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しあわせって? I’m thinking !

いまでも鮮明に記憶に残っています。お幼い頃、週末になるときまって出向いていた母の実家の離れで、叔母が読んでくれた絵本『青い鳥』のことが…。

母方の祖父母にとって初孫だった私は特に祖父に寵愛されていて、完全なる”おじいちゃんっこ”でした。仕事で大忙しだった父は、ほぼほぼ週末は家にいません。なので、金曜の幼稚園を終えると、迎えに来た母と母の実家に出かけていって、土日をそこで過ごしていたのです。母は母で、私を実家に預けるや、外へ遊びに行っていました(笑)。

祖父が相手をしてくれる以外の時間は、離れの間で叔母に遊んでもらうのが常でした。母の弟のお嫁さんで、早い話が長男に嫁いできて義理の父母と同居していたわけですね。当時は当たり前の慣習でした。

祖父との思い出は、野球ごっこ、庭の手入れの手伝い、電車を観に連れてってくれたこと。それと床屋さん(散髪)です。叔母のほうは、おままごとと絵本です。

で、『青い鳥』のチルチル・ミチルの兄妹が、「しあわせの青い鳥は、ふつうに身近にいるものなんだ」と気づくわけですが、読み終わった時に叔母がこんなことを言ったのです。

しあわせって、何なのかしらね。本当に近くにあるのかしらね~。宏ちゃんはどう思う?

当時、私は(おそらく)3歳とか、せいぜい4歳です。難問です。でも、明確に覚えています。こう答えたことを。こんなやりとりを。

ボクはしあわせだもん。いつも○○おばちゃんが遊んでくれるもん。
ほんとう?ホントだったら、○○おばちゃん、うれしいわ~。
本当だよ。○○おばちゃん、きれいだもん。やさしいもん。大好きだもん。

華奢な叔母が私を抱っこして、膝の上に乗せてくれました。私はそばに積んであった絵本の中から『白雪姫』をつかむと言ったのです。

○○おばちゃんは白雪姫みたい。しろくて、きれいで、やさしいの。○○おばちゃんは白雪姫だ!

叔母は私の名を呼びながら、ギュ~ッと抱きしめてくれました。痛いよ痛いよと叫びながら、私はとても幸せでした。この出来事は、強烈な記憶として今も残っています。


しあわせ。人はみんな、これを手にするために生きています。数多の哲学者や文学者がそう書いています。私も同感ですが、ある人に「幸せの定義が人それぞれなのだから、そりゃ当然だよ」と言われてから、幸せというものについて、あれやこれや考えた青春期がありました。高一でした。生涯で唯一、尊敬していた現国の教師に質問したところ、三大幸福論を読んでみるようすすめられました。発表された順にいうと、ヒルティ(1891年)、アラン(1925年)、ラッセル(1930年)の『幸福論』です。

中一で出会ったこの教師から読むように言われた本で、おそらく私の価値観ができあがったのだと思います。なんせ、中学二年の現国の副教材が三島由紀夫の『憂国』ですからね。ちょっと信じられませんが、中高6年間で古典を中心に100冊以上の名著に触れる機会をもらいました。

三大幸福論に話を戻しましょう。社会福祉士国家試験を終えてから合格発表までの一ヶ月半。私は三大幸福論を読み返しました。若い時分にはそれなりに納得できたことも、年齢を重ねてから読み返してみると、またちがった感想を持つというのはよくあることです。案の定、どれをとってみても、どこにもおカネの話が出てこないのです。文章のわかりやすさと想像しやすさでアランがリードとか言ってみても、幸せを語るのに「おカネは結果としてついてくるもの」的な話では、現代人は「はあ?でえ?」となってしまいかねません。

結局私は、自分なりの幸福論を作ることにしたのでした。会う人会う人に考えを訊いたり、運営していた終活サークルの参加者にアンケートを行ったり、著名人の本を読んだり、マネジメントスクールで学んだ古今東西のリーダーたちのエピソードを復習したり…。最後に、偶然目にした、WHO(世界保健機関)の「健康の定義」を参考に、「幸せ」の因数分解をしてみました。

それが、I’m thinking です。私の好きな語呂合わせですが、漢字で置き換えると、「愛・夢・信・金・愚」となります。これら5つが揃った状態が『幸せ』である…。そう定義しました。私の完全オリジナルです(笑)。

幸せには愛が必須です。愛する誰かの存在。この人のために…という存在があることは本当に幸せなことです。生きがいの源泉です。

「天に星 地に花 人に愛」という大好きなフレーズ。こう言ったのは、高山樗牛だの武者小路実篤だの諸説ありますが、かつて東京ゲーテ記念館に出向いたとき、彼らよりずっと前にゲーテが書いていて、それはアレグザンダー・ポープなる人(ゲーテより100年以上前に生きた人物)の言葉からの引用であることがわかってスッキリしました。ちなみに、私はこのフレーズを星明子から教えてもらいました。梶原一騎さんの代表作『巨人の星』の主人公・星飛雄馬のお姉さんです(笑)。

幸せには夢が必要です。現実世界の次元でいえば、理想とか目標とかでしょうか。三島由紀夫のエッセイには、「結局ひとの幸せは、夢や理想を叶えるために努力している過程にしかない」と書かれています。人生100年と言われますが、そこまで生きようとするのであれば、この人のために…という想いと同様に、これを叶えるために…という想いも、きっと心の拠り所になるにちがいないと思います。

幸せには信ずる何かが必要です。それは、世の中、思い通りにいかないことが多いからです。つらい時に、どうにもならなくって挫折しようとした際に、諸外国人であれば信仰にすがります。日本人であれば信念みたいなものがあると、苦境を耐え忍び乗り越えるための活力になるのではないでしょうか。

私の場合、介護離職問題を解消し、ビジネスケアラーを救えるのは社会福祉士しかいないという自負がありますし、社会福祉士の存在価値を知らしめることで、そのステータスアップに繋げたいという想いはとても大きいです。

そして、幸せにはおカネが必要です。これはもう、絶対に必要です。愛を食べてはいきていけませんし、夢を食べても生きてはいけません。特にこの資本主義の国では、おカネは不可欠です。おカネがあれば、若さを除けば、何でも手にすることが可能です。愛や夢や信念を貫くためにも、おカネが不要などということはありません。

となると、多くの場合、やりがいを実感できる生業が必要ということになります。然るべき社会との接点を持ち続けて、価値を提供することの対価をキッチリと得ることなくして、人の幸せはないと思います。

そして忘れてはならないのが、I’m thinking の『愚』です。他者から見ればくだらないように見えたとしても、自分いとっては大切のモノ。ま、趣味とかこだわりとか遊びのようなモノ。そういう何かがあってこそ、愛夢信金を全身全霊で追い求める人生に、束の間の安らぎを得ることができるのです。

多くの場合、美食や性癖や射幸心や偏執狂的な行いに走る人が多いようですが、他者に迷惑や痛手を与えないようなものであってほしいですね。私の場合は、ズバリ、阪神タイガースです。ピンポイントでいうならば、大山悠輔(阪神タイガースの四番打者)です。

別に彼らが勝とうが負けようが、打とうが打つまいが、私の暮らしや人生に何の影響もないわけですが、どうしても時間とおカネを費やして応援してしまう。時に、精神的ダメージまで負いながら。でも、どんなにストレスを喰らったとしても、一晩寝たら、また応援してしまう…。実に厄介です。周囲は時に冷めた目で私を見ているようですが、それでも私の人生にとって、阪神タイガースはなくてはならない存在なわけです。

ということで、私にとっての幸せとは、愛と夢と信と金と愚がある人生。I’m thinking です。

以前につきあってた女性から、「幸せのハヒフヘホ」というのを教えてもらいました。半分でいい、人並みでいい、普通でいい、平凡でいい、ほどほどでいい…。で、幸せのハヒフヘホです。中国の古典でいう知足(足るを知る)ですね。これも立派な幸福論だと思います。三大幸福論みたいに、小難しくないのがいいですよね。

おなじ彼女いわく、『幸』と『辛』を書いて見せて、「たったひとつ足りないだけで(「一」が欠けただけで)不幸に感じちゃうんだって、人間って」とも。なんか、当時のことを思い出すだけで、ハートウォーミングな癒され感に包まれてくるから不思議です。

そういえば、メンターともいえる中高の現国の先生からは、三島由紀夫についていろいろと教えてもらいました。衝撃だったのは、三島が自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した要因に、正田美智子(現・上皇后)さんとの悲恋があり、彼女とのことが、全4巻からなる『豊饒の海』の第1巻『春の雪』のモチーフになっているのだとか。これ、竹内結子さんと妻夫木聡さんで映画化もされています。

真実はともかく、多感な年頃の男子高生には、かなりのインパクトで心に刻まれたものでした。年齢とともに不眠症の嫌いが出てきた私ですが、いまだに『トリスタンとイゾルデ』を睡眠導入曲に使っているくらいです。そう。『憂国』が映画化された際、三島本人が主人公の将校役を演じたのですが、夫妻の心中シーンでBGMに使用されたのが、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』(前奏曲と愛の死)だったのです…。

今回は何の話だったのでしょう。『しあわせ』がテーマでしたね。読んでくださったみなさんも、絶対にしあわせな人生をおくってください。そのためには、まずは自分にとっての『しあわせ』を再定義したり、それが実現した時の様子をカラー動画でイメージするようにしてみてください。みんなで、それぞれのしあわせをゲットしていきましょう!

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