月曜日の田山くん⑤
僕は毎日田山君に会う。別に約束している訳ではないけれど、必ず毎日田山君に出会う。今日も、トイレで大便をしたらそれが田山君だった。
今日の僕はお腹がちょっと痛くて、トイレに行きたいなと思っていたんだけれど、僕の好きな女、レイカちゃんと電話してたから、なんとか我慢していた。
レイカちゃんは習い事が忙しい。普段は全然会えないし、会ったとしてもすれ違うくらいでお話が出来ない。でも学校ではみんなに優しくて、とっても可愛い。そこらへんの女と違って、友達から高嶺の花って言われている最高の女だ。
本当は今日、会う約束をしていた。なのに僕のお腹の調子が悪いばっかりに電話になってしまった。なんてタイミングの悪い男なんだ。せっかくとなりの家族が大切そうに育てているよく分からない赤い花を引き抜いてプレゼントしようと思ったのに。
もうだめだ、限界というところまできて、泣く泣くレイカちゃんとの通話を終了する。お腹が痛くてたまらない。トイレに駆け込む。
トイレで用を足して、流す瞬間声が聞こえた。
「鈴木君、やっと出してくれたね。」その声は、
「なんだ田山君か」僕はトイレのレバーをひねった。
ゴッ。という音と共に田山君が流されていく。
「鈴木君!鈴木君!!」
「・・・」
「鈴木くーん!」
田山君は流された。
リビングに戻ろうとするとまた便意を催してくる。急いでまたトイレに駆け込むと、ケツから出てきたのはやはり田山君だった。
「すずきー」
流れていった。
なんで田山君がケツから出てくるんだろうか。いつまで出てくるんだろうか。僕は、田山君と会う度に離れなくてはならない運命に悲しみを覚えた。
せめてもの報いだ、田山君に花を贈ろう。僕はレイカちゃんにあげるはずだったよく分からない真っ赤な花びらを一枚食べた。
しばらくするとお腹が痛くなってくる。田山君!僕の思いは君に届いたかな。用を足すとレバーを引く。しまった!
僕はいつも用を足した時、匂いが嫌でお尻を拭く間もなくすぐ流してしまうんだ。そのくせがくそと共に出てしまった。便器をのぞき込むとそこには田山君はいない。暗がりが広がるだけ。ああ、僕のバカ。
失意の中ケツを拭く。すると、
「すずきくーん」
どこからかか細い声が聞こえてくる。その声は・・・
「田山君!」田山君はトイレットペーパーに薄く伸びていた。
「鈴木君、ありがとう。君の思いは僕に伝わったよ。」
田山君の顔がところどころ、赤い。照れているのかな。
よかった。僕は田山君を流した。
残ったよく分からない花びらで、僕はレイカちゃんが僕のことを好きかどうか占うことにした。花びらを一枚ずつちぎっていく。
好き、嫌い、好き、嫌い、好き・・・・・・嫌い。
床に散った赤い花びらが、これからの惨事を予兆するようであった。
僕は明日、田山君を殺す。
次回、田山死す!!
お楽しみに。
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