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「光る君へ」第7回でズラリと並んだ公卿たちを全員特定してみた

本日放送された「光る君へ」第7回で、こんなシーンがありました。
陣定(政府首脳が集まる会議のこと)が開かれ、左大臣・源雅信が
「帝が亡き忯子様に皇后の称号を贈りたいとの仰せである。下位の者より順に意見を述べよ
と言って、公卿たちが次々と意見を述べていく場面です。

たまたま家に平安時代の公卿たちの名簿「公卿補任」があるので、本当に下位の者から順に意見を述べているのかチェックしてみました。

寛和元(985)年時点での席次を下から挙げていくと次のとおりで、計19名です。

(1)参議・藤原時光(正四位下)
(2)参議・源伊陟(正四位下)
(3)参議・藤原佐理(従三位)
(4)参議・大江斉光(従三位)
(5)参議・藤原公季(正三位)
(6)参議・源忠清(従三位)
(7)参議・藤原義懐(従二位)←花山天皇に重用されてる人
(8)参議・藤原為輔(正三位)
(9)権中納言・源保光(従三位)
(10)中納言・藤原顕光(正三位)
(11)中納言・源重光(正三位)
(12)中納言・藤原文範(正三位)
(13)権大納言・藤原済時(従二位)
(14)権大納言・藤原朝光(正二位)
(15)大納言・源重信(正二位)
(16)大納言・藤原為光(正二位)←斉信・忯子パパ
(17)右大臣・藤原兼家(正二位)←道長パパ
(18)左大臣・源雅信(正二位)←倫子パパ
(19)関白太政大臣・藤原頼忠(従一位)←声の小さい公任パパ

ドラマをよく見ると、頼忠はなぜか不在ですがちゃんと左大臣・雅信以下18名いることが見てとれます。
では、今日のセリフを順にチェックしていきましょう。

(18)左大臣・源雅信「帝が亡き忯子様に皇后の称号を贈りたいとの仰せである。下位の者より順に意見を述べよ」
(1)参議・藤原時光「先例のないことで、考えられませぬ」
(2)参議・源伊陟「先例なきはよろしくないことだと存じます」
(8)参議・藤原義懐「帝の亡き母君、懐子様にも皇太后が贈られた先例があります」←順序を無視した不規則発言!
(18)左大臣・源雅信が注意のためせきばらいをする
(3)参議・藤原佐理「ただいまの義懐殿の御意見は皇太后さまのこと。皇后さまではございませぬ」
(8)参議・藤原義懐「円融院の后・遵子様は中宮にあらせられる。ただいま皇后の座にはどなたもおられない。帝があれほどまでにご寵愛された忯子様に皇后を贈られて何がいけないのか。大納言為光様。大納言様は忯子様のお父上。帝のお心遣い、ありがたいとは思いませぬか」
(16)大納言・藤原為光「意見は下位の者から順番に述べるものにございます」
(5)参議・藤原公季「あり得ません」
(6)参議・源忠清「同じく」
(7)参議・藤原義懐「帝のお心です。忯子様に皇后の称号を」
(10)中納言・藤原顕光「分かりません」
(12)中納言・藤原文範「あり得ません」
(16)大納言・藤原為光「残念ながら、難しいと存じます」
(17)右大臣・藤原兼家「先例が見つかればよろしいかと」

なんと!
順序を乱した義懐と、それを注意喚起した為光を除くと、見事に下位の者から順番に話しているではありませんか。
大江斉光、藤原為輔、源保光、源重光、藤原済時、藤原朝光、源重信についてはセリフがありませんでしたが、まあそれは尺の関係で省略したということでしょう。

NHK、恐るべしですね。
しかも、よーくこの場面を見直してみると、ちゃんと席次順に座っているのが分かります。

陣定の席次表

ドラマ作りの上で、何かとセリフの多い義懐を見えやすい位置に配置するという手もあるはずなのに、そこはしっかりと時代考証通りに着座させるNHK。素晴らしいです。

きっと頼忠が不在だったのも、誰かの日記なりで病欠だったという根拠があるのでしょう。(不勉強でよく分からないのですが)

ちなみに唯一「分かりません」と述べている藤原顕光は、仕事のできないことで有名な人です。こういうキャラだからこそ「分かりません」というセリフにしたんでしょうね。芸が細かいです。

この顕光の失態については、3回に渡って解説しているので、よかったらどうぞ。

今後、良かったらこの席次表を見ながらドラマを見てみてください。
といっても、翌年になるともう席次は変わっちゃうんですけどね。

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