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4/13 ニュースなスペイン語 Vacunas españolas:スペイン産ワクチン

4月12日付のスペイン国営テレビ(RTVE)のHPには、スペイン産のワクチンについて「遅いが、確実に(lentas pero seguras)」とした記事が掲載されている。着々とスペイン産ワクチンが実現しつつあるようだ。現在、国内で有力視されているのが3種類ある。いずれのワクチンも科学研究高等院(Centro Superior de Investigaciones Científicas:CSIC)で開発が進められている。

イサベル・ソラ(Isabel Sola)とルイス・エンフアネス(Luis Enjuanes)らが開発しているワクチンは、ファイザー社やモデルナ社と同じような、「メッセンジャーRNA(ARN mensajero)」という技術に基づく。従来の筋肉投与(intramuscular)に加え、ウイルス自体の侵入を抑え込むため、鼻からの投与(=経鼻投与(intranasal))方式になるという。しかし、このワクチンはまだ臨床前(preclínica)の段階なので、少なくとも、2022年の初旬くらいまではお披露目はできないようだ。

② 同じく臨床前の段階だが、開発が進められているワクチンがもうひとつある。ビセンテ・ララガ(Vicente Larraga)によって開発中のワクチンは、①のワクチンとは異なり、「循環DNA分子(molécula de ADN circular)」という技術に基づいている。この分子は「極めて小さい(de muy pequeño tamaño)」が、コロナウィルスの様々なたんぱく質に免疫反応を作るという。しかも、分子は人工的(sintético)なものなので、コロナウィルスの変化に「即座に、かつ簡単に(de forma rápida y sencilla)」に対応ができるメリットがあるという。

③ スペイン国内で最も有望視(prometedor)されているのが、研究員のマリアノ・エステバン(Mariano Esteban)が進めているワクチンだ。このワクチンはすでにガリシア州(Galicia)の製薬会社で生産が始まっており、ボランティアを募り、同州の病院で接種が開始できるらしい。今年末か来年初めには、国内に流通可能だという。このワクチンは天然痘(viruela)を根絶させたワクチンの変種を使用する仕組みのようだ。

スペインでは、こんな具合に、自国のワクチン開発が進められているが、その前途はあまり明るいとは言えない。ひとつは人員不足だ。アストラゼネカ社では100人、ジョンソン社では5000人以上が研究を進めているが、CSISで、③のワクチンを開発中のエステバンの研究室では「11人。私を除く、10人は契約社員(En nuestro laboratorio somos 11, todos, menos yo, por obra y servicio)」だという。②を開発中のララガもほぼ同じで、「私の研究室では6人だ。みな大変有能な専門家だが、6人だ(En mi laboratorio somos seis personas, todas muy especializadas, pero somos seis)」

もうひとつの障害は、ワクチン技術の「複雑さ(por la complejidad)」によるものらしい。①の開発に取り組んでいるサラは、ファイザー社やモデルナ社のワクチンの文字(≒塩基(letra))は4000くらいだが、「我々のワクチンには約2万8000の文字」がある。遺伝子配列の話だから、よく分からないが、解析の文字が多い分、複雑なのだろう。

そして、もうひとつは投資(inversión)不足だ。

前途は多難かもしれないが、自国で開発したワクチンが、年末あたりに流通するのだから、まぁ、心強い。医療関係者以外への接種がやっと始まった日本から見れば、うらやましい限りだ。日本では、ワクチン開発の前に、まだまだまだ、解決しなければいけない問題が山積してる。

写真はEconomía digital(2020.12.10)より。③のワクチン開発チームのリーダー、マリアノ・エステバン。