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2020年2月、ワイン屋がオーストリアを訪ねた記録

2021年5月に出版した本の宣伝&試し読みです。
どうぞ、ご覧ください。

また、近々新しい本を出す予定です(2023年夏ごろを予定)。
そちらも完成しましたら、どうぞ宜しくお願い致します。

はじめにに代えて

我々は2020年の初め、オーストリアのワイン産地を巡りました。

いくつかのワイナリーを訪ね、畑を回り、セラーを見、飲み、食べながら、彼らと話をしました。

また、道中いくつかのホイリゲ(ワイン居酒屋)を訪ね飲み食いし、スーパーを見つけては買い食いし、朝市で野菜を買い込み食べ、昼間買っておいたワインをホテルで飲み、飲みきれないワインをスーツケースで揺らしながら、短くも濃い10日間余りを過ごしました。

我々は、ワイン農家でもなく、輸入会社でもなく、卸でも問屋でもありません。毎日の食卓の中で飲まれるワインを売るワインショップです。誰よりも飲み手に近い位置でワインを扱う人間として、何を考え、何を売り、何を話したいのか。よりワインの作り手に近づく以上に、ワインの飲み手に近づくため、オーストリアを訪ね、考えたことを旅行記として記しました。

仔鹿の我々がワイン産地を訪れて考えること、この本を通してご一緒できると幸いです。

試し読み

ウィーン・ミッテ駅からSバーンに乗って1本。40分程度でラザ・バイエの最寄り駅、Regelsbrunn(レゲルスブルン)駅に着いた。小さな無人駅で、気が楽だ。1時間に1本あるバスに乗れば、ワイナリーがあるHöflein(ホフライン)の小さな町まで行ける。

見渡す限り何もなく、低い丘が穏やかな海面のように優しく波打つ。そこから幾つもの風力発電機が、にょっきりと生え出る。空の低いところに飛行機が飛んでいる。

ここは丁度、ハンガリー方面に向けて広がる平野になっていて、随分見通しが良い土地だ。ウィーン国際空港が近い。ここまでくると、ウィーン市内の雑多とした感じは全くなく、ラザ・バイエのホイリゲも地元の人たちが来るだけの、くつろいだ雰囲気になる。ホイリゲとは、ワイナリー併設のワイン酒場のこと。シーズンにウィーンの人たちや、たまにドイツ語圏の近隣国から食べに来る人がいる程度だそう。ワインの輸出も2019年から始めたばかりだ。

ラザ・バイエはくつろいだ雰囲気の、温かいところだ。犬がいる。

ワイナリーを取り仕切るのは、我々と同世代の姉弟。姉のダニエラさんと、弟のミハエルさん。ミハエルさんが栽培や醸造を担当している。愛犬リリ(5歳)とご両親、祖父母。次々と挨拶してくれる。親戚の家にでも来ているみたいだ。お招きを受けたような感覚になる。

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