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「グリッドシステム」誕生の本質がこの一冊に。

本書は、近代的なグラフィックデザインに置ける革新的な思想・技術である「グリッドシステム」の創始者であるヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの自伝である。
自伝であり、かつグリッドシステムが生まれた背景である、解題(その作品、つまりグリッドシステムが、成立、系統、確立された年月、体裁、内容、他に及ぼした影響などについての解説)が事細かに述べられている。
私は、むしろそちらの解題の方に興味が強くあり、本書を手に取った。

冒頭30%ほどがミューラー=ブロックマンによる自伝、30%ほどが作品群、残り40%ほどが解題になっている。


客観性、中立性の「グリッドシステム」

ブロックマンの自伝から、戦争の色が濃く残る1900年代前半での生活について解説されており、そのキャリア初期の頃からグリッドシステムの誕生に繋がる思想を持っていることがわかる。

ブロックマンはその生涯において、「一市民として、デザイナーは社会にどう貢献できるか」という思想を強く持っていた。
その背景には、第二次世界大戦時に多用されたナチスドイツのプロパガンダである、啓蒙的で主観的な表現があったからである。

ブロックマンはそれらの、グラフィック表現における主観性などを是とせず、デザイナーは客観性と中立性を持つべきであると主張していた。
その思想が、数学的で、理論的で、客観的な「グリッドシステム」へと直接的な影響を持った。

本書の最も優れている点は、「グリッドシステム」を評価する現代での基準と、「グリッドシステム」確立当時の評価の基準の、両方を持ち込んでいるところにある。

UIデザインなどのデジタル領域でのデザインが著しく発展してる現代において、重宝されているグリッドシステムとは違う評価の基準、感覚、思想を持ち込み、「グリッドシステム」の本質を解き明かしている点は、パソコン上で2D,3D空間を等数で分割する全てのデザイナーの礎となる知識が乗ってる。


「The Grid System」日本語訳に寄せて

私は、「グリッドシステム」を身につける、身につけている全てのデザイナーに本書を推薦したい。
本書は直接的なグリッドシステムの知識のみならず、
現代において「グリッドシステム」のような革新的な思想・技術は行ったいなんなのか、を探す強力な足がかりとなる。


ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの名著「The Grid System」がついて日本語約され、今秋について発売される。
私はそれを手にとるのが待ち遠しく、予備知識として本書を手に取った。

この記事を読まれているシステマチックなデザインを思考する皆様も、ぜひ本書をお手に取っていただきたい。


本書のAmazonリンク

日本語訳「Grid System」


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