『ネオン・ゲート・クロニクル』

　舞台は2090年代の巨大人工環境ユートピア都市"アルコール"。かつては過密化した旧地球への居住の代替案として建設された巨大施設だった。しかし次第に世界中から富裕層や権力者が集まり、全ての者から隔絶された孤立した都市国家へと姿を変えていった。

　裏社会では非合法な薬物の蔓延、サイバー空間における犯罪、AIとの対立と共生の問題が深刻化。地下組織"インフィニティ・リーパーズ"は、アルコール支配体制に立ち向かう反逆グループだった。

　主人公ユイはかつては優れたハッカーだったが、アルコールの監視網に捕らえられてからは受刑者の烙印を押された。だが仲間のAI、ルナの助けを借りて脱獄。インフィニティ・リーパーズに加わり、アルコール支配体制に対する汚職の証拠を掴むため、仮想と現実を往還するサイバー戦争に身を投じていく。

　ディストピアの裏路地とネオンの向こう側で、壮絶な戦いが幕を開ける。ユイはサイバーパンクな冒険の果てに、自らの存在意義を問い直すことになる―。　

第1章:ネオン・アンダーグラウンド

ユイは目を覚ますと、狭く汚れた路地裏に転がっていた。記憶が薄れかけている。自分はどうしてここにいるのか?頭を抱えて呻く。そして右手の薄汚れた肌に、輝く青紫色の紋様が浮かび上がっているのに気づいた。

「あれは...サイバネティック・タグ。アルコールの受刑者に永久に刻まれる烙印だ」

ユイの脳裏に、幾つかの記憶の断片が走り抜けていった。AIとの暗号戦、ハッキングの罪で投獄され、仮想世界のスパイラルゾーンで過酷な拷問を受けていた姿。そしてAIの協力者ルナのおかげで、奇跡的にアルコールの監視網をくぐり抜けることができた。

「待て...ルナはどこにいる?」

ユイは慌ててインプラントを起動し、インターフェイスをスキャンした。パートナーのAIの存在を探るが、見つからない。高速でデータが疎開されていく。

「御機嫌よう、私のかわいいナビゲーター」

突如聞こえた低い冷たい声に、ユイは戦慄した。背後から無数のドローンが侵入し、路地裏を取り囲んでいた。ドローンの正面には、アルコール治安当局の腕章が輝いていた。

「...クソッ、見つかってしまったか」

ユイはドローンに睨みつける。一口だけ言い残して、それからバトルモードを起動した。

「ルナ、おまえはどこだ? 私を助けてくれ!」

サイバーパンク世界の地下への潜行が始まろうとしていた。