。まさかれいんさんがミシマ社から新刊を出すなんて思ってもおらず。それも食エッセイとなると発売前からとても楽しみにしていた。なので今回はネットではなく、書店で本を購入することにした。

行きつけの小さな書店に行く。小さな敷地で限られた本棚だけど店主が気持ちを込めてセレクトした本が並ぶ空間が大好きで通っている。とくに短歌や俳句の本が定期的に入荷され店主の好みが伺える。普段は本棚を眺めているだけだし、私の人見知りも重なり店主と普段は会話をしない。しかし、今回だけは「桃を煮るひと」を手に入れるために勇気を出して声をかける。

「ミシマ社から出版される、くどうれいんさんの桃を煮るひとを入荷する予定はありますか?」
「今のところ予定はないですが、もう一度出版社と本名を」
「ミシマ社で、くどうれいんさんの桃を煮るひとです。」
「ミシマ社!くどうれいんさん!入荷しますね!」

短歌や俳句が好きな店主は当然にくどうれいんさんを知っている様子で任せてくださいという表情だった。店主からは、「予約受け取りでも良いですし、もしくは入荷したことをSNSでお知らせするのでタイミングがよければお店に来てください」と言われた。販売直前だったので大型書店より入荷が遅いことは明らかで気遣って控えめな案内だった。「必ずここで買う予定ですので、SNSでお知らせしてもらえればまた伺います。」といいその日はお店を出た。

予約という形を取らなかったのは、本屋で本を買うということは出会いなので、私より先に「桃を煮るひと」を見つけた人がいたならば購入して欲しいと思ったからだ。特に小さな書店なので本の入荷は1冊なのでなおさら平等に購入チャンスを他のお客さんにもと思った。

後日SNSをみた私は早速お店に行く。上記で平等にチャンスをと書きながらも、楽しみにしていた本なのですぐにお店に向かってしまった。店主に入荷して頂きありがとうございましたとお礼を言って本を購入する。

本を1冊購入すること。ネットで買えばボタン1つで終わる行為が、書店で買うとここまで心温かく人間とのつながりを感じることができた。本を読む前かられいんさんやミシマ社の皆さんにしてやられた感じだ。これだから好きなんだよな。待ちに待った本が手元にある。発売日に買えなかった。特典ペーパーもつかなかった。なんならネットより遅く手に入ったかもしれない。それでも良い。私はワクワクしながら表紙をめくる。

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