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農業に投資できる環境を作ることの重要性

こんにちは。ネパールで農業関係の仕事をしています。

ネパールは国民の6割以上が農業を行っていると言われ、農家の所得向上が国の発展の重要なキーになっています。
ネパールの農業がどうなっていくことが今後の発展のために必要なのか今考えていることを書いてみました。


農村は多いが本当に農業で食べていける地域は限られている

日本の農業従事者は130万人ほどと言われ、1億2千万人以上の総人口の中で、割合にすると約1%です。とても少ないように感じられますが、この割合は特段珍しいものではなく、多くの先進国は似たような状況となっています。

そして、上述したネパールの国民の6割が農家ということも途上国では珍しいことではありません。
つまり、国が発展していくと農業人口は圧倒的に減るということになります。

都道府県別の農業生産額と面積の比較

日本やネパールのような中山間地が多い国では農業だけで職業として成立させることができる場所というのは特に限られ、農業だけで成り立たない農村では兼業農家が現れるか、過疎化が進むかといった具合になり、「ザ・農家」という人たちは少なくなっていきます。

そうした中で農業が成り立つ地域というのは主に二つの性格があると考えています。
一つは北海道のように大産地であること、もう一つは茨城県のように消費地に近いということです。
日本でも都道府県別の農業生産額を見てみると、ある程度はこの二つの性格から生産額の順位を説明することができます。

ネパールでも、大産地や消費地と近い農村、というものは存在し、こういった地域が今後のネパールの農業を発展を引っ張っていくのだと思います。
逆に言うと、現在いるとされている2000万人近い農家のうち1900万〜1990万人ほどはそのうち全く農業を行わなくなるということになります。
※ネパールでも兼業農家は存在し、農村部の高齢化も進んでいます。

ネパールの農村発展の特徴

「農家=貧しい」という固定観念が強い人たちにとって「農家」というのは支援の対象となることが多いですが、実際には外国へ出稼ぎに行った家族の送金により、経済的にはそこまで困窮していないというケースもあります。

そして、株式会社が少ないネパールでは農村部の発展を支えるのは非営利組織となることが多いのですが、本拠地のある国や一般人から資金調達を行う必要がある特性上、農村発展の内容というのが、やはり有機農業や環境保全がセットになった農業の促進など耳障りのいい内容であることが非常に多いです。

しかし、有機農業というのは世界でもほんのほんの一握りの人たちしか行っておらず、ましてやその多くは牧草地で、農産物を輸出するほどたくさん作っている国です。おまけにそういった国の気候はネパールを含めた多くの途上国とは異なり、気温が低く、乾燥地帯で害虫などが湧きにくい環境になります。

有機農業自体を否定することは全くありませんし、農薬をバンバン使えというわけではありません。化学肥料や化学的な農薬を使わなければ有機農業にはなります。しかし、それでその地域の人々の暮らしをどこまで向上させることができるのか、という点には疑問を持たざるを得ません。

農業に投資できる環境を準備することが必要

そして有機農業などの農業を促進する際にセットになるのが、肥料や農薬の自作です。
その土地にあるものを活用して農業を行うというのは、もちろん素晴らしいのですが、それは彼らの畑へ向かう時間とエネルギーを別の労働へ向かわすことになります。
分業で発展してきたのが、これまでの経済であり、農家さんもそれを分かっているからこそ、近年では種取りをやめたり、農薬を買ったりしているのです。
そういった市場経済との結びつきを敢えて断ち、かつてのスタイルへ逆行させるのは、少なくともそれで生計を立てる人にとっての農業の発展には結びつかないと思います。

農薬や肥料の販売店

非営利組織の介入はとても重要だと思いますし、やっていることが全て間違いだとは全く思いませんが、そろそろ自給から事業へとしっかり転換していくべき農村も出始めているので、そういった地域ではファイナンスなど農家が投資できる環境を整備していくことも大切だと思います。
特に先ほど挙げた「農業で成り立つ地域」は収量最大化などを目的とした農業の促進がもっと行われてもいいと思います。

そういった地域の農業の未来をどうデザインしていけるか、そしてそこからあぶれた人たちの雇用をどのように国内で守っていくか、この辺りがネパールの今後を考える上では大切になっていきそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


Twitterでも農業やネパールについての情報を発信しているので良ければ見てみてください。

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