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私はルイーズ事件 発端 愛国者学園物語40

 英語のことわざに、「Curiosity killed the cat 好奇心は猫を殺す」というものがある。猫好きだったフランスの女性、ルイーズが愛国者学園で引き起こしたこの事件は、まさしくそれを地で行くものだった。


 事件の発端は、このフランス人女性が、冷やかし半分で愛国者学園を訪問し動画を撮影したことだった。彼女は滞在していた京都から名古屋近郊の学園に足を伸ばし、その様子を写そうとしたわけだ。

 この若い女性ルイーズは、好奇心のなすがままに、旅先で様々な動画を撮影しては、ネットに流す人物として知られていた。彼女は子供時代にいじめられっ子だったと言われ、そのせいか、彼女は特に社会正義やナチス問題、あるいはファシズムに敏感だった。だから、彼女のファンの中には、ルイーズこそ政治家になるべきだと熱心に主張する者たち少なからずいた。

 彼女は南仏マルセイユの生まれ、いわゆる庶民で、実家は金持ちではなかったが、親はルイーズの教育に多大のエネルギーを注ぎ込んだ。そのおかげで、彼女は立派な成績でパリの大学を卒業した。政治学と経済を学んだ優等生であるからか、積極的に自分をアピールし、有名コンサルタント会社に職を得た。

 彼女はフランス人なら絶対欠かさないはずのバカンスもほとんど取らず、機械仕掛けの馬車馬のごとく働いた。結果、7年で幹部級のポストを手に入れた彼女は、苦労をかけた両親を良い家に引っ越しさせたのであった。そして彼女は会社を辞めて莫大な退職金を得たので、世界中を旅しながら、動画を配信する生活を始めた。それは忙しすぎてバカンスもろくに取れなかったことへの埋め合わせと、世界の見聞を深めたいという名目だった。

 ルイーズはラテン語と英語にも堪能、かつ弁論術にも長け、誰をも引き付けるような明るさがあった。そのせいか、彼女は動画配信家としても成功し、フォロワーが実に1000万人近くもおり、その人気はうなぎのぼりだった。彼女の同級生たちの中には、若くして地方議員になった者たちがいて、彼らは彼女の成功ぶりを見て、政治の世界に引き込もうとした。だから、ルイーズは将来、フランス大統領になれたかもしれない。


 と、このように書けば、彼女はバラ色の将来を持つ女だった。しかし、どんな人間にも暗黒面はある。彼女の場合、それは、相手を馬鹿にせずにはいられない性分だった。時々ではあるが、彼女は動画などで題材にした人物を冷笑し、面白おかしくからかうコメントをした。

ファンがそんな態度をたしなめるコメントを残すと、彼女は必ず反撃した。そのファンを「コメント書き込み禁止」や彼女のアカウントへの「アクセス禁止処置」にするか、もっとひどいことを楽しんでいた。


他のファンをけしかけて相手を襲わせるのだ。ある友人は、彼女の対立相手が、彼女のファンからの十字砲火を受けて大炎上したあげく、アカウントを消去して逃げたとき、ルイーズが爆笑したことをよく覚えていた。


 人との対話が重要だと言いながら、その一方では反対意見を封殺するような彼女のその言動に、その友人は疑問を感じたと言う。また、自分の経歴や世界観に絶対的な自信を持っていたせいか、ルイーズは自分の価値観とは異なる異文化に冷淡であった。

 それゆえ、ルイーズの人間性について疑惑の目で見る人たちも少なからずいて、彼らは彼女に「アグリー・ルイーズ」というニックネームをつけた。彼女は冷淡な醜い、アグリーな性格の持ち主なのだ。もし、こういう人間が権力を持ったら、社会はどうなるのだろうか、と彼らは危惧した。彼女は火種を持つ女だった。


続く 

大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。