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つままれた朝と

午前4時、朝の始まりを予感させるように鴉の声が響いたので、カーテンを開け、まだ霞む空を眺めました。

突然コールが鳴り、液晶画面に浮かび上がった名前に、驚きと、喜びと、懐かしさからすぐさま電話に出たのは2週間前のこと。今日は特別な友人のひとりであり、尊敬するピアニストが家に遊びに来てくれます。約束は昼だというのに「ワイン持参しますね」と彼らしさは健在。記憶の箱を開け紡ぎあったり、日々の生活を交換し合ったり、そんなささやかな時間を過ごせるなんて嬉しい。

もうひとつ愉快な出来事が起こりました。一昨日の朝のことです。夢の底から首をもたげようとまどろんでいたら、床にキャンディーのようなものがポロリとひとつ落ちています。前夜ベッドに入った時にはなかったもの。拾います。そうすると、またひとつ見つけ、狐につままれたような気持ちでそれを何度か繰り返したのち玄関までたどり着きました。そこには慎ましくも、ある種の輝きを放った紙袋があり、中にはたっぷりとした赤いサテンのリボンに包まれたプレゼントが入っていました。欲しい欲しいと心馳せていたイギリス生まれのストロベリーペッパーチョコレート。サンタの訪問の痕跡に、僕は文字通り子供に戻ったのでした。

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