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作業療法士が考える自閉症療育で大切なこと 「長期一貫性」

僕はこれまで、自閉症の方の支援について興味をもって取り組んできました。特に、表出言語の少ないカナータイプと臨床的に言われる方に惹かれてきました。

乳児期、幼児期、学齢期、思春期、成人期と一人のお子さんが、大人になるまでの様子もたくさん見させていただきました。
また、ライフステージごとの、様々な施設と関わらせていただきました。
特に成人施設にコンサルテーション的に関わらせてもらっている事は、子どもの支援をする上で重要な経験となっています。

自閉症療育を考える上で、その療育の効果があったかどうかは、「大人になった時の適応状態」で1つ判断できます。幼児期にいくら手厚い療育を受けたり、達人と言われるセラピストから何度かセラピーを受けて変わったとしても、大人になった時の適応状態が悪ければ、その療育は効果的ではなかったと言えるかもしれません。

逆に、なんでこのやり方で?と疑問に思うような対応でも、大人になった時に適応状態がよければそれは効果的であったということがあります。たまに感覚で、これをやってのけている方がいます。「すごい」としか言いようがないのですが、再現性が乏しく、他の人にはまねできない事が多く、引継ぎなどができないことで、結果的に人が変われば適応状態の悪化につながる可能性が高いかもしれません。

つまり、効果的な自閉症の療育を考えるとき、「長期一貫性」の視点を持つことが、とても重要だということです。

「長期一貫性」の視点を持つためには、各ライフステージの生活を知っておく事が役に立ちます。特に、成人期の支援を経験していると、大人になった時に充実した生活を送るためには、どういうスキルを身に着けて、どのような育ちをしてほしいかが具体的に描きやすくなります。

例えば「プットイン課題」を活動として選択した場合、幼児期であれば目と手の協調、「はじめ」と「おわり」の概念を育てるという目的で良いと思います。しかし、小学校高学年のお子さんにプットイン課題を実施する場合、目と手の協調や、「はじめ」と「おわり」の概念を育てる、という目的だけでは不十分で、その作業が将来や日常生活の何に繋がるのかを具体的にイメージする必要があります。

「訓練のための訓練」をしてはいけないという事です。成人作業所で小さい時から知育的な活動をたくさん経験してきたいるのに、実際の作業に取り組めていない人がいたりします。心身機能としては持っているのにスキルとして発揮することができていない状態です。作業療法の世界では「できるADL」と「しているADL」を分けて把握する考え方があります。それと同じような視点で、自閉症の場合、パフォーマンスが環境や状況の影響を強く受ける「スキルの般化」の問題があるので、常に般化について意識して作業や活動を展開していく必要があります。

実施している活動(作業)が何につながるかのイメージを持つためには、成人期の実際の生活にはどんなOccupationがあるのか、どんな環境で、どんな文脈で行っているのかを知っておくととても役に立ちます。

学生時代に社会に出たら甘くないから、と言われることがあります。でも、実際に成人期の福祉型就労の現場は、提案する支援を取り入れてくれる現場は多く、作業や活動も地域や事業所によって様々で、その人にあった作業活動を選択できる所が多いのが僕の印象です。

「長期的一貫性」という視点で考えると、中学生というのは「作業」という観点から大きく、見直しが必要な時期だと思います。小学生までは「学習」いわゆるお勉強で、様々なことに経験し、興味を持ち、学ぶという事が中心になっていますが、

中学生になったら、IQ、教科学習、学力などは、いったんおいておいて、「仕事」をどう勉強していきますか?「仕事」に関するスキルがどのくらいありますか?という観点で見直していく必要があると思います。
これは、作業という観点から、中長期的な支援計画を立てていく事だと思います。

仕事に関するスキルの領域は「移動スキル」「機能的コミュニケーションスキル」「作業スキル」「職業関連スキル」「日常生活スキル」「余暇スキル」の観点で見ていくのが良いかと思います。(”TTAP”を参考)

これらのスキルを支えるものはやはり「その子の好きな事」「得意な事」なんだと思います。得意なことが分かっていれば、どういう作業が合いそうだなとか、どんなことが余暇や趣味になるかなとか、フィッティングしやすくなります。だから、その子その子の好きな事、得意な事をたくさん伸ばしていってほしいと思います。

自閉症のお子さんを育てている親御さんは、大抵の場合、自閉症児を育てるのは初めてだと思います。

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