まめのすけ

VRC関連で書いたものとか、過去作置き場

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  • 解釈小説対決

    • 2本

    見た作品の解釈を小説にして撃ち合う企画です。

最近の記事

ハナサカステップ解釈小説:『夏に咲く花』

 本作は、企画「『ハナサカステップ』解釈小説対決」のために書かれたものです。これは、ぼっちぼろまるさんの曲「ハナサカステップ」をVRChatのフレンドさんたちと聴き、歌詞への解釈の違いを小説で表現し合う企画です。 ソーサツ・チエカさんの作品はこちら。 原曲MV(映像は解釈の対象としない): 夏に咲く花  雨の匂いにはもううんざりだ。  今日も一日、朝から雨が降りそうな曇り空が続いている。  じっとり湿った空気。  毎年毎年しつこい奴らだ。ひっきりなしに降り続く雨を窓越

    • 睡眠不足

      不可思議な出来事っていうのは、世間が思っている以上にありふれている。 ただ気付かないだけ。気付いていないだけ。 そして、気付いた時には、それはすっかり日常に溶け込んでしまっているのだ。 引越し初日。 大量の段ボール箱を片付けた私は、ぐるりと部屋の中を見渡した。 八畳のワンルーム。真新しい家具の数々が所狭しと並び、きらきらと輝いて見える。 実家から遠く離れた大学に合格した私は、ついに一人暮らしをすることになった。 女性の一人暮らしは危ない。寮とかもあるんじゃないか。 そう言う

      • 明日はきっと、降水確率100%?

        突然だが、俺は雨が好きだ。 梅雨時の今は、俺にとっては最高の季節といっても過言ではない。 このことを言うと、大概の人は変な顔をする。 濡れる。冷たい。風邪を引く。雨なんかのどこがいい? 彼らは、揃いも揃って同じようなことしか言わない。 何故彼らには、雨の尊さがわからないのだろう。 ぱらぱら降る小雨は、肌にしっとりと染み込んで、冷たくて気持ちがいい。 滝のような豪雨も、思い切って浴びてみると、心まで洗われるような不思議な気持ちになれる。 雨が止んだ後の、全て洗い流されて浄化さ

        • 狐の嫁入り

          ある日のことだ。 縁側で庭を眺めていると、雨が降ってきた。 陽は高く上り、青々とした空が広がっている。雲はそれほど多くない。 にもかかわらず、雨がぱらり、ぱらりと降ってきた。 天気雨だ。 雨は次第に本降りになり、庭の草木を濡らしていく。 草木に付いた水玉が陽の光に照らされて、輝く様はまるで真珠のようだ。 私は着物の袖に落ちた雨粒をそっと払いのけ、空を見上げた。 「天気雨とは、珍しいこともあるものだ」 一人呟く。 それから不意に、先日出会った女のことを思い出した。 その女は、

        ハナサカステップ解釈小説:『夏に咲く花』

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        • 解釈小説対決
          2本

        記事

          赤い唐傘

          こういう事があった。 ある梅雨の日の事だ。 私は大樹の下、止まぬ雨を眺め、天を仰いだ。 ぽつりと、頬に雨粒が落ちるのを感じる。 周囲は、雨音で満ちていた。大粒ではないが、細く柔らかな雨がひっきりなしに降り注いでいる。 既に着物は湿り気を帯び、ひどく着心地が悪い。下駄にも泥がこびり付き、少々重い。 しかし、私はこの不快感もそれほど嫌いではなかった。 かれこれ一刻ほどはこうして止むのを待っている。こうして雨を肌で感じ、雨音に耳を傾けていると、なぜか心が安らぐのだ。 我が家に戻れ

          きっとあなたの140字

          桜 目覚めると病室だった。 また運び込まれたようだ。もう何度目か分からない。 開け放しの窓から桜の花びらが舞い込んできた。 ベッドの脇で眠る彼の頭に、ひらりと落ちる。 目を覚ますと彼は必ず傍にいてくれた。 桜が散る頃には、きっと私は―― 花びらを彼の掌に置き、そっと包む。 ずっと傍にいるよ。 乾杯 「いらっしゃい」 月光の降り注ぐ庭。 小さなテーブルで一人、少年が微笑む。 少年がグラスに流星を注ぐ。手渡されたグラスの底でパチパチと星が弾けた。 「

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