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根津美術館で一服のお薄

みなさまご機嫌よう。もーやんです。
表参道にある根津美術館はお茶の世界では有名らしく、茶道のお師匠さんから『根津美術館で茶器の展示があるときは行くといいわよ』と教わっていました。

今回、タイミングよく『お茶会』をテーマに展示会が行われたので、初潜入♪

○根津美術館の楽しみ方

・事前予約制

美術館は事前にオンライン予約を行い、当日は指定の時間にQRコード受付をするだけです。退館時間の指定はないので、10時から予約して14時頃に帰路につきました。展示室も上から下まで何往復もして、大満足☆

・アクセス

表参道駅から徒歩10分くらいです。まーっすぐ歩くだけなので、迷うことはありません。表参道って意外と道が悪くて歩きづらいので、靴には注意よ。

・館内

公式HPより。根津美術館のエントランス

施設がとっても綺麗な根津美術館。エントランスから料亭のようで、まず写真を撮りたくなります。
1階と地下1階にあるお手洗いやロッカーも、すべて洗練されているの。
庭を散策するための雨傘まで用意されていて、突然の雨も気にせずに庭園やレストラン、お茶室を散策できます。

展示は1階と2階。メインの展示は3部屋で、残りは古代中国の青銅器や仏像が展示されていました。さほど広くはありませんが、オーディオガイドで解説を聞きながら1つ1つ回ると、最低でも2時間は必要でしょう。

100円返却式のロッカーに大きな荷物を入れたら、500円のオーディオガイドを借りて、いざ入場です♪

○燕子花図屏風の茶会

燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)。wikipediaより

江戸時代に尾形光琳が描いた国宝『燕子花図屏風』。この屏風は、実際に根津嘉一郎の茶会で披露されたことがあり、出席者が新聞や雑誌で論評・絶賛した伝説の茶会でした。

今回の展示では、その茶会に使われた茶道具を一連の流れに沿って堪能することができました。

・茶事(ちゃじ)とは

正式な茶会のことを『茶事』と呼び、1日かけてご亭主の心尽くしのおもてなしを堪能するまさに贅沢の極み!

1.待合:茶室に入る前の間。客が身支度を整え、一服。
→何気ない場だが、既におもてなしは始まっている。

2.懐石:亭主の迎え付けによって、つくばいの後、茶室に入った客たちへ懐石料理と酒がふるまわれる。
※懐石メニューと客の一覧が、展示室の壁いっぱいに掲示されていました。景徳鎮の器に、ご馳走が・・・じゅるり( ゚Д゚)

3.炭手前:これからお茶を点てるために、風炉(冬は炉)に炭を継ぐ。
→炭の間でたくお香から立ち昇る香りや、お湯の沸く音を楽しみ、道具などを拝見し、主菓子を頂く。
※2と3は夏と冬で順番が変わる。

4.中立:客は茶室を出て一旦休憩。その間に、亭主は換気や飾りつけ。

5.濃茶:茶事のメイン。銅鑼の音を合図につくばいのあと茶室に戻り、床の間を拝見。そして濃茶を頂く。

6.薄茶:炭を直し、今度は干菓子と薄茶を頂き、茶事は終了。

根津嘉一郎は、通常茶室で行われる6番の薄茶を広間に移動して振舞ったあと、「さー、お茶会は終わりだ」との帰りしな、大書院にておまけの酒席を行い国宝をサプライズ披露。そしてさらに、そのあと小書院にて番茶を振舞いながら、道具の箱や書状を披露。

おまけの席でのサプライズに、客達は大興奮。茶事も素晴らしく、その日の覚え書きを雑誌にしたためたり、新聞で論評するなど大盛況でした。

マナー尽くし&シンプルイズベストな茶事の間ではなく、肩の力がちょっと抜けた「打ち上げ」のような席で国宝を気前よく披露するのが、お茶目ね。

国宝を含め3つの金屏風がそびえ立ち、他にも見どころ沢山の宴会は、茶事の裏話も交えたりなんかして、さぞ盛り上がったことでしょう。

わたくしはまだお茶会すら行ったことがないので、憧れ。。。(*´з`)♪
ちなみに、お茶会は茶事の一部だけ行うもの。たとえば、懐石はなく、主菓子とお濃茶&干菓子とお薄だけとか。

○今回の見どころ

たーくさんの名物が展示され、とても紹介しきれません。
展示やナレーションの力の入れ具合から感じた見所は、次の2つ。

・国宝『燕子花図屏風』

尾形光琳といえば、言わずもがな有名な絵師。
反物の絵付けを参考に、転写のような技法も使われているそう。
ぼーっと見ていると、あの一角とあそこの花は同じだわ。。。と分かりますが、金箔の前面にゴゴゴ…と並ぶ花は圧巻の一言。

国宝だから良いなんてミーハーのようで悔しいけれど、確かに一目で視線が釘付けになる力強さがあります。横側の金具も見どころ。

面白かったのは、銹絵梅図角皿(さびえうめずかくざら)
尾形乾山(おがたけんざん)との兄弟合作。自由で、闊達で、実力がある光琳と、それを追いかけて、負けじともがく乾山…と感じられて、なんだか楽しくなる器でした♪

・再会した取り合わせ

濃茶席で、根津嘉一郎が得意げに話したのが、抹茶が入った茶器と、花瓶の2つについて。

「膳所耳付茶入『銘 大江』(ぜぜみみつきちゃいれ めい おおえ)」と小堀遠州作の「一重切竹花入『銘 藤浪』(いちじゅうぎりたけはないれ めい ふじなみ)」といいます。この取り合わせは、松平不昧(ふまい)が行った茶会以来、数百年ぶりの再会だったそう。

客たちの後日談としても多く語られ、ロマンを楽しむ人々の様子が伝わりますね~。

○気になったもの

たくさん見て、わたくしが気になったもの達。

・藤花図屏風

藤花図屏風-円山応挙(まるやまおうきょ)。wikiより

燕子花より、こちらの方が好きです。
金箔なのに、静か。燕子花と並ぶと、一見地味。

精緻で、遠目からは花が本物そっくりなの。光や陰、色と線。近付くと重ね塗りが大胆なのに、ふしぎーーー!

幹や蔦はサーッと描いたのでは。仙人が描いたような力の加減に、天才みを感じる。

写実的でありながら、水墨画のような大胆さ。素敵ね。

・雲華灰器 上田宗品

雲華(うんか)焼が得意だったという上田宗品(うえだそうほん)の灰器。
ぽってりと厚く、ひろーい器。ゆったりと柔らかく、この日見たものの中で一番好きでした。
ちなみに、雲華紙といえばふすまの裏側に貼ることで有名だそう。調べてみると、確かに見たことありましたよ(/・ω・)/

・利休間道

利休間道(りきゅうかんどう)とは、布地の柄のことです。
細かな千鳥格子がバーッと入った模様で、パッと見はストライプ(間道)に見えます。

今回の展示で、初めて知った言葉。おもしろーい。
なんでも、千利休さんが好んだ柄だそう。

・木胎塗

「もくたいぬり」と読みます。
かなりの数の器に「木胎塗」と書いてあるので、「なにかしら?そんなに有名な産地かなにかなの?技法?」と謎だったのですが、種類のことでした。

木から出来た器に漆を塗ったものを、木胎塗と呼ぶのです。
そのため工芸品のほとんどは、この木胎塗に相当します。

なぁーんだ。(*´ω`*)
木製であれば、輪島塗や会津塗など、有名なものもぜーんぶ木胎塗ということですね。

○ここにあるべきではない仏像??

もはや恒例となりましたが、美術館に行くと必ず知らない方から声を掛けられるわたくし。

今回も、お庭にておばあちゃまに突然「ねえ、わたしね、ここはスゴイお金ーー!って感じがするのよ」と声を掛けられました( ゚Д゚)?!

「私の田舎でもあったけど、お金になるからってお地蔵様や仏像を売っちゃうの。でも、それって元々誰かのためにお供えしたものでしょう?ここにあって良いのかしら?」

「あんなに沢山の石像を集めて置いてあるのは…本当に、お金の力って感じがするのよね。前までは考えなかったし、もちろん展示は素晴らしいことだけど、80を超えた今になってそう思うの…」とのこと。

良い悪いは置いておいて、「なるほど」と新しい視点でした。
確かに、財力なしでは語れない根津美術館。鉄道王としての功績や人脈のすべてが繋がった施設です。

文化を楽しむことはお金持ちの特権でした。そうして生まれた美しいもの、職人の技、伝統が庶民の生活も潤すのです。
盗掘や強奪のように集められることは反対ですが、取引の結果であるなら素晴らしいコレクションですよね。

でも、おばあちゃまの心配は信仰という視点が入ります。その土地でずっと信仰されているものは、確かに、その場所でこそ輝くこともあるのかも。
土と景色と人と、すべてが合わさって美しくなるというか……。

たしかに、地元で大切に祀られていた仏様が、美術館の庭の一角に、その他大勢と飾られていたら悲しいかも。

改めて、美術館や博物館の貴重なコレクションはしっかりと、大切に拝見しようと思う出来事でした。

○とっても広い庭とお茶室

根津美術館のお庭は4つの茶室があり、お抹茶体験のイベントがあるときは一般の方も入ることができます。

散策した日は小雨。池に雨粒の輪ができて、ぼーっと眺めると東京に居ることを忘れてしまいます。

端から端まで行くと館内より広いです。驚きの土地面積です。
次回は、ぜひ鳥居まで行ってみようかしら。


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