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【映画雑記】『すずめの戸締り』観ました。

昨年、公開一週間後くらいに『すずめの戸締まり』観ました。


CM、予告編のみで前情報は一切入れずに観に行ったので諸星大二郎的な民俗学テイストファンタジーなのかな程度の認識で観に行きました。物凄い勢いでちゃぶ台をひっくり返されました。これは震災文学の一つの到達点でした。

東日本大震災を「忘れてはいけない」と言われ続けても2011年3月11日、あのとき何が起きたのかはどんどん忘れられる。時間と無関心は残酷だから。「忘れてはいけない」のはそこに人がいてそれぞれの生活があったというシンプルで当たり前なこと。その当たり前を覚えておくことが追悼となり慰めになる。

『すずめの戸締り』は現世の描写ではないといえ、きちんと燃える街を描いた。ここがなければ説得力は皆無だっただろうな。寓話と現実が交差し、観客は物語の中に自然と巻き込まれていき、主人公が絶望から希望を掴み取る姿を見守る。『天気の子』から3年でよくこの境地に辿り着いたなと驚いたよ。

ただ、観客としての自分も問われている気分にもなる。俺は昨日、いい歳のおっさんなのに15分くらい自然と涙をぽろぽろ流しながら観ていた。その涙はなぜ流れたのか、何のための、誰のための涙だったのかはきちんと向き合っておきたいと思った。ただ泣いてスッキリという単純な映画ではないのだ。

冒頭のモノローグ、演劇調な台詞など自分が新海監督の作家性と思っていたものが今回は封印されていた。彼の作家性は「万難を排してでも会いに行く」という一貫したテーマにあるのかもしれない。というわけで映画『すずめの戸締り』。

…食わず嫌いせずに観てくださいよ(お前が言うなとか言わない)。

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