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クリスタルスカル 〜インディ・ジョーンズと冒険と嘘〜

オーパーツの謎、超古代文明は存在したのか!!?
…みたいな話が大好きだ。

真偽の程はともかく、平凡な日常と地続きの世界に夢があると思わせてくれるし、多少の嘘があったとしても傷つく人はそうそう多くないはず。
(嘘のネタで詐欺を働く輩や泣かされた者もいるだろうけれど、それはまた別の話…)


代表的なオーパーツといえば、スミソニアン博物館や大英博物館にも所蔵されているクリスタル・スカル

「死」や「神秘」を連想させるドクロのモチーフであることや、磨き込まれた水晶の美しさも相まって、特に多くの人々を魅了してきた。

もっとも有名な「ヘッジス・スカル」が発見されたのは1927年(諸説あり)で、インカやマヤ文明の遺物だといわれてきた。
他にも紫水晶のスカルなども含めると、意外に数が多くて、これまでに19個も確認されているらしい。


現代なら水晶の彫刻は決して珍しいものではないけれど、硬度7の水晶の研磨はなかなか大変な仕事だ。
1970年代の検査では工具の痕跡がなく、古代にはあり得ない謎の技術で作られたのでは…とされていた。


しかし、2008年のスミソニアン博物館の検査では近代工具を使った研磨痕が発見され、同博物館や大英博物館所蔵のスカルは19世紀以降の作品だと決定づけられた。
つまり、古代の遺物としては偽物だ。


こうしてまたひとつ、謎が謎でなくなっていく。
しかも、2008年は映画『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』公開の年でもあった。


画像引用元:映画.com


インディ・ジョーンズといえば、小学生のときからテレビの吹替版でおなじみとなっていた。

古代の秘密を求めて命懸けの冒険が始まり、思いもよらぬ結末が待っている。
大人になったらこんな冒険に…と、夢が膨らんだ。

今から思えば…
チベット高原へは行ってみたけれどそんな猛吹雪の気候じゃなかったし誰もウォッカなんて飲んでなかったよ?とか、鉛入りの冷蔵庫に隠れて核実験の被曝を免れたなんて!そんな無茶な!とか…
いろいろ感じるけれども、それも含めてのインディ・ジョーンズ、「映画のお約束の楽しみ方」ではないだろうか。


さて、クリスタル・スカルは遺物ではなく近代の工芸品という説に落ち着いたようだが、オークションに売りに出された記録などから出処を遡っていくと、ドイツの宝石研磨の町イーダー・オーバーシュタインに行き着いたらしい。

https://www.idar-oberstein.de/

宝石商なら誰もが知る地名だと思う。


真面目で几帳面なドイツ人の気質、それは日本人にも通じるところがあり、ドイツ研磨の宝石は仕上げがきっちり美しく定評がある。
さらに、秘密厳守という職人ならではの気質によって、古代の遺物という名目で作られた情報が外に漏れなかったために、クリスタル・スカルの謎が保たれたと想像がつく。


単なる精巧な水晶工芸品。
しかし、それが人の手を渡るうちに伝説や噂を増殖させ、大きな謎を生み出したと考えれば、オーパーツではなくてもやはり不思議なアイテムには違いない。

騙し騙され欲望渦巻く人間の世界。
けれども、夢を追い続けたいと願う人間の冒険心。
クリスタル・スカルはその目の無い眼窩で、人の世界を見続けてきたのかもしれない。
これまでも、それからこの先も。


画像引用元
http://www.nazotoki.com/crystal_skull.html

https://www.afpbb.com/articles/-/2415872?cx_amp=all&act=all


※このnoteは過去にShortNoteにて公開した記事に加筆修正したものです。

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