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【あらすじ感想】【バビロン】海外版は無修正ですが何か問題でも?

ネタバレなので未見の方はご注意ください。

▼あらすじ(ネタバレ):

第一幕:
1926年。ハリウッド。スペイン移民の貧困層だった青年マニーは映画業界人のパーティーで新人女優のネリーと出会う。ネリーは踊る姿をプロデューサーに見染められて、事故死した女優の代役を勝ち取り一気にスターダムを駆け上がる。同じパーティーでスター俳優ジャックの付き人に採用されたマニーは、映画撮影の助手として奔走し映画の素晴らしさを知る。

第二幕:
1930年。世間では無声映画の時代が終わり、トーキーが主流になる。これまでのスタイルが通用しなくなる中で、ネリーとジャックは次第に落ちぶれていく。逆に音楽に主眼を置いた映画を企画したマニーはどんどん出世する。マニーとの旧友である黒人トランペット奏者パルマーもスターになる。

第三幕:
1932年。声と演技に問題があったジャックは人気の低迷を受けて自殺する。ネリーもまた洗練していく映画界に着いていけず、ギャンブルに覚えれて多額の借金を抱えてギャングに命を狙われるようになる。ネリーを救おうとするマニーだったがギャングに偽札がばれてネリーと夜逃げを図る。道中でマニーの愛に気づいたネリーは彼を救うために姿を眩まし、マニーは同じメキシコ系の殺し屋の情けもあってメキシコに逃げ延びる。後日ネリーの死体が発見される。

エピローグ:
1952年。LAに観光に訪れたマニーと妻と娘。映画館に入ったマニーは自分がかつて携わっていた映画界へと思いを馳せて涙する。

▼感想:

●素晴らしい映像!

本作を語る上で、何よりもまずは映像の完成度です。これは本当に声を大にして言いたいです。デイミアン・チャゼル監督作品の素晴らしさは字幕を消してこそ真価を発揮します。もし手元にブルーレイなどありましたら、騙されたと思って英語音声・字幕なしで視聴してください。

一度ご覧になったことがある映画なら大体のストーリーは分かっているから英語に自信がない方でも大丈夫です。それよりも緻密に計算されて完璧に撮影された映像の超ハイクオリティに浸りましょう。文字なんか読んでる暇はありませんよ。

撮影技術にとどまらず、舞台美術と衣装も1930年当時を反映しながらも、現代的なアレンジが自然に組み込まれており、非常に高レベルです。

今年のアカデミー賞で美術賞と衣装デザイン賞のどちらもノミネート止まりだったのが本当に悔しいです。両方とも『西部戦線異常なし』に負けました。あちらは完全にリアルな再現に徹した作品でしたが、映画という総合芸術のフォーマットで束の間のファンタジーを見せるという点では『バビロン』が優っていたと私は強く思います。

●素晴らしい音楽!

デイミアン・チャゼル監督の過去作(セッション、ララランド)を知っている人であれば、観る前から想像できたと思いますが、この映画は音楽が本当に素晴らしいです。

1930年代を舞台としていますが、実は音楽で使われているテクニックはかなり現代的で、これは当時の人々の気持ちの高まりを現代人に伝えるために敢えてやったものでしょう。

思いっきり『マイウェイ』を意識したGold Coast Sunsetや、『ボレロ』を意識したHearst Partyなど、遊び心のある曲も多くて楽しいです。

今年のアカデミー賞で作曲賞ノミネート止まりだったのが本当に悔しいです。これでジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)が受賞していたら『ラ・ラ・ランド』に続く受賞だったのですが…。なお、こちらも『西部戦線異常なし』にしてやられました。『バビロン』はノミネートした3部門で3敗。まあ作曲に関しては西部戦線もとても良かったですけども。

●確かに下品な部分はある…

序盤からいきなりゾウが大便を撒き散らしたり、若い女の小便を浴びて悦に浸る男がいたり、便器に顔を突っ込んで抜けない男がいたり、ネリーが他人の顔面に豪快に吐瀉したり…下品な描写が結構あります。これは観ていて眉を顰めたくなるのも分かります。私も何度か「うわぁキツイなあ」と声が漏れました。(笑)

そもそも日本人は文化風習ともに清潔な民族ですからねえ。毎日風呂に入ったり、水回りを綺麗にしたり、路上にゴミのポイ捨てもしません。そこに来て、比べるのが1930年代のアメリカなら、そりゃ汚ねえよなともなりましょう。

●海外版ブルーレイは無修正!

パーティーで乱交しているシーンは日本の映画館で観覧した時はボカシが入っていたのですが、海外から取り寄せた4Kブルーレイではボカシがありませんでした。これによって、むしろ卑猥な印象がなくなるという逆転現象が起きています。

これは前から思っているのですが、別にセクシャルな目的で見せているわけでもない裸や性交であれば、ボカシを入れなくても大丈夫なんですよ。むしろボカシを入れることで、性的用途の成人向けコンテンツを想起させて、却って下品でチープな印象を生みます。性的表現への過剰な配慮はノイズになるだけでなく、芸術映画として完成させようとした監督の真摯さを損ねて、映画の品格を貶めてしまいかねない行為です。

ボカシはシンプルに「画面に異物を混入させる」という妨害行為だとも言えます。百害あって一利なしです。映倫の関係者にはもう少しクリエイターとプロダクトへのリスペクトを持っていただきたい所です。

ちなみに日本では劇場向けに映倫がボカシを入れたバージョンがそのままパッケージされるだけでなく、4K盤の発売も無いようです。残念の極みです。

私はそもそも国内版ブルーレイの背表紙に日本語表記されるのが嫌いなので、スチールブックか海外盤を選ぶ傾向があるのですが、それにしても日本配給のやり方はお粗末で残念ですねえ。

『バッドガイズ』と『長ぐつをはいたネコ』も日本は4K盤が無いですし。日本のブルーレイ業界はもう少し頑張ってください。。。

了。

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