見出し画像

SHE SAID〜被害者の声が無駄にならないように〜

ShinanoYamaさんは、私がnoteでフォローしているnoterさんの一人だ。
彼女の書く映画、音楽、ドラマなどのレビューが非常に面白く、「私も見たい!聴きたい!」となる記事を毎回書いていらっしゃるので、noteを始めた頃からいつも記事を拝読している。

そのShinanoYamaさんが今年の2月に発表された映画記事。

この記事を読んだ時から、どうしてもこの映画を見たいと思っていたのだ。しかし私が記事を読んだ時には、すでにほとんどの映画館で上映が終わっていたため、残念ながら映画館で見ることができなかった。
つい最近アップルTVでも見れることを知って、今こそ見よう!と思って映画を見始めた。
何故なら、最近日本のジャーナリズム、エンターテインメントについて色々と思うことがあったから。そんなタイミングで見始めたこの映画。私の視点から映画の感想と、今私が日本のマスコミに対して思うことを書きたいと思う。

映画は、#MeToo運動のきっかけとなった「ニューヨーク・タイムズ」紙の二人の調査報道記者を中心に展開していく。映画界の重鎮であったハーヴェイ・ワインスタインから受けた性暴力、精神的虐待について2人の女性記者が丁寧に被害者たちから取材をしていくという内容に重きを置かれている。
性暴力そのものの描写はなく、取材のシーンが淡々と映し出される。しかし、その映像だけで女性たちが受けた屈辱、恐怖、怒り、悲しみが伝わってくるほどだった。実名で告発をした女優やミラマックス社の元社員、その後も声をあげた人たちの勇気に拍手を贈らずにはいられない。

私が見ていて恐ろしかったのは、性暴力はもちろん悪なのだけれども、その犯罪を擁護するような社会の風潮や法のシステムが存在することだった。女性たちはそれにより長い間沈黙を強いられてきた。
女性たちが自分たちが受けるかもれしれない誹謗中傷、スティグマと戦いながら、なぜ沈黙を破り告発するに至ったのか。
私が思うに、記者や被害者の女性たちはこの「負の連鎖」を止めなければいけないと思ったのではないだろうか?

2人の記者にはそれぞれ娘がいる。
一人の記者の娘が会話の中でふと「レイプ」という言葉を口にする。それを聞いた記者は思わず涙する。本当ならそんな言葉を娘に言わせたくなかっただろう。それが日常になってはいけない。

この報道をきっかけに世界が大きく動き出すきっかけとなったのは間違いない。私もその大きな流れの中で話し始めた一人である。


映画の話とは少しずれるが、日本の報道やテレビのあり方について疑問を持たざるを得ない。
最近イギリスの公共放送局が、日本の芸能事務所の代表であった人物について大きく報道をした。私はそのドキュメンタリーの一部だけを見たが、衝撃的な内容だった。
しかし、日本のテレビ局でそのニュースを大きく取り上げているところはない。

無風なのである。

日本のエンタメ界で多大なる功績を残した人物なのかもしれない。しかし実際に被害者がおり、その証言から間違いなくそれは青少年への虐待だと思った。

タレントさんには申し訳ないけど、私はテレビを見るのが辛くなった。
その事務所の人たちは知らなかったのかもしれないし、被害にあっていないのかもしれない。公然の事実としてなんとなく有耶無耶にされていたのかもしれない。
だからこそ気味が悪い。巨大企業としてのコンプライアンスはどうなっているのか?


若い人たちの純粋な心を利用して、それ(虐待)を受け入れることで報酬(デビューなど)が得られる方法や、権力により弱い立場の人を黙らせる構造は、先に紹介した映画と同じような気がする。
アメリカではこれほど大きな問題になるのに、なぜ日本では問題にならないのだろう。もしかしたら私が知らないだけで、世界中で似たような搾取が行われているのだろう。

イギリスの報道に関して日本で無風だったのは、テレビ局や出版界、政治的な側面で、その事務所が莫大な利益をもたらしてくれるからなのだろう。何に忖度しているのかを知りたいが、どの報道機関もそれについては追及しない。

もしこのままこの問題が無風だったならば、日本は子供たちへの虐待を容認している国になるのではないか?
異次元の少子化対策を謳いながら、子供の安全と尊厳すら守れないのは矛盾している。このトラウマを後世に続けてはいけない。

映画の女性記者たちは、記事が出ても人々が無関心のままであることを最も恐れていた。勇気を出して告発をしてくれた人、取材をした人の努力が水の泡になる。
それがまさに今日本で起きている。

彼女たちのような使命感を持った人がどうか日本にもいますようにと願いながら映画を見たが、日本ではそれは難しいことなのかもしれない。

映画はとても素晴らしかったが、同時に日本の現状に絶望したのも事実である。

【追記】4月10日、noteから嬉しいお知らせが届きました。

ありがとございます!





サポートしてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです!!