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アクアトト岐阜(2022/1/3・2023/2/25)  中編

1.初めに

  おはようございます。こんばんは。こんばんは。IWAOです。今回は、アクアトト岐阜の中編、日本の淡水魚と世界の淡水魚の紹介になります。本来は、前編と後編の2編で構成しようと思ったのですが、どうしても長くなるため、3編構成に変更しました。
(*前半は、日本の淡水魚、さらに東海地方の淡水魚について解説しました。多くの方に閲覧され、執筆時で閲覧数が過去最高です。本当にありがとうございます。)

2.構成

 水族館2階から世界の淡水魚が展示されます。2階が、アジアとアフリカの川で、メコン川、コンゴ川、タンガニーカ湖の生物が展示されており、今回は、コンゴ川までをここで紹介します。

3.アジアの川

・日本の川

 ここでは、東アジアに生息している淡水魚が展示されています。ここには、「日本に生息する」淡水魚が、「アジアの川」の中に組み込まれて展示されていました。その中で面白かったものを紹介していきます。
 まずは「イトウ」になります。日本で最大級の淡水魚になります。見られるようで、あまり見られない魚です。イトウは、主に北海道に生息する魚ですが、実は、過去には東北地方にも生息していました。つまり、本州に生息していたものは、絶滅したということです。今は、北海道にのみ残り、その個体数も減っています。絶滅は、絶対に食い止めたいです。また、このイトウは、婚姻色を出すと赤くなります。ここでは見られませんでしたが、その赤色は、非常にキレイです。

日本三大怪魚といわれるだけあり、大きいです。
こちらは、アムールイトウで、婚姻色を出したと思われるオスです。
系統的には、日本のイトウと結構離れていましたが、このような色を出すと思われます。
(*琵琶湖博物館にて撮影)

 日本の魚で見てほしいのが、「アユモドキ」になります。このアユモドキは、名前の通り、アユに似ています。しかし、アユとは、全く別物です。アユは、「サケ目アユ科」に分類され、学名は、「Plecoglossus altivelis altivelis」と言います。一方の、アユモドキは、「コイ目ドジョウ科」に分類され、「Parabotia curtus」と言います。目レベルまで違うため、全くの別物です。
 まして、彼らの生態もまったく違います。アユは、海と川を行き来します。一方のアユモドキは、農業用水、水田、池を行き来して生息しています。6~8月の増水をきっかけに水田などに移動し、産卵するという絶対に遭遇することもないような生態をしています。
 しかし、このアユモドキは、天然記念物に指定され、現在、絶滅の危機にあります。日本でも琵琶湖水系と岡山県の平野部にのみしか生息しない淡水魚です。琵琶湖水系では、京都の水系にのみの生息で、岡山県の平野部でもかなり生息地が激減し、日本から絶滅寸前にまで追い込まれています。耕作放置、農業の合理化(稲作と産卵時期がずれる)、開発(水田から、商業地や住宅地へ)、圃場整備(用水路のコンクリート化)などが重なり、アユモドキの産卵ができないようになってしまいました。このことから、生き物とのつながりは、絶妙なつながりと土台で保たれており、少しのずれで崩れてしまうことだということが分かります。人間の環境を上手く利用し、適応してきたアユモドキをこれ以上追い詰めてはいけません。自然は、私たち人間だけに恩恵を与えているわけではありません。

この個体がギリギリアユっぽい模様を持っていそうでした。

 以上が、日本の淡水魚についてです。東日本(というより北日本)と西日本での代表的な淡水魚を紹介しました。「日本」と言っても自然の在り方が非常に多様であることが分かります。前半で「日本は地域での多様性がもととなり、日本全体の生物多様性を高めている」などと記述しましたが、その地域特有の生物を見ることで、このことを強く感じました。

・アジアの川

 ここでは、主に中国に生息する淡水魚の説明になります。
 まず、「エンツユイ」を見てほしいです。エンツユイの特徴は、「成長と共に姿・形を変えていくこと」になります。魚が、成長過程を経ることで、色彩が大きく変わること自体は珍しくありません。しかし、このエンツユイは、幼魚と成魚の違いは、「別種レベル」で違います。稚魚は、背鰭が大きく、全体的に白黒の三角形の形をしているのに対し、成魚は、ウグイのような赤と黒の色に変わり、スマートな流線形へと変化します。ここでは、稚魚を除き、成長段階の違うものが展示されており、「エっ!?同じエンツユイなの⁉」とびっくりするくらいの違いがあります。

イメージ図です。
(*筆者作成)
エンツユイの稚魚です。
(*サンシャイン水族館にて撮影)
こちらが、エンツユイの成魚です。

 次は、「グリーンバルブ」です。アクアリストなら、知らない人のいない超有名な魚だと思います。グリーンバルブは、改良品種となる「ゴールデンバルブ」の祖先種になります。ゴールデンバルブとは、違った意味で、ピカピカできれいな魚です。オスになると思われる個体は、腹側が赤くなるのが、特徴になり、側面の金色のかかった緑色とのコントラストが非常にキレイでした。しかし、絶滅の危機にある熱帯魚になります。熱帯魚を飼育することは、悪いことではありません。ただ、向き合い方を考えなければ、生き物をただ浪費するだけです。

婚姻色を出したと思われるオス(?)は、非常にキレイです。
(*我が家にて撮影)
グリーンバルブの改良品種であるゴールデンバルブです。
(*我が家にて撮影)
アクアトトでは、このように大きく多くのグリーンバルブが泳いでいます。
こんな水槽を作りたいと思います。

*このみなとやま水族館で、絶滅の危機にある熱帯魚について紹介しています。是非、ご覧ください。

4.メコン川

 ここでは、メコン川を中心に東南アジアの大型河川に生息する淡水魚が展示されていました。まず、メコン川は、中国を源流とし、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムと数々の国を下って、海へと流れます。このメコン川の全長は、4,000km以上にも及び、流域面積も81万㎢に及ぶ超大型河川です。このメコン川を中心に、東南アジアの水田耕作が支えられています。

赤線部分が大体のメコン川の位置になります。
(*申し訳ありません。結構ずれているかもしれません。)

 このメコン川の展示で絶対に見るべき生き物は、「メコンオオナマズ」になります。このメコンオオナマズは、アクアトトの看板展示になり、日本でも限られた水族館でしか展示されていません。最大で全長3m、体重350キロになる超大型のナマズです。

こちらがメコンオオナマズです。
こちらが、正面からみたメコンオオナマズです。

 メコンオオナマズの魅力は、「謎だらけ」、「メコンオオナマズは愛されている」、「メコン川と環境問題の象徴」という点になります。
 メコンオオナマズの謎は、2つあり、まずは、「繁殖法が分かっていない」ということです。食用として利用されることがあり、人口受精で繁殖された個体が、現地で食卓に上がっているのですが、天然の個体は、「メコン川のどこで産卵し、幼少期はどのような過ごし方をしているのか」ということが分かっていません。漁で獲れるものは、150㎏を超える大型のものばかりで、小型のものが獲れることはあまりありません。いつ、どこで産卵し、どこで生まれた稚魚が育つのか、幼少期の生態が、分かっていません。
 メコンオオナマズの次の謎は、「何を食べているのか分からない」ということです。では、ここの個体は、何も食ずに暮らしているのかというとそうではありません。メコン川で獲れた個体の胃の内容物を確認した所、大型の緑藻類が見つかったことから、植物食であると考えられ、コイ用配合餌料にクロレラを加えて水で練り、団子状にしたものを与えているそうです。研究によって、食べるであろうものは分かっても、現地で実際に何を食べているのか、はっきりしたことは、まだわかっていないということです。
 メコンオオナマズは、「メコンオオナマズは愛されている」という点では、ここでは、6匹のメコンオオナマズが飼育され、彼らの特徴が説明されていました。ヒレのどこに色がついいるのか、体色の違い、顔の曲がり方の違い…などと「個体ごとにどう違うのか」ということが説明されていました。生物を飼育したことがある人なら分かると思いますが、生き物には、個体ごとの個性というものがあり、それを日々の観察で分かること、見つけることがあると思います。メコンオオナマズにもそういう「個性」を感じることができます。

 アクアトト岐阜では、メコンオオナマズの研究が行われており、普段の様子が観察されています。その一つに、「体長測定」が行われ、その結果が、表示されています。ただ、メコンオオナマズのような大きい魚を引き上げて体長を測定しているわけではありません。DLT法を用いて、引き上げないで、体長を測定しています。つまり、カメラ越しでメコンオオナマズの体長を測定したということです。生体に配慮して体長を測定しているということになります。全個体の体長が、出ていますが、どれくらいの大きさになるのかは、現地でメコンオオナマズの大きさと共に知ってほしいです。

*DLT法:撮影された画面上での座標と実際の3次元座標との関係を表すキャリブレーション係数(DLT parameter)を用いて、あらかじめ計算し、この係数を用いて、撮影画面からの実空間座標を決定する。

この図のように対象の位置を決定します。

 最後の「メコン川と環境問題の象徴」になります。まず、メコンオオナマズに関する伝承や祭りがあり、受け継がれています。伝承では、中国で「オスは上流の中国雲南省の大理湖にいて、メスは毎年そこへ向けて下流から長旅をする」と語り継がれています。また、タイの北部では、メコンオオナマズの漁期に豊漁を祈願する祭りが、開催されます。祭壇へお供えをし、川や土地に、船に宿る聖霊を招いて、踊りでもてなします。伝承や祭りがあるということは、メコンオオナマズは、古くから利用され、大事にされ、その恩恵を受け続けてたことを意味します。メコン川の恵みの象徴と言えるでしょう。
 しかし、このメコンオオナマズは、今、絶滅の危機にあり、その事態は、かなり深刻です。ワシントン体条約の付属書Ⅰに登録され、IUCNレッドリストの絶滅危惧ⅠAに指定されており、メコン川全体で、野生の個体数は、80%ほどと激減しています。主な原因は、「乱獲」と「開発」です。特に、開発では、メコン川では、ダムが数多く建設され、メコンオオナマズの産卵のための遡上が、疎外されているのではないかと考えられています。ダムの建設は、メコンオオナマズだけでなく、メコン川に生息する生物にもダメージがあります。ダムの建設により、飼育観賞魚として有名なパーカーホも絶滅の危機に陥ってしまっています。
 その上、ダムなどの開発により、従来の生息環境が破壊され、メコンオオナマズらにとって生息しづらい環境に激変してしまうことにもなります。このままでは、メコンオオナマズの生態が、何も分からずに絶滅してしまう可能性があります。
 ただし、メコンオオナマズは、「遺伝子汚染」「外来種」としても問題になっています。メコンオオナマズは、人工授精を行い、繁殖され、食用で利用されます。しかし、別の近縁種(Pangasianodon hypophthalmus)との交雑種が作り出され、自然流域へと流れてしまった懸念があります。さらに、養殖したメコンオオナマズが、本来の自然分布ではない場所に放流されてしまっています。つまり、外来種となったということです。もしかしたら、「絶滅しそうなのに、何故、自然の脅威となるのか?」などと疑問を持った方がいるかもしれません。メコンオオナマズに限らずですが、外来種そのものが、絶滅危惧種になっているという事例は全く珍しくありません。外来種は、新たな進出先で大繁殖し、栄えているため、成功者に見えるかもしれませんが、本来の生息地を見た場合、そこでも大繁栄しているとは限らないどころか、衰退しているという場合もあります。つまり、外来種問題は、保全も考えると非常に複雑化しているということです。メコンオオナマズは、自然の危機になってしまったが、脅威にもなってしまいました。
 以上で、メコンオオナマズの解説は、終わりになります。ただ、「メコンオオナマズ学術調査委員会」というサイトでは、メコンオオナマズの生態や研究を見ることができます。非常に面白い内容がたくさんあるため、もっと知りたい方は、そちらをご覧ください。

 また、この水槽では、メコンオオナマズ以外にも見るべき淡水魚が、多くいます。特に、大型のコイ科は、見てほしいです。タイガーバルブ、ハンパラバルブ、イエローフィンバルブ、パーカーホなどと多くいます。
 パーカーホは、現地でも食用で利用されており、現地ではごちそうとして有名です。アンコールの古代寺院にはパーカーホの彫刻があり、カンボジアの国魚にも指定されているほど、人々の利用が深い魚です。メコンオオナマズとはまた違い、メコン川の恩恵の象徴ともなっていると思います。
 私は、その中でも青いブルーフィンバルブが気に入りました。飼えれば、飼ってみたいですね。

タイガーバルブです。
ハンパラバルブです。
イエローフィンバルブです。
真ん中の黒い個体が、パーカーホです。
こちらが、ブルーフィンバルブです。
深みのある青がカッコ良いですね。

 ここでは、他の水系のアジアのもが展示されています。もしかしたら、あなたの飼育している、もしくは、お気に入りや飼いたい魚にあえるかもしれません。

キンセンラスボラ、シザーステールラスボラです。
私の憧れです。
レッドラインラスボラです。
私は、飼育しています。
オニテナガエビです。
食用で有名ですが、ペットでも有名です。

5.コンゴ川

 アフリカの淡水魚の展示への入り口は、船の中になっており、ここから上流へと昇る展示になっています。
 後述するタンガニーカ湖を含め、メコン川の展示を超えたら、アフリカの淡水魚が展示されています。

ここが、アフリカの淡水魚の展示の入り口です。
図の赤い部分がコンゴ川になります。

 まず、この水槽で見てほしいのは、アフリカ最大のカラシン目の魚、タイガーフィッシュです。ここには、2種類のタイガーフィッシュである、「タイガーフィッシュ」「ゴリアテタイガーフィッシュ」がいます。この両者の違いは、ぱっと見すぐにわかります。「鮮やかな色」をしているのが、タイガーフィッシュ、比較した時にでかいのが、ゴリアテタイガーフィッシュになります。特に、このゴリアテタイガーフィッシュは、この水槽の主として、「俺様」のように泳いでいました。

タイガーフィッシュです。
ゴリアテタイガーフィッシュです。
ゴリアテとつくだけ、めちゃくちゃでかいです。

 このタイガーフィッシュで見てほしいものがあります。それは、「歯」です。円錐形の非常に鋭い歯が並んでおり、その歯を利用して獲物のを食べています。また、この歯は、5~6カ月単位で生え変わるそうです。サメみたいに歯がかなりの頻度で生え変わります。歯のストックがあるわけではないですが、消耗品として、使われているように感じます。

ゴリアテタイガーフィッシュですが、顔のアップです。
非常に鋭い歯を持っていますね。

 次は、「テトラオドン・ムブ」です。日本にもフグは生息している上、食用として利用されているため、フグそのものに珍しさを感じることはないと思います。しかし、テトラオドン・ムブは、「純淡水」に生息するフグであり、日本国内で完全な淡水に生息するフグはいないと思います。せめて、汽水域で生息するクサフグくらいだと思います。そして、このテトラオドン・ムブは、なんといってもでかく、その大きさは、「60㎝」もあり、世界最大級の淡水フグになります。
 これは、フグ全体にいえる話でもありますが、テトラオドン・ムブに会えた時に見てほしいのは、「アゴ」になります。フグが、好物として食べるのは、貝や甲殻類になります。これらは、固い殻を持つため、必然的にアゴが太くならなければいけない上、噛む力が強いです。テトラオドン・ムブのでかさそのものだけでなく、アゴの太さとでかさも私達を驚かせてくれます。

これが、テトラオドン・ムブです。
来館時は、べっとり寝ていました。
これは、コショウフグです。鋭く太い歯で、貝、甲殻類を食べます。
(*ニフレルにて撮影)

 他にも、アクアリストの方々には、ポリプテルスを見てほしいです。ここでは、デルヘッジ、オルナティピンニス、コンギクス(*多分、これが一番デカかったので、エンドリケリーにあたると思います。)などと非常に多くの種類がいます。ポリプテルスと言っても巨大サイズで非常に大きいものと片手で持てるくらいの小さいものが、一つの水槽に展示されています。ただ、浅めの所にデルヘッジなどの小~中型のものがおり、タイガーフィッシュが泳いでいるような深い所にコンギクスがいる傾向にあり、棲み分け、共存がなされているようにも感じました。

このようにポリプテルスが多くいました。
これは、浅めの所になります。
コンギクスになります。この子は、かなり大きかったです。

 コンゴ川をテーマにした別の水槽では、多くのテトラが飼育されていました。アクアリウムでも有名なコンゴテトラが見れますし、その近縁種も多く展示されていました。後半で、アフリカテトラを含めたテトラという生き物の驚きについて解説します。つまり、後半は、「進化」について解説します。

イエローコンゴテトラです。
アレステスになります。
奥に婚姻色を出したコンゴテトラが見えます。

6.まとめ

 以上が、中編の内容になります。ここまで記述して、一番印象が強いのは、当然、メコンオオナマズになります。純淡水魚ということで、ここまで謎だらけというの驚きが隠せません。人間に長年利用されているが、謎が多いという生物は、二ホンウナギが共通すると思います。ただ、二ホンウナギは、最近になってやっと完全養殖の技術が確立され、産卵場も特定されました。資源管理という面から非常に危ない所にいますが、やっと希望の足がかりが見えてきたと思います。しかし、メコンオオナマズは、二ホンウナギほど研究の積み重ねがないのためだと思いますが、謎のままな上、二ホンウナギ以上に事態は深刻です。まして、現地の状況を考えると保全が十分に取られているとは言えない所もあります。(*ウナギは、漆黒の闇だと言われたら…)場所によっては、外来種として脅威にもなり、環境問題の被害でありつつ加害者にもなってしまった複雑な存在、環境問題そのものが、複雑な問題となってしまった象徴だと感じました。

 また、アクアリウムを趣味にしてる人が見てもアクアトト岐阜は、強く勧めます。「こんな魚を飼ってみたい」や「初めて見たけど、いつか飼ってみたい」などと新たな出会いの場になれる水族館です。私もアクアリウムを趣味にしているため、「これは、飼いたい」や「生きている姿を見ることができてうれしかった」と思う熱帯魚に出会うことができました。アクアトト岐阜が、アクアリストにとっても熱帯魚との素敵な出会いの場になることを祈ります。
 以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。後編でまたお会いしましょう。

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