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【ビジネスデザイナーレポート】ビジネスデザイナーのフィールドワーク+ユーザー体験の向上

史上最も暑いといわれる2023年の夏、毎週東京から大分へ通いフィールドワークを行っています。
徹底的な現場理解のためのエスノグラフィー(ethnography)の一環として観察を行うために、ほぼ毎週東京ー大分を往復していると言うと、驚かれることがあります。
エスノグラフィーは、ユーザーのありのままの行動を観察することで、定量的な調査では見えてこない本質的な課題を見つけることに適した調査方法です。マーケターやデザイナーの方にとっては身近な手法かもしれません。

オムロンから生まれた、社会的課題の解決に挑む事業創造プラットフォーム「IXI(イクシィ)」の組織や活動内容をご紹介する本note。
今回は、IXIのビジネスデザイナーである私、小島からフィールドワークの1日と、その成果をどうアウトプットにつなげているのかをレポート形式でお届けします。

あらためまして、IXIでビジネスデザイナーをしている小島です。
取り組んでいる事業と現在の状況については前回の記事(前回の記事はこちら)でお伝えした通りではありますが、
簡単に説明をすると、高齢者の方を「本当の意味」で元気にするために必要なソリューション(アプリケーションなど)そのもののデザインと、そのソリューションをどうビジネスとして成立させるかのビジネスデザイン、この両軸に取り組んでいます。
ソリューションとしては、生活機能を改善させる訓練とリスク管理の両立、そして高齢者の方に自宅での運動や栄養管理などセルフマネジメントを定着させること、この2つを実現させようとしています。
機能を充実させてもビジネスとして成り立たないと意味がないので、自治体の方たちがデータをもとに地域の施策として導入を検討いただけるよう実データを集めつつ、プロダクトの改善も同時に行っています。

それではここから2023年8月のある日を振り返ってみます。

毎週火曜日、共創パートナーである株式会社ライフリー運営の「デイサービス楽」で行われる短期集中予防サービス(通所型サービスC)の生活機能改善プログラムの時間に合わせ、東京から大分へ入ります。

この短期集中予防サービスのプログラムは基本的に3ヶ月をひとつの区切りとして、利用者の方ひとりひとりに合わせた運動やケアマネジメントを提供し、悪くなってきてしまったからだの機能を回復させる取り組みです。

大分駅から車で20分ほどの住宅地にある「デイサービス楽」は、全国的にみても利用者の事業所卒業率と運動機能改善率が著しく高く、介護予防の最前線をいくサービス提供事業者です。

今日は、6月にはじまった生活機能改善プログラムに3ヶ月通所された方が卒業される日です。
プログラムを受けることで、からだの機能が回復したのか、それはどういうアセスメントをもとに組み立てられたプログラムだったのか、日々のセルフマネジメント状況はどうだったのか、複合的に分析するためのデータを収集していきます。

機能訓練時には、利用者さんに脈拍計を装着していただきます。

利用者さんのからだの状態はさまざまなため、プログラムの実施には、リスク管理の観点が非常に大切です。
私たちのソリューションでは、脈拍計で測定したデータがアプリケーションでリアルタイムに取得でき、状況が見える化されています。
からだに負荷がかかりすぎているときには通知がでるなど、スタッフ全体でリスク回避できるようになっています。

運動中のモニタリング機能がきちんと動いているか、実測とずれているとしたらどこに要因があるかを特定し、アプリケーションそのものの改善を高速でまわすこともこの期間の目的です。

生活機能改善プログラムにおけるリスク管理の他に、もう一つ大切にしていることが、利用者さんそれぞれがセルフマネジメントする意識を持っていただける状態を実現することです。

利用者さんは、食べたもの、運動状況をセルフマネジメント手帳に記録し、事業所に提出することになっています。その内容をデータ化し、それぞれの方に頑張ったことや不足している要素のフィードバックを返せる仕組みを作っています。

左から看護師の長田さん、作業療法士の児玉さん、小島

プログラムのスタート時にはフィードバックシートへの関心が強くなかった利用者さんから、「今週はいい点数だった」「ここの数字はどうやって見るの?」という声を聞けると、セルフマネジメントに興味を感じてくださっていることに嬉しくなります。

毎週のプログラム期間を一緒に過ごさせていただいてるからこそ、感じられる変化だと思っています。

事業化に向けて

この日は生活機能改善プログラムの最終日だったため、これまで計測してきたデータをもとに、プログラム期間のはじめと終わりでどれくらい回復をされているのか、からだの状態を分析し、プログラムの有用性を証明していきます。

さらにこの事業を広範囲に展開していくために、モデル事業所である「デイサービス楽」で実施したプログラムについて分析をすることで、モデルデータを作成しようとしています。ライフリーに通所される利用者さんたちが、どんな運動強度で、どんなセルフマネジメント実施状況で、どれだけ生活機能が改善したのかをまとめて指標化を進めていきます。
この指標データは、今後他の事業所において支援をする際に、より効果の高いプログラムにブラッシュアップするための指針となります。

同時に、脈拍計を用いたアプリケーションや、フィードバックシートといったソリューションについても、取りまとめた定性・定量的なデータをもとにUIの改善だったりアルゴリズム改修を重ねることで理想の形に近づけていっています。

少しずつではありますが、事業化に向けて前進しています。

自分の親、子どもの未来にもつながる

私たちのソリューションは、自治体だけ、事業所だけが使うものでなく、多くのステークホルダの方々が利用して初めて効果を出せるものになります。

自治体だけが良いと思うもの、包括支援センターだけが良いと思うもの、事業所だけが・・とどこかのステークホルダーだけが喜ぶものでは、目指している介護予防は実現できないんです。

需要性と事業性の両立が当然のように必要で、難しいことに取り組んでいることを感じています。
ただ、超高齢化社会に突入していく日本において介護予防は、自分や自分の親、子どもの未来を想像したときにひとごとではないんです。それだけに、実現させたいという強い気持ちを持っています。

まだ世の中にない仕組みを作るということは、どこかに正解が用意されているわけではありません。
そのため、ステークホルダーとの議論を重ねて、ひとつひとつの課題を現場から泥臭くも愚直に拾い、本質を見極めていく必要があると思っています。

今あるプロジェクトの先に見える、より良い未来の実現を目指し、価値ある事業の創造にむけて奔走しています。


オムロン株式会社 イノベーション推進本部(IXI)や、小島が所属するチームが挑戦している事業領域については、以下の公式ページをご覧ください。

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