第44話 サンタ・ネネと死神の再会 1
朝食を食べ損ねたまま昼まで寝ていたネネですが、それを取り戻すかのように昼食を食べまくり、お腹ポンポコリンの大満足になっていました。
大きく背伸びをした後、ドヤ顔でわけのかわらないことを言い出します。
「ふっ ネネちゃんは天才かもしれないのだ。ボルトをうまく言いくるめてサンタ袋に押し込んだから、これでまた砂浜で遊び放題なのだ」
「次はドールの街に行きたい」と言っておきながら、なかなか森から出発しないネネは、実はボルトからブツブツ文句を言われていたのです。
でも彼女にはなかなか出発しない理由が、ちゃんとありました。
ビルの瓦礫を処分できないことが気にはなりますが、やはり初めての夏の海の誘惑には勝てないネネなのです。
あっ・・・何だか、ろくでもない理由でした。
「よ~~っし!今日は思いっきり泳ぐぞ~。これで冷たいバニラアイスがあったら、完璧だったんだけどなぁ」
200年前まで人間界で暮らしていたネネは、祖父のサンタ・クロースに連れられてアイスクリームを食べに行ったことが何度もあります。
それは甘くて冷たくて、口の中で溶けてしまう不思議なお菓子でした。
ネネたちが暮らしていた北方の国は寒いためにアイスなど無かったのですが、南方の暑い国では普通に売られていたのです。
しかし残念なことに、天上界にはアイスなどありませんでした。
つまりかれこれ200年近くもの間、大好きなバニラアイスを食べていないことになります。
「ドールの街で、アイス売ってないのかな?」
などと今度はネネがブツブツと独り言をつぶやきながら、トコトコと浜辺へ向かって歩きます。
ボルトが見てないと思って、思いっきりやりたい放題です。
もうすぐ森を抜けようかと言う場所まで来た時、全身黒づくめの服を着た人間が立っていることに気付きました。
よく目を凝らして見てみると、それは人間ではありませんでした。
簡単に説明するなら、真っ黒な革製の服を着たガイコツだったのです。
そのガイコツもネネに気付いたようですが、じっとしたまま動きません。
ネネはすごいビビリな性格をしているので、本来ならばここで叫んで逃げるはずなのですが、逆にガイコツに近づいていきます。
一見すると悪魔か悪霊にも見えるガイコツのことを、なぜか全く怖がっていません。
ガイコツの目の前に立ったネネは、彼に向かって笑顔すら見せたのです。
「よっ!久しぶりだね」
「なんと、人間のお嬢さん、私の事が見えるのですか?」
「見えると、何かまずいの?」
「いえ、そういうわけではなく。本来わたくしは、人間には見えないはずなので・・・しかし思い出せないのですが、私と前にも会ったことがありましたかな?」
ガイコツの名前は「死神」で、悪霊狩りのエキスパートです。
200年前の終末戦争時、幼いネネたちが天上界へ移動する際に護衛役を引き受けてくれていました。
彼の実力は原初神には及びませんが、天上界の神々を軽く超える力を持っています。
彼は、ネネにとって1年間だけではありますが、稽古をつけてくれた師匠でもあります。
死神がネネを見て誰だかわからないのも当然のことで、当時のネネはまだ幼く、こんな姿をしていました。
「そう言えば、こんなところで何してんの?」
「ふむ、あなたには何の事かわからないでしょうが、サンタ・ツリーの気配を感じましてな。本当にあるのか確認の為に、この森へ来たのですよ」
「あぁ、それならあるよ」
「はて? なぜわかるのですか?」
「それ、私が植えたからだよ」
「いや御冗談を。それではお嬢さんは人間ではなく、サンタだということになりますが?」
「どこからどう見てもサンタっしょ」
「う~む、サンタの中で、あなたをお見かけしたことは無いのですが」
「いや、思いっきり顔見知りだよ。死神さん」
「なぜ!私の名を?!」
この時ネネは、わざと死神に意地悪をしていました。
ネネは200年前から成長し大人の姿に変わっているので、きっと名乗らないとわからないだろうなと思いながら会話していたのです。
思い返せば天上界で、1年間ではありましたがネネは死神から特訓を受けています。
死神の戦闘スタイルは「スピード」と「連続攻撃」を組み合わせており、相手に反撃のスキを与えないものでした。
特に彼の特殊技能のひとつに「死神の影」というものがあり、自分の影を落としておいた場所に一瞬で空間転移するというものです。
ネネはいつも最後にはこの技を食らってしまい、ずっと敗北していました。
いきなり目の前から消え背後に立たれるので、反応しきれなかったのです。
死神が人間界に帰る日の去り際に「これからも毎日必ず鍛錬を続けなさい。今度会う時に、その成果を見せてもらうからね」と言い残しています。
あれから200年もの間、珍しくネネは飽きずに鍛錬を続けてきました。
そしてついに、その成果を見せる機会がやって来たのです。
久しぶりの再会に、もうワクワクが止まりません。
ネネは真顔になり、屈伸運動を始めます。
何が始まるのかと呆然とネネを見つめる死神でしたが、その答えはすぐにわかることになります。
「さ~って本気出さないと、今度は私が勝っちゃうかもよ、師匠!」
「な!? まさかあなたは」
すでに、死神の目の前には、ネネの右の拳が迫ってきていました。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
神の成長速度は、人間とは全く異なります。
200歳ぐらいまでの段階では、幼稚園児ぐらいの姿をしています
350歳ぐらいまでの段階では、小学生ぐらいの姿をしています
350歳から400歳までの段階で、中学生ぐらいの姿にまで成長します
400歳から500歳までの段階で、高校生ぐらいの姿にまで成長します
500歳で初期の成長は終わります
その後は非常に緩やかな年月をかけて老いていきます
現在のネネの年齢は、510歳です
原初神の6神は、約25万歳になります
ちなみに長生きな神ほど「強い」わけではありません
神の強さとは、それぞれが持っている「総エネルギー量」に比例します
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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