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#日本遺産 『日本遺産』という番組があったことご存じ? 番組紹介その1

 筆者は(株)TBSスパークルの所属です。社のページを見ていただければわかりますが、制作を請け負う長寿番組に『世界遺産』があります。筆者は、1996年の番組開始当初からスタッフとして参加し、世界を飛び回りました。ディレクターとして足かけ19年、制作会社プロデューサーとしては地上波番組で3年、BSの特別編で7年にわたり従事しました。その後、縁あって日本遺産に関わることになりますが、実は「日本遺産」という観念は、その制度開始の2015年よりもずっと前に頭をもたげていました。

世界遺産 タージ・マハル廟(インド) 2004年取材時

 私が番組の制作管理を仰せつかった2016年のことです。文化庁が世界遺産の暫定遺産候補地を全国の地方自治体に募るという情報を耳にしました。

「世界遺産になりたい人は手をあげて!ってことかい」

などとちょっと失礼な印象を抱いたものですが、事実はそんな簡単なことではありません。むしろ手を挙げたが最後、自治体担当者は理論武装の為の裏付け資料を膨大に整えるなど、ハードな作業と手続きを強いられたはずです。調査費や広報費もかかったと思います。どれほどの数の手が上がるものか注目していましたが、同年12月に発表された暫定遺産候補は20件、候補地として継続審議とされたのが13件ありました。

 「これは大変だな・・・」というのが正直な受け止めでした。なぜなら毎年の世界遺産登録件数は制限されており、たとえ登録がきまったとしても、1カ国につき文化遺産1件、自然遺産1件が上限だったからです。(その後ルールは微妙に変更)
 暫定遺産とは、ユネスコに推薦する前にあらかじめ示しておくべき「暫定リスト」に記載される将来の世界遺産候補を指します。地方自治体への募集をかけた当時で暫定リストには4件が上がっていましたが、この募集の結果、暫定リスト記載物件、暫定遺産候補物件、暫定遺産候補審査継続物件すべてを含めると、日本の世界文化遺産予備軍は42件にもなります(極論ですが)。毎年順調に【推薦】→【登録決定】が実現したとしても、全部が世界遺産になるにはなんと42年もかかることになります。

「三徳山」の名で世界遺産の暫定遺産に立候補した三徳山三佛寺(写真:国宝・投入堂)
 2015年に日本遺産に認定される(ただし、2021年に認定再審査となる)

 「だが、そんなことはたぶんあり得ない。」手を挙げさせた落とし前を、どうつけるのだろう?と思いました。

 実はそんな時です。「日本遺産」の四文字が頭に浮かんだのが。

 世界遺産ではなくとも、せめて「日本人が誇るべき、日本の遺産」としての称号を付すくらいのことは必要ではないのか?

 かれこれ17年も前のこと。その後まさか本当に「日本遺産」がはじまるとは、そして、まさか自分が「日本遺産」に関わることになろうとは・・・

その2 に続く

※頭の中で思考したことは事実ですが、その後の「日本遺産」誕生とは何の関係もありません。

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