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 映画『美しき緑の星』〜 ”他の惑星”から見た”地球”が表現された映画〜宇宙的価値観にスポットをあてて徹底解説(ネタバレあり)


” 誰かの心地良い”は、”誰かの心地わるい ”

” 地球のスタンダード ”は、” 宇宙のアブノーマル "

” 地球という星の常識・地球人的価値観 ”と ” 宇宙の法則・宇宙的価値観 ”



こんにちは。Shiki Deities Founderの那知(Nachi)です。

この映画レビューコーナーでは

SF映画やドキュメンタリー映画など、「宇宙」が題材の映画、宇宙の世界観がふんだんに盛り込まれている映画の

” 宇宙的価値観 ” ” 宇宙の常識・共通認識 ”
にスポットを当てて、映画をレビュー・考察・解説していきます。


今回は、1996年にフランスで公開された映画 「美しき緑の星」
をレビューしていきます。

映画「美しき緑の星」1996年製作/89分/フランス
原題:La Belle Verte
監督:コリーヌ・セロー
配給:TF1 Group


「美しき緑の星」のあらすじ



宇宙のどこかに存在する『緑の星』の住人は、高度なテクノロジーを持ちながらも、持続可能な生活と自然との調和を大切にする文化を築いています。

地球よりもはるかに文明が進んでいる『緑の星』の人々には超能力が備わっており、愛と平和のもとで、穏やかに生活を営んでいます。

そんな『緑の星』には、「星外派遣」という任務があり
文明が遅れている他の惑星に、緑の星の住人を派遣して
その星の現状を調査したり、文明の方向性を軌道修正する活動をしています。

「誰が、どこの星に派遣されるか」を決める、星の総会では

緑の星の住人が、様々な星に積極的に派遣されるのを希望する中

緑の星の住人全員が、唯一、派遣されたがらない星があります。

その星の名は、「地球」

地球は  差別 ・ 独占 ・ 飢餓 ・ 不平等 ・圧政 ・ 戦争・不要品の大量生産 ・原子力・自然破壊 を繰り返す極めて原始的で野蛮な星と緑の星の住人達の中では認識されています。

すでに200年もの間、「地球」には誰も志願者はおらず、分かり合えない星、もはや助ける必要はない、わざわざ行く必要がない星とまで『緑の星』の住人に言われています。

そんな星「地球」に、"誰も行きたがらないなら、、"と
一人、派遣を志願した主人公「ミラ」。

実は、ミラには誰にも言っていない秘密がありました。
それは、ミラの母親が地球人であるということ。
自分の母親が生まれ育った地球という惑星を一度見てみたかったのです。

心配する家族に見送られてミラは地球へと旅立ちます。

平等・共有・平和・協力・自由・安全・環境保護・持続可能を重んじる宇宙のどこかにある「緑の星」の住人「ミラ」が、1990年代の地球を体験するユニークなストーリー。

「美しき緑の星」の主な登場人物


美しき緑の星 人物相関図


【ここからネタバレ】『美しき緑の星』で示される”宇宙的価値観”にスポットをあてて徹底解説


※以下、映画『美しき緑の星』のネタバレを含みます。
映画『美しき緑の星』を視聴してからの購読をおすすめします。

ミラの持つ超能力一覧

ミラは、地球に派遣されるにあたって、いくつかのプログラムをインストールしていきます。また、もともとミラに備わっている宇宙人ならではの超能力もあります。

まずは、ミラのインストールしたプログラムと超能力を紹介していきます。

①接続解除(切断)プログラム

ミラは地球へ派遣されるにあたり、”接続解除”というプログラムをインストールします。

この”接続解除”プログラムとは、

地球人を「本来の自分に戻させる能力」です。

私達、地球人は生まれた時から、教育機関や社会、メディアを通じて、地球社会の常識を刷り込まれて生きています。

その中には、良質な教育もあれば、洗脳と俗に呼ばれている、社会の一部の人達だけに都合の良い内容などと様々です。

良質な教育により、本来の自分らしさを発揮しつつ、社会と調和することができれば良いですが

洗脳と呼ばれるものにより、本来の自分らしさを思い出せず、発揮できず、社会に馴染めない生き方になってしまったり。。
社会のルールには従うことができても、どこか心が満たされない生き方をしてしまっていることなども多々あります。

この”接続解除”プログラムとは、

そんな、”地球社会の常識から解放”されて
”本来の自分に戻させる能力”であり
そのように作中で表現されています。

また”接続解除”プログラムを
別の表現で説明すると

「地球の”3次元意識”との接続を解除する能力」とも言えます。

3次元意識とは・・・

あくまで「物質的」な視点だけで物事を見ている段階の意識、考え方を表します。

「自分 = 人間の肉体」だと思っており、人間の精神的なことにまで理解が及びません。
そして、所有物外見仕事、一緒にいる人々など外面(そとづら)ばかりにこだわり、それによって人間の価値が決まると考える傾向のことでもあります。

その為、常に自分の所有しているものを失うかもしれないという不安感や恐怖を感じており、もっと欲しいという欲望に生きている状態です。

そして、物事を「良い・悪い」や「正しいか、正しくないか」「正義か悪」かの二元論で判断しがちで、「人生は他人との競争」と考え、お金や社会的地位に執着している意識、考え方のことを表します。


しかし、この地球の”3次元意識”との接続を解除された人は

所有ではなく、共有・共存

物質主義ではなく、精神主義

環境破壊ではなく、自然・動物愛

競争ではなく、協力

欲望ではなく、利他

ではなく、真実

外見や偽りの愛ではなく、内面や真実の愛

争いではなく、愛と調和

やるべきことではなく、本当にやりたいこと

大事にするようになります。

”接続解除”プログラムには、「弱」と「強」の2種類ある


”接続解除”プログラム「弱」

食肉店で肉を買う女性(地球人・左)とミラ(緑の星の住人・右)

”接続解除”プログラム「弱」は、宇宙人ミラと話をするだけで発動します。
(ミラと話をすること、交流することで、その地球人の意識改革が起きるのでしょう)

販売していたケーキを3週間前のものだと言い車に投げつける女性(左上)
購入した生肉の匂いを嗅いで、驚く女性(右上)
靴と靴下を路上で脱ぎ出す男性(左下)
路上の木にいきなりハグしだす男性(右下)

ミラと少しでも会話した人達は、皆、”接続解除”弱の影響をすぐに受けます。

ケーキの販売店の女性は、3週間前のケーキだと白状して(偽りではなく真実を語り出し)路上にケーキを捨て出したり

生肉を購入した女性は、自分で購入したにも関わらず、肉の匂いを嗅ぎながら、自分のしている行動に怪訝そうに驚きます。(動物愛に目覚める

プライドの高そうな老人は、外見を取り繕うことを馬鹿らしいと感じ、心地よい裸足になります。

ある中年男性は、突然自然愛に目覚め、路上の木に抱きつき出します。

ミラと少しでも話すだけで、”3次元意識”から、”接続解除”弱された人たちが、”本来の自分”に少し戻る様子が、コミカルに表現されています。


”接続解除”プログラム「強」

産婦人科医の主任マックスに向けて、ミラが「”接続解除”プログラム 強 」を行っている
(衝撃の角度と顔芸笑笑)

”接続解除”プログラム「強」は、宇宙人ミラが、対象者(地球人)に向けて、自分のこめかみを両手で押さえて、頭を上に倒す仕草をすると発動するものです。

対象者(地球人)は、強力に接続解除され、「弱」に比べて、より強く本来の自分に戻ります

そして、嘘がつけず、真実のみを語るようになります。

”接続解除”プログラム「強」を受けた人々集


1.産婦人科医・主任教授のマックス

”接続解除”プログラム「強」を受けた直後のマックス(産婦人科医・主任教授)
まるで、コナン君に麻酔銃を打たれた毛利探偵のよう。。笑
”接続解除”プログラム「強」を受けた後のマックスは、非常に善良な人となります。
受ける前は、産婦人科の主任教授・医者ということで院内の人に傲慢な態度をとっていましたが
それは仕事でのプライドや、人に本音を話すことを恐れていたためでした。
本来のマックスは、美しい、優しい心の持ち主だったのです。
マックスは、ミラにすぐさま協力的になります。

2.乳児失踪事件の捜査官

”接続解除”プログラム「強」を受けた二人の捜査官ですが、彼らの本音は乳幼児を見るのが好きなのでしょう。接続解除後は、美術館で乳児の絵の鑑賞に浸っています。。笑
心から乳児が好きなのでしょう。。

3.テレビ放映中の政治家二人組

テレビには、雇用創出に対して真剣に語る政治家二人組が映る
テレビ越しに政治家二人組に向けて、ミラが「”接続解除”プログラム 強 」を行っている
やっぱりすごい顔芸笑笑。
”接続解除”プログラム「強」を受けた直後の政治家二人組
政治家二人組の口から本音が笑。。。。
本音・真実を話してしまうようになるだけでなく
精神性の低さまであらわに露呈してしまっています。。

”接続解除”プログラム強は、受けた本人が善良な心の持ち主であれば善良さが前面に現れますが、そうでない人は余計に精神性の低さがあらわになってしまいます。。

接続解除するだけでなく、心を磨き続けること
私たちが地球で生きる上で大事だと痛感します。。。

②予知能力

ミラには予知能力(未来に起きる物事を予測する力のこと)が備わっています。

ミラ(緑の星の住人・左)・マーシャ(地球人・真ん中)・ソフィア(地球人・右)

作中で、ミラが、マーシャとソニアと一緒に赤ちゃんを匿っている際に、乳児失踪事件の捜査官が家に駆けつけましたが、家に来る直前に、ミラが不吉な予感を感じとり、2階に赤ちゃんを避難させました。

予知能力のおかげでミラは危険を回避することができました。


③テレパシー能力

ミラや緑の星の人々には、テレパシー能力が備わっています。

テレパシー能力とは、言葉やジェスチャーなどを使わなくても人と会話ができたり、相手に自分のメッセージを送ったり、逆に相手の心の中にある考えや感情を読み取ることができる能力。自分の見ている風景・光景なども作中では送受信することができています。

ミラには5人の子供がいますが、美しき緑の星と地球とで、テレパシーで交信をしています。

緑の星から、ミラに地球がどんな場所かを尋ねるミラの子供達
地球からテレパシーで、現状を子供達に報告するミラ

テレパシーの交信の時は、両足を水につけて、両手の親指で耳の穴のあたりをおさえて、残りの4本の指をひらひらと動かして行っています。


④エンパス・リーディング能力

ミラには、エンパス・リーディング能力も備わっています。

エンパス能力とは、人のオーラが見え、他人の感情や気分を感じ取り、識別する能力のことです。

リーディング能力とは、常人が肉眼では見えない部分を超感覚を使って、個人の情報を読み取ることのできる能力のことです。

ミラは、個人の持つエネルギーであるオーラやチャクラから、おそらく情報を読み取っています。

ミラは通行人をみて、「胃病の人、心臓病の人、肝臓病の人、、、」などと瞬時に読み取ります


⑤新生児との交換プログラム

ミラは添加物が多分に含まれているの地球の食べ物が食べられず困ってしまいます。

そこで、病院に行って新生児(赤ちゃん)を抱っこすることで赤ちゃんとエネルギーの交換を行い、飢えをしのぎます。

物質的な食物の代わりに、プラーナ(気、宇宙のエネルギー)を摂取して生きることが出来るという考え方がありますが、作中で出てくる赤ちゃんとのエネルギー交換は、それに近いものかもしれません。

「美しき緑の星」の見どころ、宇宙的価値観ポイント

口紅のシーン

リサ(地球人・左)とミラ(緑の星の住人・右)との会話

地球人の日常持ち歩いているもの・携行品がどんなものか知りたくて
ミラは、リサ(地球人)にカバンの中身を見せて欲しい、と言います。

ミラ:これは何?

リサ:それは口紅よ

ミラ:何に使うの?

リサ:唇につけるの。こうよ(自分の唇に塗って見せる)

ミラ:ああ、わかったわ。唇につける薬ね

リサ:薬じゃないわ。化粧品よ。

ミラ:化粧品?

リサ:美装ね。

ミラ:美装?

リサ:綺麗にするの。

ミラ:どうして?

リサ:習慣だから。

ミラ:何のための習慣?

リサ:愛のためよ

ミラ:ということは、つまり惚れ薬の一種ね

リサ:ちょっと違うんだけど…..

ミラ:つけないと愛されない??

リサ:それは、その・・・どう説明したらいいのか・・・(リサは泣いてしまう)

ミラ:・・・あら、ごめんなさい。。

リサ:大丈夫よ、気にしないで。

ミラ:これは?(リサが家族と写っている写真を見せる)

リサ:これは写真よ。これが主人、両親、子供たち。

ミラ:リサが愛する人たちね。

リサ:(笑顔)

ミラ:でも、この人たち口紅をつけてないわ
(リサの家族の写真を指さしながら)

地球人の携行品に純粋に疑問を持ち、リサに質問をするミラと、

ミラの質問に答えながら、普段何気なくつけている口紅を通して、”本当の愛”とは何なのかを考えさせられ、涙してしまうリサのおもしろい問答です。

人のありのままを愛するということが、まだまだ未熟な地球人に対する、精神性の高い緑の星・惑星からの含みを持たされたメッセージのようなシーンです。。


「美しき緑の星」監督コリーヌ・セローの言葉


世の中の仕組みを根底から問い直すクレイジーな映画を撮ってみたいと思いました。それで長い時間をかけて考証を行ったのです。無駄になったシーンやアイデア を書き留めたノートが何冊にもなりました。次から次へと疑問が生じたのですが、そのすべてに答えが得られたわけではありません。
そうして、風にそよぐ木々に見守られながら、台本の執筆に取りかかったのでした。

完成した台本を見た人たちの反応は実にさまざまでした。このプロジェクトの資金援助には乗り気でない人たちが何人もいるとプロデューサーのアラン・サルドが言います。「本当にこの映画を撮るつもりですか?」と彼が言うので、私は熱を込めて「もちろんです」と答えました。

かくして映画は封切られたのですが、完全な失敗でした。誰も興味を示さなかったのです。客が入らず、批評家からは酷評されました。業界にとって、この作品は 理解不能のUFOだったのです。しかし、この映画は死にませんでした。こうした逆風にもかかわらず「美しき緑の星」は生き残り、生き物のように成長し、人 の話題となったのです。

この映画が必要とされているからでした。

この映画が世の中に発するメッセージのためだったのです。

一緒に映画を見て語り合う「美しき緑の星」クラブのサイトが、いくつもインターネットに見られるようになりました。

私は早すぎたのでしょうか? 

いいえ。いま、この映画のように価値観を根底から問い直すことで世の中を変えることが必要な、ぎりぎりの瀬戸際まで私たちは来ているのかもしれません。

「美しき緑の星」監督コリーヌ・セロー

コリーヌ・セロー監督 インタビュー動画

貴重なインタビュー動画ですが
コリーヌセロー監督の社会への問題提起、メッセージ性が
非常に込められているのが伝わります。。。

1996年当時のフランスではこの映画の価値観は受け入れ難いものが社会風潮的にありましたが、現代の地球の(日本や世界)ではだんだんと受け入れられている、十二分に理解ができる内容になっているものだと思います。

「美しき緑の星」解説まとめ


今回は「美しき緑の星」をネタバレありで解説致しました。

美しき緑の星」は”もしも宇宙人が地球に来たら?”という
よくありがちなストーリー展開のコメディ映画と思われがちですが

大変な真実性、宇宙的価値観が多分に含まれた
素敵な映画です。


「美しき緑の星」は、Amazonや楽天市場などでDVDを購入して視聴することもできます。

ぜひ、ご興味ある方は「美しき緑の星」で検索して、ご覧になられてみてください。


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