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2023年ベストトラック30

Sixtones「こっから」

上半期選出。6人によるマイクリレーも上手だし、ガナリなど声色を巧みに使っているものの、聞き手に「上手さ」以上に熱量を感じさせる楽曲に仕上がっている。リリックはドラマ「だが、情熱はある」や、メンバーカラーになぞらえているはずなのに、聴けば聴くほど普遍性を感じる歌詞に仕上がっていると感じる。いかなる人も「こっから」なのだろう。

lyrical school「DRIVE ME CRAZY」

近年グローバルヒットしているtake on meのリズムパターンを踏襲したポップスがリリスクにも到来。ラップラップしてるわけではなく、フックの歌唱をメンズメンバーのtmrwが担当しており、LS5時代からの変遷も感じさせる。すでにアンセム化してるのも頼もしい。

くるり「愛の太陽」

上半期選出。跳ねるような推進力の高いリズムセクションで引っ張っている楽曲。「くるりらしさ」に満ちた楽曲なのかは分かりかねるのだけど、「ワンダーフォーゲル」とかの延長的にも感じられて好き。「伝えきれない 言葉の端が 海の底に沈むんだろうな やさしさや思いやりが 息を止めて沈むんだろうか」という歌詞が切なくも、優しくてお気に入り。

ゆっきゅん「隕石でごめんなさい」

上半期選出。ジャケがHerosの時のボウイとかミックジャガーと山口小夜子のツーショットみたいで爆イケだし、MVのゆっきゅんの衣装は「TOKIO」のジュリー的でもあり、「TATTOO」のMVの清春みもありな全カットキメキメぷりだし、松井寛の作編曲も最高だし、歌詞・歌唱もキてるし、最後のラップ?が及川光博「忘れてしまいたい」的に聞こえて、もーこれはキャーキャーですよ。

BBHF「メガフォン」

上半期選出。2023年にはGGも再結成したけれども、こちらのグループの楽曲を。ふと歌詞の全体を見渡してみると、こんなに全バースが芯を食ってていいのかと思えるほどの完成度。こんなクソッタレなゲームに参加させられてる/見させられてる全ての人が聞くべきだ。メガフォンでバキバキに音が割れても拡声させてやる。「このゲームの敗者は ここにいる全員」だとしても。

上原ひろみ、馬場智章&石若駿「WE WILL」

上半期選出。ジャズ・・・は全然わからんでして、院生時に先輩から「坂道のアポロン」のサントラでも聞いてみたらとオススメされたのを聞いてたくらいで。まず映画を観てイナズマ撃たれ、でサントラをという流れでこの曲へ。サックスとドラムのみの武骨なサウンドに完敗ですよ。

NewJeans「ZERO」

上半期選出。「ドラムンベース × 童謡的なメロディ」ってまさにピンクパンサレスとかが出てきた今出すべきアイデアで、その周到さに斜に構えた態度を取りたくなるけど抗えない。後でリリースされたリミックスよりもこっちかな。視覚的にはダニエルが眩しくてしょうがない…特にスクール感のある衣装がね…眩しい…。

THE NOVEMBERS「かなしみがかわいたら」

上半期選出。L'Arc~en~Ciel「Pieces」の慈しみと、THE YELLOW MONKEY「SO YOUNG」のある一つの燃え尽きと、サザンオールスターズ「愛はスローにちょっとずつ」の愛情とが織り交ざっているような、美しい一曲。流れる涙も美しい。流した涙が乾くころ、見られる表情もまた美しい。

スピッツ「跳べ」

上半期選出。この曲はApple Musicのコメンタリーによるとコロナ禍明け久々に集まって最初に録音したのがこの曲だそうで。4人で音を出すことへの前向きなアグレッシブさがパンパンに詰まっている。「ここは地獄ではないんだよ 優しい人になりたいよね」ってさ~~~~!草野マサムネの詩情もバクハツしてるじゃんかよ~~~~!

MONO NO AWARE「風の向きが変わって」

上半期選出。ソングライターがしたためているのは歌のための詞、「歌詞」であるとするならば、メロディーやリズムと言葉がガチッとハマることの快楽を感じるのが音楽を聴く理由の一つかもしれない。「向かい風がちょっとクーラー みたいだなって思った瞬間 自転車のスピードが ほんのちょっと上がる」のハマりようったら。全体としてのストーリーテリングも良きですねえ~。

Cornelius「火花」

上半期選出。METAFIVEでの活動以降、彼の楽曲を構成する楽器の中ではどうしてもギターに耳が奪われる。コードストロークを続けているわけでもなく、効果音的にもギターの音を配置しているのだが、そのどれもが必然的かつ効果的。様々なきっかけで眠っていた記憶は顔を出す。時間は一瞬の連続、その無限の一瞬の中にこの曲が忘れられない光を放った。

私立恵比寿中学「kyo-do?」

上半期選出。ブラスを基調としたキュートなダンスポップ。ヤマモトショウ外さんなあ。前アルバムのリード曲が「あの頃の恋」を歌うビタースイートなものだったのに対してサムネイルからもうかがえる輝きっぷりよ。新体制になったんだから、こんぐらいハデにカマしてかないとね。この後にリリースされたどの楽曲もスマッシュヒットしてて甲乙つけ難かった。

パソコン音楽クラブ「Day After Day(feat.髙橋芽以)」

上半期選出。「そして今日もまた続く」の「そして」の部分が「so sweetie」に聞こえるのは俺だけだろうか。歌詞にあるように、この毎日にはドラマチックなことは起きない。それはメロディの抑揚が抑えられていることにも表されている。さりとて、何も輝きがなく、辛いだけの日々には耐えられない。いつもは何とも思っていなかったものが急に光り輝くことがある。甘い一瞬が確かにあるのだ。

Base Ball Bear「Endless Etude」

上半期選出。サウンドとしては近作でいうと「悪い夏」とか「動くベロ」踏まえたポストパンク?ニューウェーヴ?的な音で「聞きたかったコレ〜!」ど真ん中。(間奏のパーカッションに単音のギターリフを絡めるのを聴くとトーキングヘッズ?とかと思ってしまう見識の狭さよ。ああ恥ずかしい。。)歌詞は「LOVE MATHEMATICS」的な言葉遊びかなと思いつつ、前作「海になりたいpart.3」から引き続き音楽へのラブレターとしても読め得るかも?

cali≠gari「銀河鉄道の夜」

上半期選出。歌詞の主軸は宮沢賢治の同名作が潔すぎる程に貫いている。アルバムのテーマである生死になぞらえて、この作品を主題としたのだろう(青さん作なのでカムパネルラとジョバンニの「魂の一対」的なモチーフを前傾させることも可能だったろう)けれど、映画『怪物』が放映されてる今リリースされるのは何ともジャストな。抒情的なメロディーが担保された間違いのない一曲。

Summer Eye「失敗」

この軽やかに跳ねるリズムを、ギターのカッティングを聴くにつけ、失敗とはこの世の無限にある分かれ道の一つに過ぎないことに気づく。失敗なんて青空の下で笑い合うくらいのものなんだと、胸が軽くなる。「失敗は成功の基」なんて言葉を出すまでもなく、失敗してたどり着いた先で、ピタッと離れず踊るばかりでいいのだ。

山下達郎「Sync Of Summer」

田中宗一郎は『SPACY』で紡がれた音世界を「それは何者にも決して脅かされることのない音のサンクチュアリ」と表現した。その当時とは異なるが、この打ち込みの音で構築した、輪郭の明瞭なギターに乗せたリバーブの効いたボーカルと爽快感のあるサウンドを聴くと、「あの夏」と目の前の夏がシンクする。山下達郎という一人の人間に対する靄は正直晴れないものの、この音世界が生み出す幻影強大な引力には完敗だった。

米津玄師「地球儀」

バクパイプと低音の効いた弦楽隊、木製の椅子の軋む音、引用の背景を知らずとも、それらが表現する鎮魂・決心・重圧・対世界の姿勢を感じずにはいられない。タイアップの回答としても満点でありながら、表現者としての独白、普遍性、いずれの面においても高次元での達成を果たし続けていて脱帽するほかない。

マカロニえんぴつ「悲しみはバスに乗って」

認知してからアルバムをサラッと聞き通しても、何となくシックリ来なかったマカロニえんぴつ。この曲はスルッと入ってきた。一曲に色んな音楽的要素をぶっこむスタイルはそのままにかなり直情的でストレートなメロディーラインである点や、生と死が生活レベルで共存している歌詞が刺さった。この命が燃え尽きるまで行かねば。しかし行く先や道順はおおよそ皆の知る通り。路線バスの日々のごとく。しかししかし、バスにはバスの意地がある。

三浦大知「能動」

またまた三浦大知がネクストフェーズ?ネクストディメンション?へ飛び出した。プログレッシブなダンスチューンでありながら、一曲の引きも強いのがスゲエや。「全てを懸けて」の後の野性味あふれる歌唱も最高、「丸いまま鋭く尖」り続けてるぜえ。

ドレスコーズ「襲撃」

必要以上にキラついたギターの音と、急かすようなベース・ドラムの音が後戻りのできなさを訴えている。「襲撃 ぼくをだいて ひとこと わるくおもうな、と それだけで いいのに」は繰り返し出てくるフレーズだが、ひらがなで書かれていることにで、より無垢な思いが浮かび、胸が苦しくなる。

星野源「Orange(feat.MC.waka)」

この曲に関しては星野源が、というより我らがMC.wakaことオードリー若林正恭の低音かつ低温のフロウ(途中に若干のエモーションがこぼれているのもまた良い)が素晴らしかった。若林の経験に即したリリックでありながら、「増えてく分かりにくい悩み」「クリアした後も積む経験値」といった普遍的なフレーズが出てきているのは、源さんのディレクションによるものか。デモ的な位置づけにせよ素晴らしい一曲だった。

AMEFURASSHI「SPIN」

マジでカッケェ〜。ジャージークラブということで(こういう曲聴くと、東京女子流の2017~18年頃を思い出してしまう…)、NewJeans「Ditto」やエビ中「BLUE DIZZINESS」とつないで聞きたい一曲。「Love is Love」で知ったクチだけど、出す曲出す曲外さなくてビビるグループ。特にこういう楽曲がグローバルでヒットしているのとマッチしたのは大きい。

Mr.Children「Are you sleeping well without me?」

ここに書いたので省略。しかしこんなにも抑制の効いたアレンジは衝撃だった。

QUBIT「Distance Dance」

Daoko率いるQUBIT、アルバムジャケットのように色とりどり、ビビッドな色合いの感じられる楽曲が多めであったが、この曲はその中でも随一のダークな雰囲気をまとった楽曲。「追悼会」から歌詞が始まる楽曲、他にあるかよ。

BUCK-TICK「無限LOOP」

ビジュアル系が作る「化粧品のCMのタイアップに相応しい楽曲」好きなんだよなあ。メロディアスで甘くて。でもこの曲には大人の苦さがある。波が引いては寄せるように、すべてではないけれども確かに「君」の存在が残り続ける。それは喜びか、哀しみか。いずれにしても、いずれともにしても、美しく繰り返す。

Beyonce「MY HOUSE」

正直、ビヨンセって言ったら渡辺直美がマネしてて・・・くらいしか浮かばないくらい疎かったのだけど、この曲には一撃で撃ち抜かれた。ビートチェンジも異形さより自然さがあり、なんつってもブチ上がる。映画も観に行きたさ、ある~。

神聖かまってちゃん「魔女狩り(feat.GOMESS)」

今年を振り返るにつけ、一年通してずっと聞き続けていたなという印象。神聖かまってちゃんといえばなガチャガチャしたサウンドの中で現代版「僕が僕であるために」的な歌詞をGOMESSがまくし立ててカッコイイ…!「「常識」なんてお前らの身内ネタだろ」なんて突き刺すイイフレーズ。

LE SSERAFIM「Perfect Night」

カァァァアッケエ。同性同士でダンスしたりしてこの夜を「Perfect Night」に、というのは旧来的な異性のパートナーであるあなたと、というスタンスとはまた違った立場を表明するもので面白いし、意義深い。しかもそれがEDM的なアゲにくる漢字のサウンドでないのも面白い。いや~、紅白はこっちの曲で出てくれよ~。

betcover!!「鏡」

やっとこさ良さが分かってきたbetcover!!。ボーカルのやさぐれた昭和歌謡感と、いびつな音のバランス(なのに、これを聴くとこれしかない!と思える)の異様なマッチ具合よ…。アウトロのブチギレ具合も具合も最高。伊達男はブチギレないと。

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