丸田洋渡

本名。よっと、と読みます。俳句/短歌/川柳、たまに詩/小説。「帚」「第三滑走路」参加 …

丸田洋渡

本名。よっと、と読みます。俳句/短歌/川柳、たまに詩/小説。「帚」「第三滑走路」参加 https://mobile.twitter.com/qualia_of_sky

マガジン

  • 大連作

    主に過去のネットプリントで発表した、数の多い連作等の作品を、置いておく場所です。期間を逃した方などぜひご覧ください。

  • 日記/エッセイ

    作品以外の文章

  • 俳句/短歌/詩 作品

    自作品

  • 掌編

    掌編

  • 鑑賞

    鑑賞をさせていただいたもの

記事一覧

固定された記事

Fair Enough (20首)

 短歌20首連作です。 ──────────────── Fair Enough  丸田洋渡 刺したあと貫くためのひと押しで爪楊枝の先端は曲がった 声が磁石になって四月の教…

丸田洋渡
6か月前
42

PYRMD/CRYSTL(100首)

 短歌の100首連作です。2024年2月11日にネットプリントとして発行したものと同じ内容です。 チッ またか……「光による救済はもう二度と行いませんので!」ガチャ  …

丸田洋渡
1日前
2

長すぎる日記2024.5.1-3

 思ったことや思い出したことを、書きたい分量つぎつぎに書いているので、読者へのサービスが存在しないことだけは先に書いておきます。  見せることを前提としながら、…

丸田洋渡
2日前
18

見えない人(短編)

  見えない人   丸田洋渡  手を挙げると、それに気付いたタクシーが目の前に停まり、自動で後部座席のドアが開いた。車から漏れでている生ぬるい暖気を感じながら、…

丸田洋渡
8日前
11

そのときどきのメモ(日記)

 蓚酸が体液を酸性化してしまうので、たけのこを毎日食べたい とかだと、アルカリ性のわかめと一緒に煮たりして、中性にするのがよい。  一年前くらいに、室井綽・岡村…

丸田洋渡
3週間前
19

Unlucky(抄・30首)

 ある賞に応募して落選した50首連作より、抄出して再構成したものです。完全版はまたどこかで形にする予定です。  ○  Unlucky  丸田洋渡 遠雷がもっと遠くへ逃げ…

丸田洋渡
2か月前
37

日記ならずのための儀式

 日記にしようとしてメモしていたものを、昇華しなかったとき、そのメモは日記にならなかったもの、すなわち「日記ならず」になる(未成年、と同じ言い方で、未成日記と呼…

丸田洋渡
3か月前
14

歓声(川柳30句)

川柳30句。  歓声   丸田洋渡 海沿いの水族館のいやいや期 雷は剣をあやして哺乳瓶 新月の新生児室なればこそ 新しい手が生えてくるから撮って うつくしい濡衣を…

丸田洋渡
3か月前
20

ミニチェア(詩)

 ミニチェア  丸田洋渡  ミニチュアの椅子 ミニチェア  ○  椅子と椅子が結婚したとして ミニチェアが期待されるなら 家具屋から逃げるしかない  ○  家具…

丸田洋渡
5か月前
7

落選作より48首+思い出

 お世話になっております。丸田洋渡です。過去に短歌の新人賞に応募して、落選した作品のうち、まだ公開していなかったものの中から、それぞれ数首ずつ抄出しております。…

丸田洋渡
6か月前
32

いい人・タイムカプセル(掌編)

 掌編小説です。  いい人・タイムカプセル  丸田洋渡  いい人 って思われつづけるのも難しいって感じ。  一度も開いたところを見たことがない教室があの学校にあ…

丸田洋渡
6か月前
13

Float/Fluorite(50首)

 短歌50首連作  Float/Fluorite  丸田洋渡 三十円多く払ったのはメロンソーダにアイスがフロートするから 天秤がうすくらやみに傾いてあなたの半覚醒の寝返り  …

丸田洋渡
7か月前
44

跡形(100首)

 短歌の連作です。2023年5月31日にネットプリントで発行したものと内容は同じです。   跡形        丸田洋渡  Ⅰ 緩やかな時間旅行の夢をみる うつろう雲…

丸田洋渡
7か月前

Ephemerality(100首)

 短歌の連作です。2022年3月5日に発行したネットプリント「第三滑走路」13号に掲載した、100首連作になります。発行時と内容は同じです。  Ephemerality   丸田洋渡

丸田洋渡
7か月前

思わず撮っていた写真(日記)

 いつの間にか、思わず撮っていた写真を貼って、その時思っていたことを振り返るという日記です。  伝票で担当名が「細工藤」とあり、二度見して撮った。もしかして、「…

丸田洋渡
7か月前
20

鉄琴/宝石(詩)

 詩 二篇  鉄琴   丸田洋渡  うちは木琴やからごめんね、と言われて、別に謝らんでいいよ、と答えた。何故かその子が泣いてるから、泣いていいんはこっちだけやの…

丸田洋渡
7か月前
13
Fair Enough (20首)

Fair Enough (20首)

 短歌20首連作です。

────────────────

Fair Enough  丸田洋渡

刺したあと貫くためのひと押しで爪楊枝の先端は曲がった

声が磁石になって四月の教室に仲良しグループのできあがり

先生の言うとおりに列に並んだ モルモットに二回出てくるモ

これもまた何かの暗示 新しい歩道橋が積乱雲の下

振った手のその手のひらが見えたなら占い師は占ってしまうよ

夏の雲

もっとみる
PYRMD/CRYSTL(100首)

PYRMD/CRYSTL(100首)

 短歌の100首連作です。2024年2月11日にネットプリントとして発行したものと同じ内容です。

チッ またか……「光による救済はもう二度と行いませんので!」ガチャ

  PYRMD/CRYSTL  丸田洋渡

長すぎる日記2024.5.1-3

長すぎる日記2024.5.1-3

 思ったことや思い出したことを、書きたい分量つぎつぎに書いているので、読者へのサービスが存在しないことだけは先に書いておきます。
 見せることを前提としながら、読まれることは前提としていないので、読まずに、眺めるくらいが良いと思います。

5月1日 中学一年のころ、国語の先生によく思われたくて、「『破戒』の、ですか?」って言ったことを思い出した。あのことを今も後悔している。島崎藤村の名前が一瞬出た

もっとみる
見えない人(短編)

見えない人(短編)

  見えない人   丸田洋渡

 手を挙げると、それに気付いたタクシーが目の前に停まり、自動で後部座席のドアが開いた。車から漏れでている生ぬるい暖気を感じながら、お願いします~と言って乗り込み、行先について伝えようと思ったら、運転手が何かずっとぶつぶつ喋っている。無線で会社の別車両と会話しているのかと五秒くらい様子を見たが、どうやら社員同士のそれではない。彼は助手席の方を向いて、大声で「そりゃ災難

もっとみる
そのときどきのメモ(日記)

そのときどきのメモ(日記)

 蓚酸が体液を酸性化してしまうので、たけのこを毎日食べたい とかだと、アルカリ性のわかめと一緒に煮たりして、中性にするのがよい。

 一年前くらいに、室井綽・岡村はた『竹とささ その生態と利用』(保育社、昭和46年)を読んだときの、自分が書いていたメモ。たけのこを毎日食べたい場合のすすめが載っていて、確かにそういう人もいるかもな、と適当に思った後、自分もそういう人になる可能性は0ではないのだから 

もっとみる
Unlucky(抄・30首)

Unlucky(抄・30首)

 ある賞に応募して落選した50首連作より、抄出して再構成したものです。完全版はまたどこかで形にする予定です。

 ○

 Unlucky  丸田洋渡

遠雷がもっと遠くへ逃げていく嘘つきがいる新生児室

捻挫した子どもを囲む子どもたち柏葉あじさいの陰の奥に

行かないでその木陰には平成のバスガイドが三人もいるから

 ○

夏の雲は自動的に流れて行ったすみれ色の果物籠の上

野薊が揺れる 未

もっとみる
日記ならずのための儀式

日記ならずのための儀式

 日記にしようとしてメモしていたものを、昇華しなかったとき、そのメモは日記にならなかったもの、すなわち「日記ならず」になる(未成年、と同じ言い方で、未成日記と呼んでもいいが、語呂が悪い)。

 ただの書き残しなら破棄すればいいものの、「日記にしようとして」書き残したものは、未来に何かになる気配を残していて、冬の花芽を剪り落とすようで気が引ける。いつか成就しそうな呪いの人形みたいで、ただ捨てるだけで

もっとみる
歓声(川柳30句)

歓声(川柳30句)

川柳30句。

 歓声   丸田洋渡

海沿いの水族館のいやいや期

雷は剣をあやして哺乳瓶

新月の新生児室なればこそ

新しい手が生えてくるから撮って

うつくしい濡衣を着せられている

骸骨は琴のおけいこがあるから

都市伝説が透明になる

ろわろわと白い卵が冷蔵庫

ふりかかる奇跡が大好きで病院

詩で詩を拭う戦いになる

死と気心がしれているから

たかが顕現ごときで呼ぶな

悲しみと砂

もっとみる
ミニチェア(詩)

ミニチェア(詩)

 ミニチェア  丸田洋渡

 ミニチュアの椅子 ミニチェア

 ○

 椅子と椅子が結婚したとして ミニチェアが期待されるなら 家具屋から逃げるしかない

 ○

 家具屋姫 まぼろしの家具を要求

 ○

 人の式典が再び開かれるまで 椅子はすしずめ

 ○

 アマチュアの椅子 アマチェア

 ○

 ありとあらゆる可能性からひとつに選ばれた わけではなく、初めからそうなる予定で、椅子になった

もっとみる
落選作より48首+思い出

落選作より48首+思い出

 お世話になっております。丸田洋渡です。過去に短歌の新人賞に応募して、落選した作品のうち、まだ公開していなかったものの中から、それぞれ数首ずつ抄出しております。

 連作の流れが分からないままになるので読みづらいかもしれませんが、一首単体でも面白がれるようなもののみ引いております(全て載せられたらいいんですが、今改めて見ると表現の甘い部分が多くて全て公開するにはやや難がありました)。

 本記事後

もっとみる
いい人・タイムカプセル(掌編)

いい人・タイムカプセル(掌編)

 掌編小説です。

 いい人・タイムカプセル  丸田洋渡

 いい人 って思われつづけるのも難しいって感じ。

 一度も開いたところを見たことがない教室があの学校にあったことを覚えている。

 タクシーに乗ると必ず、運転手に、怖い話ありませんかって聞くようにしてるんですよ。

 招待状にタイムカプセルの七文字が手書きで書かれている。

 ・

 誰かを助けたい、ってもう思わなくなったっていうか、/

もっとみる
Float/Fluorite(50首)

Float/Fluorite(50首)

 短歌50首連作

 Float/Fluorite  丸田洋渡

三十円多く払ったのはメロンソーダにアイスがフロートするから

天秤がうすくらやみに傾いてあなたの半覚醒の寝返り

 ○

恋のふりして洗脳はよくないな雨雲が雨落とさず通る

心は遥か上に浮かんでコンビニの監視カメラに当たって砕ける

わくわく眠りどろどろ覚める 妖怪は町中にいるような気がする

花札が踊って話しかけてくる

もっとみる
跡形(100首)

跡形(100首)

 短歌の連作です。2023年5月31日にネットプリントで発行したものと内容は同じです。

  跡形        丸田洋渡

 Ⅰ
緩やかな時間旅行の夢をみる うつろう雲の轟音の消失

Ephemerality(100首)

Ephemerality(100首)

 短歌の連作です。2022年3月5日に発行したネットプリント「第三滑走路」13号に掲載した、100首連作になります。発行時と内容は同じです。

 Ephemerality   丸田洋渡

思わず撮っていた写真(日記)

思わず撮っていた写真(日記)

 いつの間にか、思わず撮っていた写真を貼って、その時思っていたことを振り返るという日記です。

 伝票で担当名が「細工藤」とあり、二度見して撮った。もしかして、「細(ほそ)工藤」と「太(ふと)工藤」がいて、細(ほそ)の方なのか。
 もしかして、自分が知らないだけで、全ての苗字で「細」と「太」があったりする? と思って、そのときは日本全国の名字が頭の中で単純に3倍に増えていって、ぶわっと(ドローンみ

もっとみる
鉄琴/宝石(詩)

鉄琴/宝石(詩)

 詩 二篇

 鉄琴   丸田洋渡

 うちは木琴やからごめんね、と言われて、別に謝らんでいいよ、と答えた。何故かその子が泣いてるから、泣いていいんはこっちだけやのに、と思いながらハンカチを渡した。/自分以外の全員が木琴で、私だけが鉄琴であることは、はじめは自慢だったが、今はもうお金をいくら払ってもいいから木琴にしたいと恥ずかしく思っている。/放課後、涙を溜めながら早足で階段を下りると、関係のない

もっとみる