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自分の中に「真ん中のお守り」を準備して(休職エッセイ)

 真ん中を意識する。

 できないなら練習をする。
 そうすることで、自分を守れる。


 それに気づいたのは、ボーカルカウンセリングを受けていたときだ。


 歌うときは「中心線」を意識して歌わなくてはいけないと先生は言う。リズムや音程などは、体の様々な場所に意識を置いて支えなくてはいけない。

 そのことを忘れ、いろんなところに気を散らしていると声が安定しない。



 しかし、こういったことは日常生活にも多いのではないのだろうか。

 記憶にはあるのは、学生時代の定食屋でのアルバイトのときだ。
 温かい定食をご飯が冷める前に運ばなくてはいけない。それがお店のルールだった。遅れるとお局さんから怒られるので、特に気を張っていたのを覚えている。

 さぁ、出来上がった料理を取りに行く前に、お客さんに呼び止められたらどうする。

 「頼んだものが一つだけまだ届かないんだけど本当に注文通っている?」と言われたら。しかも、オーダーを通したのが自分だったら。それもそれで気が気でないだろう。


 会社員になっても同じだった。クレームや自分が一番怒られることが重なると、気が気でない。目の前の業務が疎かになってしまう。人間だって動物の一種なんだから、痛い思いが予想されるものは本能的に避けたいのだ。



 あのとき、「大丈夫だよ」と心を落ち着かせてくれる何かがあったら、よかったのに。馬に鞭を打って走らせるやり方が、全人類に適切かはわからない。


 「他にもやり方はあったんじゃないのか」

 休職が長期化する中でふと考えた。あの人たちに問いかけたくなる。でも、時間は戻らない。


 いつでも最適な環境があるわけじゃない。「真ん中のお守り」を自分で見つけていくしかないのだ。


 誰のせいにもできない。これから先も。だからこそ、真剣に探そうと思う。自分を守るために。

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